12月16日(金) 日常~先の話~
「友だちって言やーさ、『ズッ友』ってあるだろー? 女子でよく言うじゃん」
「『ずっと友だちでいようね』?」
「そーそー。俺さー、あれ、ズリ友だと思ってた。えろーって」
「ずっと?」
「ずっと。でもさー、女子でズリ友ってなにすんのーって話だよなー」
「ナニ」
「だよなー! よーキンリュー、お前も取材?」
「…………あぁ」
「もういいですか? 琴留、終わったみたいなんで」
「次お前? SDKの取材かー、センターでもすんのな。グッズとかくれんの?」
「ありません。じゃあ」
「御明、大晦日の始発だから。防寒対策は必須だ」
「わかってます。……よろしく、お願いします」
「わかった」
「……おー」
バタン
「キンリュー、お前のコート、チョーシどう?」
「……いい」
「そっかー、そっかー……じゃー、しょーがないかー」
「……どうしたんだ?」
「あいつさー、2年の御明なんだけど、あいつの作るハメになっちまってさー、まー、やなんだけどヒマだしさー、キンリューのがメンテいるんなら抜けられっかなって思っただけ」
「……?」
「通じてない」
「マジ!? え、なにそれカツゼツわりーの俺!?」
「就職が決まって卒業まで時間があいたから、さっきの奴の装備を作ることになった。蓮、約束もした」
「まーそーだけどさー……そーだキンリュー、そんなんでお前の装備、新作とか無理だから。仙子も凜も追い込みだし、カイチョーなんてあいつの絶対ダメだし、俺と遥希でやんなきゃだし」
「会長は無理だな」
「だろー、姫なんてもっとだろー、やだなー」
「蓮、あれは貴重な買い子だ。友人でもなんでもない。始発から一般入場列に待機させて、底冷えするトラヤ(※1)の列に4時間並ばせても良心が痛まない、貴重な買い子。会計が遅い1限(※2)壁サークルを3回転させてもいい」
「お、おー」
「その買い子をさせるために装備を作る。ちゃんとした約束だ。お互い、守らなくっちゃならない」
「まー、なー……あ、わりーキンリュー、こっちの話。なんで、なんかほしー装備あんなら1年のやつらとそーだんしてなー」
「3年生は2月から自主学習期間になる。そうなったら卒業までいないのと同じだ。ちょっと早いが、俺たちのサポートも終わりみたいなもんだな」
「……わかった」
「つーかさー、2月まで教習所通えねーのがめんどいんだけど」
「学校で申し込むからな」
「もちっと早くても良くね? 一ヶ月で免許取れなかったらどーすん? 3月には寮閉まるし」
「筆記は落ちる奴が珍しいって話。……キンリュー、聞きたいなら聞いてくれ。首ひねられてもわからん」
「…………免許って、車のか?」
「そーそー、3年で時間あんなら取りに行かせてもらえんの。けど2月からなんだよなー」
「1月はまだ授業あるから」
「そーだけどさー。つーか、どーせならバイクの免許取りたくね? あれなら全部自分で動かせるじゃん。車は自動運転ばっかでつまんなそー」
「こけたら痛いな」
「でもカッコいーぜ。そーいや今日もすげぇデカいバイクがとまってた」
「裏の駐車場?」
「そそ。……あーーーバイクの免許取りてーー後ろに彼女乗せてぇーーってか彼女ほしーーー」
「むしろそれか」
「それしかねーじゃん! 高校生活で彼女いませんでしたー、ってまじボッチっぽくね!? 同中のヤツに言いたくねー。戻ったって山ン中だぜ、ウチ。出会いなんてさー、なぁーーーんも期待できねーよ」
「職場恋愛とか」
「オバハンばっかだった。あと結婚してた。まーほら、仙子じゃねーからさ、俺」
「……免許、どこで取れるんだ?」
「お、キンリューお前もバイク乗りてーか? だよなーかっこいーよな! 冬休みに免許合宿行っちまうか? まだ間に合うんじゃね!?」
「いや待て落ち着け、琴留はまだ1年だ。……そういえばお前、今いくつ?」
「……16」
「…………じゅうろくさいかー……やー、全っ然そんな感じじゃねーな、なにこの敗北感。キンリューお前カブ(※3)にしろカブに。それなら許すわー」
「琴留にカブとか、足が余りまくり」
「……カブって何だ?」
「そこからかよ!?」
「画像見せたほうが早い。キンリューも更衣室戻るか? 俺たちもスマホあそこに置いてる」
「……わかった」
「あーーー、なんか早かったなー、もうすぐ卒業かー」
「無事にな」
「…………」
※1 トラックヤード。国際展示場のホール外敷地の1つ。夏は灼熱、冬は極寒。雨が降れば阿鼻叫喚。
※2 販売数を一人1部(セット)に限ること。
※3 スーパーカブ。国産バイク古参。1Lで3桁走行(平地)するタイプもある驚異の乗り物。小さい。
■次回更新日:12月31日(土)




