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俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第二章 内政チートで学校経営をしよう

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エピソード 4ー1 生徒の親御さんを招待しよう!

 生徒の親を招待すると決定してからは怒濤の日々が続いた。

 まずは生徒達に事情を説明して出身地を聞き、家族に招待状を送りつける。

 その際に事情を知った生徒達は、手紙で事情を説明してくれると申し出てくれたんだけど、それは気持ちだけ受け取ることにした。

 生徒の大半は学校に来るまで字が書けなかったから、家族が見ても本人の字か判別出来ないし、手紙の内容なんていくらでも細工出来るからな。

 半端に説得するくらいなら、実際に会わせて一気に説得しようという計画になったのだ。


 でもって次。騎士団を秘密裏に動かして、各地で扇動している犯人の特定を急がせている。今はまだ手が出せないけど、扇動者が村を離れた時か、皆の誤解を解いたタイミングで捕らえる為だ。

 余計なことをしてくれたパトリックの尻尾は絶対に掴んでみせる。


 続いてグランプ侯爵に対抗する為の情報収集も開始した。グランプ領の情勢を調査したりで、侯爵と交渉する余地がないか調べているのだ。

 ちなみに、これを担当しているのはクレアねぇだ。

 従来の仕事や、家族の招待の日程調整なども同時にこなしているので、そのうち体をこわさないか少し心配だったりする。

 まあ、自分で何かをなしたいって夢を持ってるのは知ってるから、本当に危ないって思うまでは止めないけどな。



 そんな訳で一ヶ月経ったある日。

 学生寮のホールに、二十名ほどの親が集まっていた。

 ちなみに生徒は三十名以上いるので、親が来ているのは六割程度。卒業した一期生が滞在した村なんかでは混乱が起きず、親の理解が得られたからだ。

 逆に言うと、ここに居るのは全員が誤解をした者達で、憤りを隠そうともしない者、不安げに辺りを見回している者等々、負の感情を抱いているのがありありと判る。


 それを物影から確認した俺は大きく深呼吸を一つ。ゆっくりと皆の前へと進み出た。

 責任者が出てきたのかと色めきだった彼らは、けれど登場したのが小さな――十二歳の子供だと判って戸惑いの色を滲ませる。


「初めまして。俺がグランシェス家の当主、リオン・グランシェスだ」

「当主だと? 子供が当主になったという噂は本当だったのか」

「あんな子供が、俺達の未来を握ってるって言うのかよ」

「見ろよ、あの高そうな服」

「ああ。それにこの屋敷だって見たこともないくらい豪華だぜ。俺達が苦しんでるって言うのに、自分は贅沢三昧かよ」

「やっぱりあの噂は本当だったのよ!」

 俺の紹介を切っ掛けにざわめきが広がる。それほど大きな声ではないけど、それでも俺や周囲に聞こえる程度の大きさはある。

 だから普通ならここで、伯爵に対して無礼であろう! みたいな感じで誰かが止めるんだろうけど、今回は俺が口出ししないように厳命してるのでそれはない。

 俺は皆のざわめきが落ち着くまで辛抱強く待ち、頃合いを見て口を開く。


「さて、皆に来て貰ったのは他でもない。皆から預かった娘の扱いについて良からぬ噂が広まっているのは知っている。だからその誤解を解く為だ」

 再びざわめきが大きくなる。

「悪いけど、口々に喋られたら話が進まない。誰かが代表して質問をしてくれないか?」

 俺の頼みに、皆は顔を見合わせる。そんな中で、落ち着いた物腰のおじさんが俺の前まで進み出てきた。

「僭越ながら、私が代表をつとめさせて頂きましょう」

「あんたは?」

「私はレジック村の村長を務めるカイルと申します」

 なるほど、村長さんか。どうりで落ち着きがあると思った……って、子供を預けた親に村長さんなんていたんだな。今回はみんな生活に苦しい家ばっかりだと思ってた。

 ……なんて、怒られるから絶対言わないけど。


「それじゃカイルさん。なにか質問はあるか?」

「では、噂の真相についてお聞かせ下さい」

「噂って言うとどれのことだ? 悪いけどもう少し具体的な内容を言ってくれ。俺も全部の噂を把握してるわけじゃないからな」

「それは……その」

 貴族批判や侮辱と取られかねないような内容だからだろう。カイルさんは口ごもる。


「どんな内容でも構わない。内容にかかわらず、ここに居る皆に罪を問うようなマネは絶対にしないと誓おう」

「では……その。リオン様は領地の税収で贅沢三昧をして遊びほうけるばかりか、集めた子供を、その……拷問していると」

「なるほど。なら答えるけど、それらは全て事実無根だ」

 俺がそう言った瞬間、嘘を吐くな――みたいな声が上がる。


「皆の者、それではリオン様が言うように話が進まんだろう。まずは私が聞くから、暫し我慢してくれ」

 カイルは一喝。皆を鎮めてしまった。さすが村長さん。他の人よりは冷静だな。


「リオン様、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「ああ、なんでも聞いてくれ」

「では、先ほど事実無根とおっしゃいましたが、娘達は無事なんでしょうか?」

「もちろん元気にやってるよ。後で皆と再会して貰う予定だ」

 と言うか、既に隣の部屋に待機して貰ってるんだけどな。みんなが元気に過ごしていると強く印象づけるタイミングを見計らってるので、今のところは内緒だ。


「それでは二つ目の質問です。贅沢三昧はしていないとおっしゃいましたね?」

「ああ、確かに言ったな」

「では、このお屋敷はなんでしょう? それに貴方様のお召し物も、素晴らしく高価に見えるのですが……いかがですかな?」

「そうだなぁ……高価と言えば高価だな。でもそれは今だけだ。いずれは皆の手に届くようにするつもりだ。今回作ったのは、試作品みたいなものだからな」

「わ、我々の手に届く、ですか? し、失礼ですが、お値段をお聞きしても?」

「金貨百枚くらいじゃないかな」

 二百枚じゃないのは、女子の制服に比べてシンプルなデザインだから。少し安めかなって思ったんだけど……値段を告げた瞬間、部屋の空気が剣呑になった。


「金貨百枚? 百枚ですと? 金貨百枚の屋敷が、いずれは我々の手に届くと、貴方様はそうおっしゃるのですか?」

「あぁ悪い。聞かれたのは建物の値段だったか。さっきのは、俺が着てる服の値段だ」

 俺がそう言った瞬間、張り詰めていた空気が弾けた。


「リオン様は我々が日々どれだけ苦労しているか判っていない! 例え服の値段がその十分の一だとしても、一生働いても買えない程度の稼ぎしかないんです!」

「だから、平民には手が届かないと?」

「当然です! 天地がひっくり返っても、一生手に入りません!」

「――そうだっ、ふざけるな!」

「――金貨一枚だって無理よ!」

 皆が一斉に声を荒げて捲し立てる。


「でも、あんた達の娘は全員、その服を着ているぞ?」

「「「……………は?」」」

「ちなみに、そっちはもう少しこったデザインだから、金貨二百枚の値がついてる」

「「「……………………は?」」」

「それと勘違いしてるようだけどな。この建物は生徒が住んでる学生寮だからな」

「「「……………………………は?」」」


 いや、そんな『……は?』とか繰り返されても困るんだけどな。

 ……なんて、気持ちは判るけどな。

 とにかくこれで下準備は整ったと、俺はパチンと指を鳴らす。すると、隣の部屋からぞろぞろと生徒達が入ってきた。そうしてみんなは俺の後ろへと並んでいく。



 ちなみに、今日の彼女たちはひと味違う。久しぶりの家族への再会なので、いつもの制服に加えて、髪飾りやアクセサリーの類いで着飾っている。

 ゴシック調の制服に着飾った姿は、どこかのユニットアイドルを彷彿とさせる。この世界でここまで着飾るのは、お姫様といえども不可能だろう。


 どうだ。久しぶりに会った娘が無茶苦茶可愛くなってて驚きだろう。さぁ、娘との感動の再会を楽しむが良い――って、なんでみんな困惑してるんだ。


「ええっと……娘との再会を喜んでも良いんだぞ?」

「「「………………………………………は?」」」

「いや、それはもう良いから。皆が会いたがってた娘だろ?」

「「「「…………………娘? どこに?」」」

「いや、だから目の前に。綺麗な服で着飾ったり、髪がサラサラになったり、日焼けがなくなって珠のような肌になったりしてるけど、間違いなく皆の娘達だぞ?」

「「「はああああああああああああああああああああああああぁあぁぁっ!?」」」

 そこで一番驚くのかよ!


 いやまぁな? 髪はぼさぼさで、服はジャージ(イメージ)って感じの娘が、久々にあったらトップアイドルみたいになってたんだから気持ちは判るけどな。

 さすがに驚きすぎじゃないか? 生徒達も微妙な表情をしてるじゃないか。


 なんて考えていると、リアナが俺の横に進み出てきた。そうしてカイルさんに向かって微笑みかける。

「お父さん、久しぶりだね」

 おぉ、なるほどね。カイルさんはリアナのお父さんだったのか。

 リアナは二期生の中でも可愛くなった筆頭だからな。カイルさんも久しぶりに会った娘が綺麗になっていてさぞ驚いてることだろう。

「どうだ? 娘はちゃんと元気にしてただろ?」

 驚いただろうって感じで尋ねると、何故か半眼で睨まれた。……え、なになに? なんで俺は睨まれたんだ?


「カイルさん? どうかしたのか?」

「どうもこうもありません。このような美しいお嬢様をうちの娘などと、いくら何でも無理があるのではないですか? 本物のリアナに会わせて下さい!」

 このおっさん、まだ自分の娘が判ってない!?


「ええっと……この子がリアナなんだけど?」

「はっはっはっ、何を馬鹿な。うちの娘はもっと髪がぼさぼさで肌も日焼けしていて、ええっと……そう。もっと貧相な田舎娘なんで――がはっ!?」

 うおっ、リアナのハイキックがカイルさんの肩口に突き刺さった!?


「こ、この乱暴な感じはまさしくリアナ!? おぉ、おお! 無事だったのか!?」

「うっさいっ! どうして顔を見て判らないのに蹴られたら判るの、よ!?」

「――ぐべらっ!?」

 今度は追撃に体重の乗った回し蹴りが! 大丈夫なの――あ、崩れ落ちた。

 うちの学校って格闘術は教えてなかったはずだけど……今の体重の乗った一撃は見事だったな。とても今年十四歳になる女の子の放った蹴りとは思えない。

 ただ……スカートで回し蹴りは止めた方が良いと思う。


「護身用に格闘技を教えたんだよ。あと、リオン以外にはちゃんとレーザー級が働いてるから心配ないよ」

「アリスか……って、どっから現れた。あと、人の心を勝手に読むな。それはソフィアのお家芸のはずだ。そして、俺に見えたら意味ないだろというか、またお前が犯人か。相変わらず自重してないなっ」

 取り敢えず思いついた限りの突っ込みを入れる。正直、一言での突っ込みどころは一カ所までにして欲しい。


「それより、みんな、娘との再会を果たせたみたいだね」

 ……それよりの一言で流しやがった。いやまぁ良いんだけどさ――と、俺は釣られて周囲へと視線を向ける。

 親御さん達は皆、無事に娘と会えたようだ。娘の変わりように驚きつつも、感動の再会を果たしている。

 でも生徒の方は親と会わずに友達同士話してるグループがあるな。……そっか。誤解が生まれなかった村の親は来なかったからな。

 どうせなら全員呼ぶべきだったな。今の厄介事が片付いたら改めて招待するとしよう。


 そうして皆の再会を見守ること数分。ようやく親御さん達は落ち着いたようで、一人、また一人と俺の元に集まってきた。

「俺に対する誤解は解消されたと思って良いか?」

 俺が尋ねた瞬間、カイルさんが頭を下げる。それに続いて、他の親全員も頭を下げた。

「事情はリアナ達から聞きました。リオン様が娘達をどのように扱ってくれているかもです。疑うようなマネをして、申し訳ございません!」

「そっか。誤解が解けたなら良いんだ。頭を上げてくれ」

「いえ、まだ言うべき事が残っています。今回の伯爵様に対する無礼の数々、全ては我々の責任で、娘には一切関係ありません。ですからどうか――」

「あ~、そう言うめんどくさいのは無しだ」

 なにが言いたいか予想がついたのでカイルさんのセリフを遮る。


「頭を上げてくれ。そもそも最初に誤解を招いたのはこっちの落ち度だから、謝るのは俺の方だ。心配を掛けてすまない」

 ケジメとして頭を下げる。その瞬間、彼らに動揺が広がった。貴族が頭を下げるとは思ってなかったんだろう。

 その辺、俺はあんまり貴族っぽい考えを持ってないからな。謝るのに抵抗はないけど……余り頭を下げすぎても相手を困らせるかもしれないな。

 俺はそう思って直ぐに頭を上げた。


「とにかく、今回の件でここに居る誰かに責任を問うことは一切ないよ。安心してくれ」

 ここに居ない扇動者とかにはたっぷり責任を取って貰うつもりだけどな。とは声に出さずに付け加える。

「リオン様、寛大な対応、ありがとうございます」

「良いって。それよりせっかくここまで来たんだ。二、三日はゆっくりして、娘がどんな勉強をしてるか見て行くと良い」

「いえ、それは……畑の仕事もありますので」

「皆が留守中は他の村人にサポートするように言ってるから大丈夫だ。その分、支援もすることになってるからな」

「そう言うことでしたら、少しだけ……」

「うんうん、そうしてくれ」

 そしてあわよくば知識の一端を持ち帰って、この学校の有用性を村に広めてくれ。とは声に出さずに伝える。

 その辺は俺が言うまでもなく、生徒達がちゃんと判ってるはずだからな。



 そして数日後。

「う゛ぁ~温泉に毎日入れるとか、ここが極楽か~」

「料理が、料理が美味しすぎるわ~」

「蛇口をひねったら水が出てくるなんて~」

「「「もう村に帰りたくない~~~」」」

 堕落しきった村人達が帰ろうとしないので村に強制送還した。

 

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