手記1
■手記は幅約10cm・長さ約20cm・厚さ1mmほどの木の板である。
インクで書かれている。
板は左上に穴があき、ひもでまとめられている。
■初期の手記では板の下方ほど文字が小さくなり詰め込まれている。
インクのかすれや書き間違いも多く、二重線等(※)で訂正されている。
※二重線部分は●で表記。読み飛ばすことを推奨。
■平仮名が混じるのは漢字がわからなかったためと見られる。
(1枚目の板)
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私、瀬里澤仙子がこの異世界にやってきて
から数日が過ぎた。身を寄せる場
所も決まり、毎日の食事にも困らなくなった。
味つけがあわないと不満を感じられる
くらいには余ゆうも出た。
●●●筆記道具(紙は高い!)
を手に入れたので、記録を残すことに
する。仕事でも使うので、早く慣れた
い。しかし、●●●●日本語で
書いているのだが、このペンは画数の
多い漢字で書くのにはむいていないようだ。
●一文を書くのに、何度も●●●ペン先に
インクをつけなけれならない。Mareの
ほうが書きやすい。当然か。ここの言葉な
のだから。スペースに余ゆうはない。
これだけで1枚目の板が終わってしまう。
●特筆すべきことを記す。
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(2枚目の板)
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あの夜、私は突然こちらに来た。落ち●る、
という感覚しか覚えていない。なぜこうなったの
●●●●●●●●●かは神殿で調査中だ。
神殿! 異世界ということはすぐにわかった。
目が覚めて、人間ではない人物(?)が●●
いたのだ。いくら人に似ているとはいえ、目が6つ
もある人間はいない。特殊メイクでも
なかった。彼は驚いたことに
Mare(魔語)で話しかけてきたのだ! ●●この神殿
の職員とのことだった。
ここがMare(魔語)をもたらした異世界だとわかったのは
ろう報だった。日本では年に1度、この
世界とつながるはずだ。ということは、そこを通じて、
地球に、日本に帰ることも可能●のはず。
日本! 帰りたい。こうして書くと、記すと、
ますます気持ちがつのる。数日しかたっていないのに。
私は帰りたい。日本に帰るのだ。
当面の生活を確保するため、私は神殿づき
の奴隷となった。奴隷といっても、いつか見た●●
漫研のうすい本のような、ああいったものではなくて、事務仕事の
雑用係●●だ。1人で外出する自由はないが、衣食
住は保しょうされている。不思議な●話だが、神殿
●の奴隷であるほうが誘かいされないのだという。
書くスペースがない。板は2枚しか買え
なかった(わずかだが、自分を奴隷として
売って金を得た)。
生きて、日本に帰ろう。
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(2枚目の板の右下には目が6つあるヒトの顔のようなイラスト)