手記4
■手記は幅約10cm・長さ約20cm・厚さ1mmほどの木の板に、インクで書かれている。板は左上に穴があき、ひもでまとめられている。
■前回の手記と比べ、文字・内容ともに読解が可能。※書き間違いは●で表記。読みとばし推奨。
■8枚目は手記者が失踪後の時系列が記載。3月の卒業式後に失踪し、翌年の3月頃に前回の手記(7枚目)が書かれたことがわかる。今回の手記(9~11枚目)は、その6ヵ月後にあたる翌年の9月頃に作成されている。
(9枚目)
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前回の記録からずい分と時間がたっていた。
日本語で書くのも久しぶりになる。半年ぶりといった
ところ。落ち着いたのでまとめておく。前回のは
ひどくて困る。とりあえず、捨ててはいない。
こちらに来たのは、結局1年半ほど前だという。実は、私は
3ヶ月ほど寝ていたらしい。神殿の話で
は、なじむのにそれくらい●かかったのだという。
なじむ。
私の体は●、半分ほど力に置きかわっていたそう
だ。世界を越えるには、支払う代償も大きい
ということなのか。体は食べたもの
でできている。3ヶ月何も食べなかった私は、
私の体は、力でその形を補われていた。
力ばかり使い、また、大して食事をとっていな
かったのも良くなかったようだ。力を使えば、
私のやり方では、体に力を取り込むばか
りだ。それで食べなければ、体は力になるばかり。
日本への入口が開くのは半年後。今の状
態では、戻った瞬間に体が崩れるとのこと。
力の濃度が足りない。私を支える力が、あちら
は足りない。
(10枚目)
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体を戻すには、食べることが一番だという。
悩んでいても仕方がないので、色々と聞いた。
幸い、私のような例は多くあったので、経
験ややり方を聞くことができた。その分の
対価を力で稼がなければならな●●かったの
は、皮肉が効いている。
こちらのものを食べて、力を細胞に
置きかえることが、単純で、地味だが、
最も確率が高いという。残念だが、
100%にはならない。最低でも3ヶ月、
確率を上げるに●はもっと長く。
なぜ帰るのか。
1人に聞かれた。こちらで私は、十分に役に立つ。
必要とされる。評価の高い、良い職として。
●●日本よりも、たぶん、ずっと。
帰りたい。帰りたいけれど、考えてしまう。
その人は、帰らないと言っていた。こちらでもやって
いけるし、何より、故郷の思い出を、何も持っていないと。
(11枚目)
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迷っているが、とにかく食べることにしている。
どうせなら、帰れる体にしてから迷いたい。
こちらの料理は本当に合わないが、本当
に辛いが! がまんして食べている。力も、
仕事以外は極力使っていない。魔
語はやめて、言葉を覚えることにした。英語
の勉強と思えば、要領はわかる。
大学に行くことができるだろうか? こちらは、
学校らしいものは小学校くらいまでしかない。もっと
学びたいなら高いお金を払って●●家庭教師を招く
ことになる。(驚いたことにこの人たちも奴隷)
暗くなってきた。日の出で起き、日が沈む
と寝る生活にも慣れた。あとは食事だけ。
明日もがんばってたべるつもり。
次回更新日:1月21日(土)22時




