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 12月 6日(火) 日常~期末考査~







「銀座のイルミネーション、カップルばっかだったわー」

「行ったのかい!?」

「行くわよ。買い物行くって言うからそのついで」

「……だ、誰と?」

「はぁ? 親よ、親。母親と妹。あんた何考えてんの、テスト中じゃない」

「いや、そもそもテスト中なら行かないと思うよ!?」

「だってなんか買ってもらえるかもしんないし。銀座よ?」

「それはそうだが……それもそうか」

「でしょ? 期末の勉強してる暇があったら過去問解くわ。なんか飽きたから息抜きに行ったの。気分転換だって重要なスケジュールなんだし」

「まぁね。しかし杏ちゃんも一緒か……余裕だな。慶司郎といい杏ちゃんといい、今年の1年生は文武両道型が多いのだな」

「まー、負けず嫌いだからあの子。あと成績悪くて親にごちゃごちゃ言われんの嫌なんじゃないの? 化粧とか服とか、好きにやってるし。……っていうか、馬鹿二人が好きにやってんのになんであたしたちはテスト受けなきゃなんないの? ほんっと頭くるわー」

「蓮も遥希も受かったからね、公務員」

「あいつらの給料が税金から出ると思うと、こう……ムカつくのよね」

「いや、でも、社会人になるのだからきっと真面目に働くと思うよ!」

「……」

「……それなりに」

「……」

「た、たぶん」

「まー、いーけど。そーいえば仙子、あんたこそどーなのよ、勉強。物理だっけ、死んでるの?」

「実は今回の期末、物理には自信がある」

「めっずらしーー。カンニングでもすんの?」

「しないよ!?」

「じゃあテスト問題を盗み見したとか」

「不正行為から離れてくれたまえ、凜……なに、今回はヤマをはってもらったのさ」

「あんたのヤマって当たってんの見たことないんだけど」

「大丈夫だ! はってもらった、と言ったろう? はったのは私じゃない、慶司郎だ!」

「…………どぉーしてあんたがそこでドヤ顔すんのよ高3でしょ!? 受験生でしょ!? お菓子だけじゃなくってテストまで1年にたかってどーすんの!」

「痛い痛い痛いから凜痛いからつねらないでほしい! ……いやね、たかっているわけではない、これはギブアンドテイクだ。私は装備面で慶司郎を助けてきた。今度は慶司郎が勉強面で助けてくれる。お互いができることで協力しあうという、互恵関係なわけだ」

「1年に装備出すのは授業の課題でしょ? あたしたちがすんのは当たり前の話じゃない。何言ってんのよ」

「……あーーー、うん、まあ、そうだ、うん、そうなのだが、こう、背に腹はかえられないのだよ凜! 知っていたかい? 慶司郎は教え方が巧みだった。公式をその成立背景や意味から教えてもらったらよくわかってしまった。模試の解き直しをした時は目から鱗だった! かなり落ちた! ……あれだ、将来がかかっている。ちっぽけなプライドは捨てるべきかな、と」

「結局たかってんじゃないのあんた。クズ度上がってない?」

「クズではないから! 先輩のようにお金を借りるわけではないし」

「いたわねー、あの人。アレで大学行ったんだっけ。生きてんの?」

「たまにお金を無心するメールが来る」

「貸しちゃだめよ仙子。あれ絶対返さないで連絡取れなくなるタイプね」

「安心してほしい、そもそも貸せるほどの余裕がない。……まぁ、とにかく、そういうわけで今回の物理には自信がある。センターまであとわずかだが、光明がさしてきた」

「あっそ。良かったじゃない。……年明けたらセンター? なにそれ早いわー……ゆーうつー……」

「そうだねぇ…………あ」

「どーしたの?」

「そうだ、慶司郎に教わるのはもう一つ役得があった」

「?」

「美形は目の保養だ」

「……はぁ?」

「慶司郎はまれに見る美形だからね。今後の人生でまず見ないレアものだと思うと、物理の公式も多少は苦にならなくなってきた。日々の勉強ですさんだ心を顔面偏差値80が癒してくれる。しかも間近。慶司郎は爪の形まで整っていることに気がついてしまったよ! たまにドキドキするね! ……凜、君がアイドルのコンサートで良い席を取ろうとする意味、よぉくわかった」

「……あーんーたーは何アホなこと考えて勉強してんの受験生でしょ!」

「『気分転換は重要』だろう!」

「勉強と休憩のメリハリつけろってことよ!」


 ガラッ


「おーーう、テスト始めるぞー、キャットファイトはそれまでにしとけー」

「していません!」

「センセーそれセクハラ!」

「俺は言葉の意味を知ってるお前らに驚きだよ。ほれ、問題集しまえー」







■次回更新日:12月13(火) 22時

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