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俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第三章 平和な学園生活を送ろう

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エピソード 1ー7 予定調和、再び

 クレインさんの頼み事をクレアねぇに伝えた俺は席を移動。

 改めてアリスを探し始めた。そうして暫く会場内を歩き回り、片隅のテーブルでソフィアとおしゃべりに興じるアリスを見つけた。


「二人とも楽しんでるか?」

「あ、リオンお兄ちゃん。今ねぇ、アリスお姉ちゃんと新しいケーキについて話し合ってたんだよぉ~」

「新しいケーキ?」

「近いのはミルクレープかな。ソフィアちゃんが自分で思いついたんだよ」

「へぇ……それは凄いな」

 地球には存在しているケーキ。だけど、だからこそ、自力でそこに至ったのは凄い。

 以前はアリスやクレアねぇと比べて、自分だけ凡人みたいな感じで落ち込んでたのに、今やすっかり天才の仲間入りだ。


「それでリオンお兄ちゃんはどうしたの?」

「あぁうん。アリスに話があったんだけど、俺は後で良いよ」

「アリスお姉ちゃんにお話? ケーキの話は一段落ついてるから平気だよ?」

「そうか?」

「うん。それじゃソフィアは席を外すね」

 言うが早いかソフィアは席を離れようとする。だから俺はその手を掴んで引き留めた。

「ソフィアも居てくれて良いよ。と言うか、ソフィアにも無関係な話じゃないから」

「そうなの?」

「うん。実は学校の話なんだ」

 前置きを一つ。俺はアリスへと視線を向ける。

 けどアリスは学校と言われても心当たりはないのだろう。蒼く大粒の瞳をきょとんとさせ、小首をかしげている。


「リオン、学校の話ってどういう意味?」

「こういう意味だよ」

 俺はあらかじめ準備していた包みをアリスに手渡す。その包みの中身は、アリスが以前一度だけ袖を通して、その後はずっとタンスにしまっていた学校の制服だ。

「これは……私の制服? もしかして、制服姿でえっちぃことをしたいってお話?」

「んな訳あるかっ!」

 相変わらず思考が斜め上だな。


 それとソフィア。「ソフィアなら現役だよ?」とか、危ない発言をするのは止めなさい。まったく誰に教えられたんだか……って、アリスしかいないか。

 父を殺して闇落ちしそうなソフィアの為を思ってアリスと引き合わせたんだけど……正直、これで良かったのは不安だ。すっごい不安だ。


「それでリオン? 私の制服がどうかしたの?」

「あーそうだった。前に学校に通いたいって言ってただろ。だから、アリスが学校に通えるように手配したんだ」

 俺は投げやりに言い放った。アリスがお花畑な発言をしたせいで、サプライズが台無しである。


「……私が学校に? 覚えててくれたんだ。もう忘れちゃってるんだと思ってた」

「忘れる訳ないだろ。ただ、アリスは普通の女の子として学校に通いたいだろうって思ってさ。アリスを知る生徒が卒業するまで待ってたんだ」

「そう、だったんだ……ありがとう、リオン。凄く、凄く嬉しいよ」

 余程嬉しかったのだろう。アリスはほろりと一粒の涙をこぼした。

 最初はどうなることかと思ったけど、こんな風に喜んでくれるのならサプライズで用意した甲斐があったと言うモノだ。


「アリスお姉ちゃん、うちの学校に来るの?」

「そうだよ、ソフィアちゃん」

「ホント!? やったぁ! それじゃ四月から、三人で学校生活を送れるね!」

「うんうん!」

 手を取り合って二人ははしゃいでいる。けど……

「三人って、アリスとソフィアと、後一人は誰だ?」

 ――何故かその場の空気が氷った。


「……ねぇリオン。一応確認しておくけど、リオンも一緒に学校に通うんだよね?」

「いや、俺は通わないつもり、だけ……ど?」

 何故か俺の一言ごとに、アリスの瞳が細められていく。

「怒る前に、一応聞いておくね?」

「え、俺が怒られるのは確定なのか?」

「実は病気で学校に通えないとか、なにか深い事情がある訳じゃないよね?」

 無視された!? ……いや、アリスにとって、病で学校に通えないって言うのは特別な意味がある。まずは安心させてあげよう。


「大丈夫、病気とかじゃないよ。ただ、俺が一緒に通ったら身分がバレるかもしれないだろ? そしたら、アリスが普通の女の子として学校に通えないと思うんだ」

「あぁ、そう言うこと。私の為を思ってくれたんだね。ありがと、嬉しいよ――とか言う訳ないでしょ、このバカリオン!」

「バカリオン!?」

 なにそのロボットっぽい響き!? ――って、そうじゃなくて。アリスにバカって言われた? なんで? なんかむちゃくちゃショックなんだけど!?


「ええっと……なにがそんなに気に入らないんだ?」

「そんなの、リオンが居ないことに決まってるでしょ。他に何があるって言うの?」

「俺が居ないって……別に俺はどこかに行く訳じゃないし、学校から帰ってきたら毎日会えるだろ?」

「イラッ」

 うわっ、口でイラって言ったぞ!? って思ったら、物凄く良い笑顔で睨まれた。なにこの迫力、むちゃくちゃ怖いんですけど!?


「ねぇリオン。私の制服、私の部屋のタンスの奥にしまってたはずだよね? それを、どうしてリオンが持ってるのかなぁ?」

「えっと……驚かせようと思って、ミリィ母さんに持ってくるように頼んだんだけど」

「つまりリオンが、私の部屋のタンスを漁ったんだよね?」

「いやいやいや。ミリィ母さんに頼んだから、俺が直接漁った訳じゃないぞ!?」

「でも、リオンが私のタンスを漁るように命令したんだよね? それはつまり、リオンが私の服や下着が入ってるタンスを漁ったも同然だよね?」

「ちょ――っ!?」

「……同然、だよね?」

 相変わらずの笑顔。でも目は全然笑っていない。俺の頬を一筋の汗が流れ落ちた。


「ねぇリオン? リオンは女の子のタンスを漁るヘンタイさんで処刑なの? それとも、私と一緒に学校に通う為に、私を驚かせようと制服を用意しただけなのかな?」

「もちろん、アリスと一緒に学校に通う為に制服を用意しただけだぞ?」

 即答である。

 いや、こんな恐ろしい二択で他にどう答えろって言うんだよ。無理だよ、全面降伏だよ。他に生き残る道はないよ!

 と言うことで、俺も一緒にアリス達と学校に通うことが決定した。

 ……まあ、俺が渋ってたのはアリスを思ってのことだ。

 そのアリスが俺も一緒と望んでくれるなら、俺に文句なんてない。アリスが楽しい学園生活を送れるようにサポートしつつ、俺も一緒に学園生活を満喫させて貰おう。

 

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