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俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第二章 内政チートで学校経営をしよう

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エピソード 2ー7 穏やかな日々に忍び寄る影

 アリスの扇動――こほん、演説が効果的だったのだろう。皆のモチベーションは高くて、学校は驚くほどに順調なスタートを切った。

 そしてそれと同時、各種技術開発も恐ろしいスピードで進んでいる。

 それらをごく一部だけ紹介しよう。


 まずは定番の農具。

 鉄製の(くわ)を初めとした農具に、千歯扱きせんばこき唐箕(とうみ)(風で穀物を精選する道具)やら、水車の力を使うあれこれ。

 今までは青銅の道具しかなかったので、一気に世界が変わった。


 次に美容関連。

 まずは小麦粉のシャンプーにハチミツとレモン汁を使ったリンス。これらは食料品を使った贅沢品なのでまだ身内だけへの提供だけど、ゆくゆくは流通させる予定だ。

 更には苛性ソーダ――取り扱いが危険なので、職人を用意した――に油脂(ゆし)と水を混ぜて作った石鹸。

 更には石鹸を作る時に出来たグリセリンと、シルク採取時に出来た水を併せたシルク化粧水。これにより、みんなの髪やお肌の事情が一気に変わった。


 ちなみに植えた作物は種類が多すぎて割愛。

 他には養蜂でハチミツの量産や、天然酵母の培養。他にも木炭、陶器、和紙と様々なモノが生産されている。たぶん、この街だけ数世紀くらい文明レベルが違う。

 ……自重? なにそれ、美味しいの?


 そんな訳で、授業が始まって一ヶ月、学校や各種生産は順調に進んでいる。

 この調子なら、すぐにみんなが幸せに暮らせる街は完成。このまま何事をもなく、ソフィアやみんなを守れる環境が整う――と、この頃は思っていた。



 ある休日――学校は週に一度のペースで休みを取ることにした――の昼下がり。俺は久しぶりに屋敷でお茶会を開いた。

 なぜなら、あのソフィアが、学校の友達を招きたいと言ったからだ!

 いやぁ、順調にヤンデレから回復してくれて嬉しい限りだ。スフィール家にいた頃は、このまま闇落ちするかと思ったもんな。


 ちなみに、この場にいるのは俺とソフィア、それに友達の二人だけ。アリスはお菓子を用意してるのでもうすぐ来るけど、クレアねぇは書類整理で欠席だ。

 自分でなにかを成したいという夢の為に頑張ってるんだと思うけど……なんか仕事を押しつけてるみたいで申し訳ない。

 クレアねぇには後で、お茶菓子を届けてあげよう。


「本日はお招き頂き、ありがとうございます」

「ほほ本日はお招き、いた、頂き、ありがとうございます」

 ソフィアの友達――ティナとリアナが淑女らしいお辞儀をする。

 授業の一環で礼儀作法を教えてるお陰か、入学したてのリアナはまだぎこちないけど、ティナの方はなかなか板についてきてるようだ。


「二人とも、そんなに硬くならなくて良いよ。それに今日は、ソフィアの友達としてきて貰ってるからな。な、ソフィア?」

「うん、そうだよぉ。二人とも今日は来てくれてありがとうね」

 そう言ってソフィアが浮かべるのは、不自然さの欠片もない笑顔。心を読めなくなって不安もあるはずなのに……二人の人柄のお陰なのかな。


「と言うか、あれだな。俺はいない方が良くないか?」

 せっかくのお友達とのお茶会。ソフィアはともかく、二人は緊張するだろうと思ったんだけど、ソフィアに腕を捕まれた。

「ダメだよ。ソフィアはリオンお兄ちゃんともお茶会したいんだから」

「でもなぁ……」

 俺はティナとリアナに視線を向ける。

「私達なら大丈夫です。むしろ、リオン様ともお話ししてみたいというか……ねぇ、リアナもそう思うよね?」

「え、ここで私に振るのっ!? ……あ、えっと、私も居てくださって平気でしゅ」

 ……噛んだ。そして、リアナの顔が真っ赤になっていく。


「や、やっぱり、俺は席を外そうか?」

「あうぅぅ、大丈夫だから、気にしないでくださいぃぃ」

 あぁ……スルーするのが正解だったか。フォローしたつもりだったんだけど、逆にとどめを刺してしまったらしい。リアナは恥ずかしそうに突っ伏してしまった。

 と言うか、ソフィアとティナが笑ってるし、容赦無いなキミ達は。


「お待たせ、みんな。お菓子と紅茶を持ってきたよ」

 ノックの後、アリスが部屋に入ってきた。

 アリスは使用人を従え、四人分の紅茶と各種お菓子を……っておいおい。どれだけお菓子を用意したんだよ。

 ケーキ各種に、アイスクリーム。プリンにシュークリーム。

 それにホットケーキにドーナツ。後は……チョコレートまであるぞ。こんなモノいつの間に開発したんだよ。

 いくら何でも自重がなさ過ぎ――え、ソフィアが友達を連れてきたから頑張った? そう言う理由ならしょうがないな。


「なんかお茶会と言うより試食会みたいになったけど、見ての通りお菓子は一杯あるから楽しんでくれ」

「「――はいっ!」」


 そんなこんなで、五人でお茶会改め試食会は始まったのだけど、

「それでね、泣いちゃったソフィアをリオンお兄ちゃんが抱きしめてくれたの!」

「「きゃああああ~っ」」

 いやあの、ガールズトークをするのは構わないけど、本人が居る前であれこれ脚色して話すのは止めてくれませんかね。凄く恥ずかしいんですが。


 俺はソフィアの会話が聞こえないフリをしながら、ティナとリアナに視線を向ける。

 最初に会った時は髪はばさばさで顔にはそばかすもあって、素材は良いのにもったいないってイメージだったんだけど、今や髪はサラサラで肌もつやつやだ。アリスが作ったシャンプーやリンス。それにシルク化粧水のお陰だろう。

 着ている服もこの世界では有り得ないレベルの上質なモノなので、どこかのお姫様と言っても通用するレベルになっている。


 それと、ここに来た頃はみんな日焼けをしていたのに、最近はどういう訳か色白になってきた。最初は、外出時にはローブを着てるからって思ったんだけど……

 この世界の農民の子供は、男女一緒に水浴びなんかも珍しくないそうで、下着が見えるとかがあんまり気にならないっぽい。

 なので、外での作業もあまりローブを着てないんだよな。それなのに、何故かみんな色白になっていくのだ。


「あの、私の顔になにかついていますか?」

 俺の視線に気付いたティナが首をかしげる。

「いや、なんか最近、みんなが色白になってるなぁと思って」

「あ、そうなんですよ。私も不思議に思ってたんです」

「それ、制服を着てるお陰だよ」

 おもむろにアリスがそんなことを言う。


「制服を着てるお陰って? むき出しの部分も日焼けしてないだろ?」

「うん。制服に紋様魔術を刻んだでしょ? その効果の一つとして、一定以上の紫外線をカットするようにしたの」

「ちょ、ちょっと待て。刻んだでしょって、自分で刻んだのか? 紋様魔術を使えるなんて初耳なんだけど」

「紫外線をカットしたくて覚えたの、後悔はしてないよ!」

「……自重は何処行った」

「紫外線はお肌の天敵なんだよ? 真っ先に対策するに決まってるじゃない。リオンだって、色白の女の子の方が好きなくせに」

「ちょっ」

 なんで知ってるんですかね、この前世の妹様は。


「良く判らないけど……ソフィア達はこの制服のお陰で日焼けしないの?」

 ソフィアがアリスに問いかける。

「そうだよ。それに、寒いところや暑いところでも、二、三度くらいなら温度調整が利くようにしてあるよ」

「あっ、それでこの服、こんなに快適なんだね」


 …………………そう言えば、そんな事も言ってたな。

 最近ずっと快適な気候だなとか思ってたんだけど……そうか、気候が良いとかじゃなくて、冷暖房完備の服だったのか。

 アリスは本気で自重しなさすぎだと思う。


「と言うかアリス、他にもとんでもない効果があったりしないよな?」

「ん~? 刻んだ紋様魔術の効果は三つだけだよ」

「あと一つあるじゃねぇか。もう一つはどんなアリスチートなんだ?」

「だからチートじゃないってば。ただ、レーザー級を常任させただけだよ」

「……え、なにそれ。まさか、レーザーで敵を焼き払ったりするのか!?」

 薙ぎ払え! とか、ちょっとやってみたい。


「うぅん。そうじゃなくて……ほら、この制服ってスカートの丈が短いのに、ここの人達はみんな警戒心がないでしょ」

「そうだな……って、まさか」

「うん。見えそうな時に、光りのラインが走ってそれを防ぐ紋様魔術だよ。大人の事情で発する光じゃないから、ブルーレイでも消えない仕様だねっ」

「レーザー級ってそっちかよっ!」

 深夜アニメなんかで、あれこれを隠す謎の光りのことである。

 確かに紗弥は体が弱くて家にいることが多かったせいか、アニメやラノベが好きだったけど……なんでそんなのまで知ってるんだろうなぁ。


「って言うかあれ? 俺はその……見ちゃったことがある気がするんだけど?」

「あぁうん。リオンの服には、レーザー級を打ち消すダークネスの紋様が刻んであるから。一人だけ存分に楽しんで良いよ?」

「いや、あの、そんなことを真顔で言われても困るんだけど……」

 そもそも俺はロリコンじゃないし。

 いやいや、マジで。前世に引きずられているのか、同い年くらいの女の子より、十代後半くらい女の子の方が気になる。

 まぁそう言う意味では、クレアねぇやソフィアが成長した時に、誘惑されたら抗えるか不安だったりはするんだけどな。


 とまぁそんなとりとめのない? 会話をしていた時の事だ。

 廊下の方からメイドの「困りますっ! すぐに主を呼んできますから、部屋でお待ち下さいっ!」等と言った声が聞こえてきた。

 それから程なく、どかんと扉が開かれ、十五、六歳くらいだろうか? 金髪碧眼の男が部屋に踏み込んできた。……って、誰だ?

 

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