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梟悪譚  作者: シープネス
31/41

31:真の正義とは何か

1日目は、ただ何もせずに過ぎた。


2日目は、街中を意味もなく徘徊していた。


3日目になって、街の外にも出てみた。


4日目・・・。


物語の中心に立てたはずなのに、だれも私を見つけない。


5日目・・。


世界じゅのたね、が何か言ってる。


6日目。


おすかーを、みつけた。

いんぺりあるぎるどの、つめしょで・・・

かりゅうどのひとと、いいあらそってた。

わたしの、まりょくのにおいは、もうなかった。



ななにちめ。


「(どうかご自愛下さい、もう何日眠っておられないのですか。)」


気が付いたら、街の外に居た・・・。


「(命は魔力で補えても、貴方様の心はもう限界です、どうか・・・。)」


私の前に出てくる黒い馬、ないとめあ、うまのほね・・・おとうさん。

お父さんって言えるかな。


「おと>うSん。」


「(リ♯様、+疲Nですか。)」


おとうさんの声、おとうさんだ・・・。

黒い毛皮に頬を寄せれば、おとうさんがそっと触腕を伸ばして私の頬を撫でる。

おとうさん、おんぶして。


「(貴方がそう望むならば、喜んで。)」


触腕に持ち上げられて、お父さんの背に乗せてもらう。


「(リン様、今日はいい天気です、少し散歩しましょうか。)」


お父さんは、黒くて長い毛が全身に生えてて、まるで人狼みたいで・・・。

人狼・・・人狼って誰だっけ?



考えてみるけど、よくわからない。

お父さんが、私を載せて散歩しながら・・・

種が、お父さんと何か話してる。



森の中で、誰かが、何か叫びながら近寄って来て。

次の瞬間、ボウッて、青い火が足元から湧いて。

こっちに向かって来ていた人たちが、消えた。



私の心の中から種が道を示して、それを聞いたお父さんが歩いて。

でも、ホネッコは、嫌がって出て来ない。

みんなで、お散歩したいのに。



お父さんに何でかなって聞いたら。

「自分自身と話せば更に狂気が悪化しますので。」

・・・意味が、よくわからない。



森を抜けて、川を越えて、深い洞窟を抜けて。

キラキラした部屋で、待っていたのは。



***



魔物と呼ばれる存在はダンジョン内の魔力が結露する事で生まれる事は有名な話だが、魔力が非常に高濃度・・・上級ダンジョンなどに極稀に発生する魔力溜まりのような場所では本来魔物が生まれる事は無い。

しかし、本来生まれるはずの無い場所で生まれてしまった不運な魔物が居た。

魔力は高濃度になると、あらゆるものを溶かしてしまう。

そういった場所で生まれたその魔物は、生まれる前に溶けてしまい、溶けながらも魔力を浴び続け、混ざり合い、死も生も溶けてしまって、アンデッドに近い存在と成り果ててしまった。

人の未だ立ち入れないダンジョン最深層域にてかつて生まれたそれは、名が無い。


だからそれは”名も無き迷宮の怪物”と名付けられた。


かつて惨禍の眠り姫によって救われ、永遠の眠りについたソレは、

偉大なる死の巫女の狂気を感じ取り、再び目を覚ました。

ダンジョンの最深層域を通る地下水脈を泳ぎ抜け、ダンジョンを這い上がる、

かつて受けた偉大なる死の恩を返さねばならない。


名も無き迷宮の怪物は、ダンジョンにて地表近くにある中でも、

特に丈夫だと感じた玄室の一つにドロリと流れ込み。

夜明け前の様に暗く、星空のように光の破片を内包する粘液状の体を

透明な蜘蛛のような外骨格で包み隠し、形成する。



そして、巫女が訪れた。



黒い馬に乗り、

死霊の言葉を語り、

その瞳に狂気を満たし、

小さな声で、こういった。



「・・・おかあさん?」



名も無き迷宮の怪物が彼女の為に現れたのは、単に力を与える為だけではない。

何物でも無いままに生まれ、死んだ怪物には己の形が存在しなかった、

だから怪物は、容易に己の身だけでなくその本質までも変質させることが出来る。

例え偽りであろうとも、彼女が望む存在の代わりになる事が出来る。


黒く結われた長い髪、深淵の如く黒い瞳、身は細く小さかろうとも、

その偉大なる慈悲と自信に満ちた瞳には力が満ちて、

生にしがみ付く愚かで醜い者達を退け、偉大なる死と慈悲を賜る。

偉大なる眠り姫様のお姿をお借りして、彼女に近寄った。



「・・・御労しや、我らが巫女よ。」



思わず、言葉が漏れた。

触れた指先から、抱きしめられたその身から心を通じ、彼女が受けた屈辱を思い知る。

与えて・・・奪う、これ以上の非道が有るだろうか?

本当の死は、決して覆らないというのに。

永遠に続く眠りの慈悲を汚す・・・ニンゲ



警告



高速で飛来する収束火炎弾、回避不能

ナイトメアの感知したソレは世界樹の種を経由して怪物の認識内に届く。

ギュッと強くリンの・・・新たな我が主の頭部を抱きしめる。

高速で飛来する魔法弾は主ではなく自分の頭部を狙っている。

直撃すれば頭部が爆ぜるだろう、しかしそれは重要な事ではない。

仮の姿とは言え、母の頭が吹き飛ばされる姿を主に見せてはならない。



ドンッ



吹き飛んだ頭部を見せないようにしながら蜘蛛の姿に体を再形成。

主を守るように正面へ移動しつつ、仮初とはいえ母子の再会を邪魔した不躾な侵入者を視認した。

驚くことに侵入者はたった一人、耐火性能の高い全身装甲服、幅広のブロードソード。

先程の火炎弾は、我が主ではなく彼女の姿を真似た我が頭部を狙っていた。



装甲服の侵入者が叫ぶ。



「カノジョヲ、ハナセ!」


ハナセ・・・離せ、だと?


そうやってまた奪うのか?


穢れた人間め・・・。


ゴボリと、不定形の我が体が怒りに湧きたつ。


こんな結末になるならば、リン様が国を立つ前に我らがお引き留めするべきであった。


こうして音もなく、その戦闘は始まった・・・。

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