15:ある意味別荘・・・かもしれない。
盗人詐欺師に殺人鬼、君がどんなにイカレた犯罪者でも、衛兵にだけは絶対に逆らってはいけない。
※参照「衛兵さんのお仕事」より抜粋
みなさんこんにちは、可愛いヒーラー・・・ではなく、ネクロマンサーのリンです。
即投獄されるのかと思いきや、何故か衛兵の詰め所に連行されました。
「どうぞ。」
しかも、明らかに衛兵隊長っぽい方から直々に茶を出されてます。
「どうも。」
お茶を飲む私を見ながら衛兵隊長さんが懐中時計を確認する。
まさか毒?・・・なんてね、そんな訳無いわね。
私の視線に気づいた衛兵隊長が軽く会釈してからつらつらと話し始める。
「冒険者さん、申し訳ありませんが共有施設の破損により、本来であれば24時間の拘置処分とする所ですが、戦時逮捕のため争乱終了までの拘置処分と致します。」
戦時逮捕って言われても、今別にギルド戦争とか起こってないし、
というかオスカーさん殺っちゃった件とか完全無視ですか?
「あの、今って別にギルド戦争とか起こっていませんよね?」
「それは、もう少々お待ちいただけますか。」
何を待つのかと聞こうとした瞬間、
【ドォンッ】
腹に響く衝撃と共に建物が微かに揺れた。
爆発のタイミングを完全に合わせてるけど爆心地が遠いお陰で判別が付く、
大きい爆発に隠れて小さい爆発が3つ、明らかにタイミングが手慣れている。
爆発の余震がビリビリと響く中で、街中に拡声された声が響き渡る。
《衛兵隊広報部より緊急速報をお伝えします》
《当都市内にてギルド「インペリアル」の【幹部長】が殺害されました。》
《当都市内にてギルド「インペリアル」の【幹部】が殺害されました。》
《当都市内にてギルド「インペリアル」の【幹部】が殺害されました。》
《当都市内にてギルド「インペリアル」の【準幹部】が殺害されました。》
《当都市内にてギルド「インペリアル」の【上級組織員】が殺害されました。》
《当都市内にてギルド「インペリアル」の【上級組織員】が殺害されました。》
《当都市内にてギルド「インペリアル」の【上級組織員】が殺害されました。》
《上記7件は【隠蔽工作】により詳細を知ることは出来ませんでした。》
《ギルド戦:「カワスズメ」が「インペリアル」へ【宣戦布告】を行いました。》
《当都市は戦時体制に移行します、住民及び冒険者の皆様は注意してください。》
「・・・今は戦時中ですので、争乱終了まで身柄を預からせて頂きます。」
有無を言わさずにそう告げる隊長さんは笑みを崩さずに、私を連行してきた衛兵に告げる。
「衛兵。」
「ハッ!」
「君は、オスカーという冒険者がどうやって死亡したか知っているかね。」
「いいえッ、存じ上げませんッ。」
「彼女を逮捕するのはいつかな?」
「今から、宣戦布告後になりますッ。」
「なるほど、君は職務に忠実な衛兵のようだ。」
「ありがとうございます。」
え、なにこれ現実?
念のために後ろを向いて衛兵に尋ねる。
「衛兵さん、私がオスカーさんを殺 「存じ上げませんッ。」
・・・。
前を向く、衛兵隊長は笑みを崩さない。
「誤解なさらないように、彼は何も見ていませんし、何も知りません、そして何も知る気は有りません。カワスズメのギルド長であるアーリー…いえ、人狼王とお呼びしましょうか、彼がちょっとした落とし物を届けている間、衛兵はそちらに気を取られていた…それだけの話です。」
「あー、はい。」
人狼のまとめ役をやってる人狼王はかなりの穏健派で、率いているギルドも保守的って噂を聞いたんですが、衛兵を賄賂で黙らせたり、多分だけどインペリアルのギルド本部か何かを不意打ちで爆破するとかどう考えても穏健派のやる事じゃないですよね?
というかコレって都市の占有権を奪う気で戦争仕掛けてますよね?
戦争に勝ってこの都市の占有権を得たら、オスカーさんを殺っちゃった可愛いネクロマンサーさんはどういう目に遭わされるんでしょうか・・・。
・・・。
・・・【妨害により魔法は発動しませんでした】
「申し訳ありません、魔法の発動はご遠慮ください。」
「あら、それは失礼。」
チッ、やっぱりダメか。
というか魔法が使えても逮捕に抵抗したら賞金首にされるからどうしようもないわコレ。
このあと、それまでの衛兵ではなく明らかに手練れっぽい5人の衛兵に囲まれたままで都市外の牢獄へ連行されています。
連行中に衛兵の1人が歩きながら罪状などを色々と説明して、最後にこう締めくくりました。
「恐らく2日程で解放される手筈です。」
「はーい。」
聞きましたか皆さん?
あと2日で私の命が現世から解放されるらしいですよ、助けて母上様!
まぁ仕方ないね、オスカーさんを殺っちまったからね!
仕方なくないわっ!
思い出すんだ私っ、生き残る道を思い出せっ!
そうだ!
殺人を犯しても死ななかった犯人が居たのを思い出しましたよ!
そうそう、重罪人って基本は城門から吊るされるんだけど(処刑的な意味で)
あの犯人は、事件発覚直後に行方不明になったと思ったら翌日に生きたまま中央広間で発見されて、噂では被害者の人狼が制裁で犯人の全身を喰・・・
・・・よし、この話は忘れよう。
「こちらが拘留室になります。」
分厚い鉄製の扉の前で立ち止まって私を扉の前に立たせる5人の衛兵、皆さん入りたくないの?
そうでしょうね、この部屋って城門砦の上階だから城門に吊るされた犯罪者がブラブラするのが窓からよく見えそうですもんね、いっそ私も吊るせよ。
「あー死んだ母上の遺言で高い場所に有る部屋には入っ「室内へどうぞ。」
・・・。
「痛っ!何か急にお腹が痛「室内へ、どうぞ。」
・・・。
どうやらこの衛兵さん達は先程の衛兵隊長さんの部下らしく忌々しい程に油断が無いです。
実力が有っても賄賂が効く衛兵隊長ってかなり少ないから、機会が有ったらあの隊長さんとコネが欲しいわね・・・運よくこの都市で冒険者を続けられるのが前提だけど。
覚悟を決めてドアを開く。
窓には深緑のカーテンが掛けられて、外の世界を隠し通しています。
床を見れば足首まで埋まるくらい毛足が長く柔らかな絨毯が敷かれ、丁寧に磨かれた高級な革張りのソファが清潔で純白のテーブルクロスに覆われたテーブルを囲んでいて、一瞬ここが牢獄じゃないんじゃないかと誤解させてきます。
しかし、良く見ればブリザーブフラワーをあしらったベルベットの壁掛けは恐らく壁に付いてる手錠を隠しているし、カーテンの向こう側に一瞬だけ鉄格子が見えました・・・間違い無くココ牢獄だ。
「何かご入用の物がございましたら、この看守にお申し付け下さい。」
そういわれて振り返ると何故かメイドさんがいた。
看守と呼ばれたメイドさんがおじぎする。
「看守です。」
・・・細かいこと考えるのは止めよう。
恐らく人狼王の気紛れなのか、人狼には粛清する相手を死ぬ前に歓待するとかそういう掟が有るんだな。
細かいことを考えるのを止めた私は、とりあえずつけっぱなしにしていた仮面を外して部屋を満喫することにした。




