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梟悪譚  作者: シープネス
13/41

13:主人公は「だって脅迫した方が早いし」などと証言しており・・・

ブドウの間引き枝を高温で焼き上げて作られた葡萄蔓墨を贅沢に使用しました!

気になるアノ子へのラブレターから地獄の業火を呼び出す符術の記入まで幅広くご利用いただける万能の黒色です。


参照:「黒インクのチラシ」より抜粋

ちょっと怖いけど部屋の中央に完全武装の鎧が立っているだけで、このボロい部屋もお姫様の私室みたいに思えてくるよね!

どっちかといえば悪の居城みたいな雰囲気かも知れないけど…

悪のネクロマンサーってのもいいよね、こう・・・仮面を被りましてですね。


「ホネッコ、侵入者には無警告で攻撃しなさい。」


私の声を聞いたホネッコが、部屋の中央で仁王立ちになり警戒する。


やった!カッコイイ!


こうやって騎士様に部屋を守らせながら、私は天蓋付きの豪奢なベッドに・・・ここには軋む安物のベッドしか無いけど、とにかくベッドに腰かけて、室内を睥睨する訳ですよ!

すると、部屋の奥に止まっていた小鳥が・・・小鳥?


「やぁ初めまして、突然なんだが君と交渉し【ドンッ】


仰々しく挨拶の口上を述べようとした小鳥が、ホネッコの一撃を受けて体の一部を貫かれて絶命する。

ビシャっと飛び散ったわざとらしく赤い色の血が部屋の壁を汚した。


「酷いな君は、オレだって【ドンッ】


反対側の部屋の隅に現れた小鳥が再びホネッコの攻撃で切り取られて絶命する。


「ちょ、待って話を【ドンッ】


焦ったようにタンスの上から現れた小鳥が更に切り落とされる、

4匹目の小鳥は出てこないが、それでもホネッコは警戒を解かない。

返り血で汚れた部屋の中心に移動して、ブラッディジェムを3つの小鳥の亡骸に投げつけながら考える。


さっき、テラーナイトと契約するまで部屋の中には間違いなく私しか居なかった。

あれから今までの間でドアが開いたのは一度、オスカーさんが部屋に誤って入った時だけ。

あの一瞬で3匹の使い魔が紛れ込んだと考えるのが自然だけど。


室内の状況も分からないはずなのに、こうも的確に私の死角へ使い魔を転送出来るだろうか?

普通なら出来ないと考えるだろう、今の部屋の配置が分かるのは直前に部屋を開いたオスカーさんしか居ない。


・・・なるほど、よくわかった。


唐突に何かを合図するように左手を上げれば、ブラッディジェムに侵食された三つの小鳥型使い魔の亡骸が、バネ仕掛けのように私の許へ飛び込んでくる。

三つの亡骸は、私の腕の中で欠けたパーツを血色の粘液で補いながら歪な形へと生まれ変わりつつ、ポシェットから取り出した真っ黒な液体の入ったビンを体内に包み込んでいく。

そして、私は強化された腕力で彼らを窓へ向けて全力で投げつけた。


「ギヒャァァァァァッ。」


心地よい鳴き声と共に”私の手で生まれ変わった使い魔”が、窓を突き破って飛んでいく。

彼らは体内に収納したビンを簡単に砕くだろう、そして命令通り中身の液体を体内に保持しながら・・・この町の上空を旋回する。

外の廊下で誰かが走り去る、それと同時に死角から声が聞こえた。


「おい、お【ドンッ】


私の死角から唐突に現れた誰かを”ホネッコは命令通りに侵入者として無警告で攻撃する”。

しかし避けられたらしい、覚悟を決めて振り返ると、そこに居たのはヒーラーの制服を着崩した男・・・良かった、オスカーさんじゃない。


かなりの手練れ・・・今の私でも勝てないわね、素早く紡がれる光の魔法、恐ろしい威力のソレを見ながら余裕ぶって笑いながら言い放つ。


「あら、私を殺したら、ツギハギだらけの貴方の使い魔がバラバラになって、ビンの中身が町に降り注ぐわよ?」


あら絶望した顔がとっても素敵ね、町の中に大事な人でも居るのかしら?

もしも街中で大規模なテロが起こって、その原因からあなたの使い魔の羽根が見つかったら、弁明は聞いてもらえるかしら?

弁明が受け入れられたとしても、所属しているギルド・・・インペリアルの名声は地に落ちるでしょうね。


私を一撃で殺せるくらい収束した魔法を構えたまま身動きも取れない男へ向けて、両手を軽く振って馬鹿にして見せる。


「バケモノか貴様・・・何が狙いだ。」


「貴方がルールを守らないからでしょ? それなら私はもっともっとルールを守らずに、貴方の家族とか、恋人とか、友人とか、無関係の人だって全部巻き込んで大騒ぎにしてあげる。」


「・・・ルールに従う、だから止めてくれ。」


「それなら、部屋から出て行って。」



***



ヒーラーの男が部屋から出ようとした所でオスカーさんが廊下に見えると、男はオスカーさんの顔を見て吐き捨てるように言い放った。


「ノータス、お前の望みを叶える、お前らと二度と出会わん事を祈るよクソがっ。」


一方的に喚いた男はそのまま二度と振り返る事無く街中に消えていった。


「のーたす・・・?」


「改めて名乗ろうか・・・オイラの名前はノータス・オスカー・アストロ・・・今まさにアストロ家から除名されたから只のオスカーでいい。」


あすとろ・・・


あすとろ家?


アストロ家!?


「あの、アストロ家って勇者の…」


私の言葉を聞かずにオスカーさんが足元に跪いて頭を垂れる。


「あの、オスカーさん?」


「貴台を我が王と仰ぎ、我が名にかけて忠誠をお誓い申し上げる。」


「えっと・・・保留でお願いします。」


正直状況が分からんのですが何がどうなってこうなってるの、誰か教えて?


しかし、一つ確実に分かった事が有ります。

壊れた窓から異形の使い魔が3匹戻ってきて、床の上で溶けて消滅する。

体内に入っていた黒い・・・【ただのインク】が零れて床に広がった。


【ただの黒インクでも、意味深なビンに入れておくと毒薬に見える。】

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