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 12月14日(火) 日常~たあいのない(かなうことのない)夢~






「変ッ! 身ッ!」

「BL〇CK」

「実装ッ」

「エクシー〇ラフト」

「……」(無言のまま頭上で円を描く)

「○狼」

「正解、正解です! 何で知ってんすか先輩!?」

「……何やってんだ?」

「よー、キンリュー。変身当てごっこ」

「会長の特撮知識がどこまであるかを測定する会」

「?」

「蓮、遥希、それではわからないと思う……。いやなに、大したことではないよ。持久走の時間が余って6限はもう自習なんだが、私たちも200m走のレーンに用があってね、順番待ちをしているのさ。そうしたら魔戦の子たちと話が弾んで、最終的に特撮変身ポーズを当てることになった」

「最初なんの話だったっけかなー?」

「俺たちの就職おめでた話から進路、将来の夢、子どもの時の夢、でAR回路の起動話から定番の特撮になった」

「……?」

「えーと………………あ、そうか、回路と特撮か。君、起動は言葉だけだったね。海外はそうなのかな? AR回路はイメージが大切だろう? イメージしやすくするために、小さい子に教えるときはああいった特撮や変身アニメもののポーズから入るそうだ。日本では定番らしいね」

「さすがに高校生であれやるのは恥ずいな」

「なー。つーかキンリューは特撮とか知ってんの?」

「アメリカでは特撮を『Toku(トク)』とか呼んでいるみたいだな。琴留もそれらしいのは見たことあるんじゃないのか?」

「さすがに先ほどのような古いものは慶司郎も知らないと思うが……どうだい?」

「……知ってんのか?」

「私? 会長ほどではないがね。叔母のコレクションがあったから、いくつかは知っているよ」

「男ならわかっけどさー、女の人で特撮好きってのもあんだなー」

「ドラマや舞台が好きだったそうだ。その流れで特撮もDVDを揃えていたらしい。俳優つながり、なのかな?」

「へー」

「……………………まぁ、あってるよな、会長」(小声)

「……そうだな」(小声)

「そういうわけで、待っている間、特撮にも詳しい会長へ魔戦の子たちが出題して、作品を当てよう、ということになった」

「暇だし」

「で、会長がゼンショー中ー。なに、もう終わりなん?」

「ネタ切れだ。次の問題待ち。僕たちが走る番になったら時間切れになる」

「……なんで走るんだ?」

「コンビニ行きたくねーから」

「この寒い中行くとか地獄」

「だからそれではわからないと……ほら、私たちは寮生だから、近隣のコンビニをよく使うことになる。だがまあ、見ての通りここは山だ。山奥だ。最も近いコンビニは隣駅まで行かなければならない。放課後は日が暮れてしまって、暗いし寒いだろう? 誰も行きたくはなくてね、コンビニに用事がある時は、希望者の中からこうして担当を決めている」

「今日は200m走でドンケツタイムの奴なー」

「おでん食いたい」

「僕はピザまん」

「私はシャンプーが切れた……まぁ、そういわけだよ。おや、そろそろ順番かな?」

「先輩っ、宅先輩! これならわかんないっしょ! いきますよーーー!」 


 ズアァッ


(じょう)○!!」

「……瀬里澤、カラオケの十八番(おはこ)が来たぞ。解答権を譲ろう」

「おかしな解説をつけないでくれたまえ会長。たまたま、たまたま好きなだけだよ……答えは、地球を守る正義の宇宙刑事、○ャバン!」

「く、悔しいけどわかってくれる人がいて嬉しくて、俺はいったいどうすれば!?」

「笑えばいーと思うぞー」

「テンプレ乙」

「あの主題歌、つい口ずさんでしまうのだよね」

「妙に耳に残る。ネタ切れか?」

「先輩っ、またリベンジさせてください!」

「そのうちな。順番、来たぞ」

「絶対っすよ!」

「しかし、ギャ○ンか、懐かしいなぁ……」

「……好きなのか?」

「小さい頃の話だよ! DVDを見ながら真似した覚えがある。当時の戦隊ものでも、AR回路を使った変身をするものが多かった」

「フィールド内で撮影するのも始まってたな」

「『センター前で僕と握手!』ってね。……うん、なんだ、一度は言ってみたい起動文言だよ、あれは。子どもの時、というか今でも夢だ」

「そう、だな。僕も、いくつかある」

「…………」

「会長ー、仙子ーー、番だぞーー、早く走れーーー! さみーーーー!」

「瀬里澤、僕は勝つぞ。勝ってぬくぬくしながらピザまんを待つ」

「頑張ってくれ、私も負けない。ではね、慶司郎」

「…………あぁ」







■次回更新日:12月14日(水) 22時

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