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梟悪譚  作者: シープネス
20/41

20:梟悪譚

「ジョウ・リン・サンカ」をギルド「梟悪譚」の「ギルド長」として任命する。


備考「他の全幹部が空席の為、ギルド長代行 ギギ・ネコ の権限により承認するものとする。」


参照:「ギルドメンバー登録簿【梟悪譚】」より抜粋

梟悪譚ってのはアレです、元ネタはムカつくおとぎ話です。


正義の精霊はある日、自分の所に最初に挨拶に来た12匹の獣へ称号を与えて獣の大将として認める事をお触れとして出したんですが、鼠・牛・虎・兎・竜・蛇・馬・羊・猿・梟・狼・猪と獣達がやってきた後に、13番目に現れた猫が鼠に騙された事を精霊様に告発したのです。


ネズミに嘘吐かれた事に怒った正義の精霊様はネズミを醜いスクイークに変えて、13番目にやってきた猫を繰り上げで大将にしたんですが。

やっぱり獣なんて信用ならないよねって事で唯一空を飛べるフクロウに他の11名を監視させる事を命じたとかなんとか。


母上様からこの話を聞いて、子供心にリンさんは思いましたね!

フクロウ全く悪くないじゃん、悪いの全部ネズミじゃん!

この御伽噺のせいで人の道に背く事を「梟悪」って言うんですけど、何でフクロウが悪呼ばわりされるのかと当時のリンさんは理解に苦しみましたね。


私と同じ事を思った人が居たのか、正義の精霊への当てつけなのかは不明ですが、大昔に御伽噺と同じように12匹の獣の称号を名乗る人狩達がギルド【梟悪譚】を名乗って、混沌としていた冒険者の世界で手当たり次第に暴れ回ったそうです。


そして、現在の人狩・狩人・冒険者の勢力の境目を明確にしたり、都市内での戦闘や過剰な制裁を防ぐために分を超えたバカにブッ飛んだ制裁を加えたりして世界の規律を作ったという都市伝説があるのです。


都市伝説だと思ってたんですが、まさか実在するギルドだったとは思いませんでした・・・。


ネコさんから詳しく話を聞いたところ、初代のギルドメンバーは既に天寿を迎えてこの世を去り、二代目ギルド長の意向により狩人の興隆と共に梟悪譚は緩やかに衰退していき、彼は衛兵の家系として代々密かに梟悪譚の名を引き継いできたそうです。



「えっと・・・衰退したギルドの長とか面倒なんですけど?」


「衰退してても正式な認定ギルドだから基本給が出るぜ?」


「マジで!?どのくらいお給料貰えるんですか!。」



あー・・・うん。

やっぱり今の世は腑抜けてますよね!

これは間違いなく梟悪譚の出番ですよね!!

決してリンさん給料に釣られた訳じゃないのです!!!

人狩として今の世を憂いるが故に立ち上がっただけですから!!!!


いやはや、これはリンさんがギルドに入るの事を決めたのとは全く無関係なんですが、ギルド長は基本給として毎月金貨1枚くれるらしいんですよ、今後の働きに応じて更に昇給もあるとか!

しかも裏の依頼を優先的に受注できるとか、活動内容によっては拠点の提供から消費物資の融通、各設備利用費の減免から、衛兵を含めた情報封鎖まであるんですか!?

お金ってある所には有るんですね、。



「あ、そういえばとりあえずやりたい事があるんですが、いいですか?。」



***



普段は人で賑わう大通りの教会は、今日も人で賑わっていた。

その瞬間までは・・・。



「フクロウ様のお通りだ、オラァ!」



壊れない程度の力で教会の大門を蹴り開けた私に、室内外からあらゆる視線が突き刺さる。

一瞬で静寂に包まれた教会の石畳の床を、ネコさんの履いた木靴の音だけがやけに響いている。

流石に完全武装のネクロマンサーとその後に付いてくる重武装の人狩に声を掛けてくる勇気のある人間は1人も居ないらしい。


私はそのまま真っ直ぐに、祭壇の前に置いた椅子からずり落ちそうになっているデップリと太った祭祀長の前まで歩を進め、その場に居る全員に見えるように一枚の書類を見せた。。



「祭祀長、貴方の罪に対する告発状が出ています。」


「な、何のことだ、人狩如きがワシの教会に何 【ゴッ】



”人狩如き”呼ばわりにムカついたので死なない程度のパンチをお見舞いしてから私は声を張り上げた。



「この祭祀長は、あろうことか相手の職業によって祝福や懺悔の寄付金額を変えていましたが、その割合は正義の精霊様が認めた権限を越えた物であります、しかもその一部を懐に入れている事が判明しました、よって被害者の1人として制裁を行います。」



攻撃的な魔力の気配を感じ、私は咄嗟にナイフを投げつける。



「うっ…。」



人込みに隠れて攻撃魔法を詠唱しようとした魔導士は首を貫かれて呻きながら崩れ落ちる。

流石に即死はしなかったか、教会の雇ってる私兵の癖にそれなりに強いじゃないか。



「これは正当な告発を経た制裁です、妨害するなら痛い目に遭いますよ。」



吹っ飛んで床に転がっている祭祀長の尻を思いっきり蹴り飛ばす。

太った肉の塊がギャンッと叫びながら教会の真ん中にある噴水に突っ込んだ。



「それと…このクソは、あろうことか祝福を受けに来た可愛いヒーラーさんの胸を偶然を装って触った挙句に”胸ちっさ”とか呟いたので今後、女性の皆さんは近寄らないように。」


「クフッ…。」


「ネコさん、今笑った?殺すよ?」


「ちょ、待って、違っ、違うから、ククク…。」



次笑ったら偶然を装って殺そう。

噴水を乗り越えて逃げようとするデブを力尽くで持ち上げ、叩きつける。



「祭祀長さまぁ~? この世とバイバイする前に痛い目に遭う覚悟は出来ましたかぁ~?」


「ま・・・待ってくれ、金、金なら払うからっ。」


「ダメですよぉ~貴方が痛がって死ぬ所が見たいんですものぉ~。」



肉の塊を手加減して蹴りながら、教会の外へ誘導していく。

さて…外に居る”彼”は私の意図に気付けるかしら?



「ヒギァ…ま、待って、待ってくれ。」


「あーダメダメ、全然許せないなぁ~?」



外まであと数センチ、軽く蹴り飛ばして祭祀長を大通りに蹴り出す。

そして、彼に歩み寄ろうとしたとき、私の進行方向が槍で遮られた。



「・・・そこまで、だ。」


「あら、”インペリアルギルドの副長になったオセレイト様”ではないですか。

 私は、今からこのブタを処刑するつもりなんですが、止めるんですか?」



こちらの予想通りにオセレイトは私を止めた、やっぱり花守家なら都市内の規則は知ってるよね。

彼の名前と所属を出来るだけ大きな声で辺りに聞こえるように話す。



「【告発による制裁は、街道上では行えない】、コイツはクズだが公道に出た以上はこれ以上の制裁は出来ないはずだ。」


「ナンテコトカシラ!!!」



わざとらしく驚いて見せる私に、いつの間にか町の広間に出ていたネコさんが一際大きな声で叫ぶ。



「大変ダァー”インペリアルギルドの新しい副長のオセレイト”が言っている事は正しいぞ!」


「”インペリアルギルドの新しい副長のオセレイト”が都市のルールに詳しいせいで、制裁がデキナイワァァァァァァ。」


「・・・おい、お前らなにを。」



流石に私の妙な行動に気付いたらしいオセレイトが周囲の視線を気にし始めるが気にせずに叫ぶ。



「新しくなったっ!インペリアルッ!ギルドのッ!オセレイトはっ!ちゃんとルールを知ってたワァァァァァァァア。」


「前のインペリアルのギルド長はクソみたいなクズだったのにっ、コイツはとんでもない正義の味方が現れたモンダゼェェェェェェ。」


「・・・。」



流石に演技が大根過ぎたかしら。

まぁいいや、これでインペリアルギルドに残った人たちも冷遇されないで済むでしょ・・・多分。



「・・・祭祀長、今度ルールを守らなかったら、梟悪譚が貴方達に最高の悪をお届けするわよ?」


「ヒィ。」


「他の連中にも伝え・・・あ、気絶してる。」



全く、根性ないわね…諦めて帰ろうとしたところで、通り過ぎざまにオセレイトが呟く。



「・・・悪ぃな、恩に着る。」


「フフン、ダンジョンで遭ったら容赦しないからね。」



そのまま広間まで歩み出て、多分聞いているであろう誰かに向けて小さな声で呟く。



「梟悪譚は、オオカミを先着1名で募集中よ、忠誠を誓うんじゃなくて、隣に立ってくれるオオカミはどこかに居るかしら・・・なんてね。」



こうして物語は、ようやく動き始める。

ヒーラーを目指した少女は、悪の道へと進み。

やがて彼女の行動が世界を大きく揺るがすことになるのだが、


この時の彼女は、まだそれを知る由もなかった・・・。

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