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俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第八章 俺も異世界姉妹も自重しない!

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シスターズは永遠に

 とある記念日を迎えたミューレ学園が学園祭を開催する。

 その噂は瞬く間にリゼルヘイムや周辺諸国を駆け回った。あのシスターズのライブが三日連続、しかも新技術を使って派手に開催すると発表されたからだ。


 もともと、ミューレ学園の学園祭と言えば、様々な技術が発表されることもあり、国内の著名人が集まってくることで有名だ。

 それが今年は、ザッカニア帝国の皇帝までお忍びで――既に噂が広まっている時点でお忍びではないが、やってくるらしい。


 シスターズ、どれだけ人気なんだよ……と、俺は戦慄していた。


「ねぇねぇ、ウィルくん、ウィルくんってば」

 不意に呼びかけられて我に返る。顔を上げると、クラスメイトの女子が俺の顔を覗き込んでいた。いつの間にか、隣の席に座っていたらしい。


「どうかしたのか?」

「え? うぅん、どうもしないけど……どうもしないと話しかけちゃダメ?」

 翡翠の瞳を揺らす。不安そうな姿が愛らしい。

 少女の名はエインデベル。俺と同じ一年生なんだけど……今年入学した生徒の中で、一番可愛いと噂されているらしい。……まあ、実際に可愛いとは思うけどな。


「本当に用事がないのか?」

「むぅ……。そこは、用事がなくてもかまわないよって言うところだと思うの」

「別に用事がなくてもかまわないけど、用事があるから話しかけたんじゃないのか?」

「むーむーむー」

 わりとめんどくさい――とは口に出さないけど。コッソリとため息はついた。


「……いま、私のこと、めんどくさいって思わなかった?」

「いや、口には出してないぞ?」

「それ、思ってることを否定してないよね?」

「ベルはめんどくさいなぁ」

「口に出したよ!?」

 ショックだよ! って感じの顔をしてるけど、本気で傷ついてる訳じゃないだろう。こういうやりとりはクラスメイトになって半年、わりと日常茶飯事だからだ。


「……で、ホントに用事はないのか?」

「特に用事はないよ。ただ、なにを見てるのかなって思って」

「……ん? あぁ、これか?」

 手元にあった物を見せる。


「それは……なに?」

「これはアカネ商会が発行している、活版印刷による新聞だな」

 植物紙の登場により紙が安価になった昨今、様々な手書きの本が作られるようになった。そんな中、アカネ商会が作った、活版印刷という技術。

 爆発的に新聞といった情報伝達媒体が広がりはじめている。


「へぇ……それが新聞なんだ、初めてみた」

「おいおい、ミューレ学園の生徒なら、新聞くらい読んだ方が良いぞ?」

「無茶言わないでよ。さすがに学生が簡単に購読できる値段じゃないでしょ?」

「図書館に行けば無料で読めるだろ?」

「……あはは」

 露骨に目をそらす。直接聞いたことはないんだけど、エインデベルはやんごとなき身分の娘っぽい。他の生徒にある必死さがあんまりないのだ。


 とは言っても、最近は国も豊かになって、ミューレ学園で学べる知識も各地に広がりつつあるので、必死に学ぶ生徒も以前と比べると減ってきたらしいけどな。


「それで、記事にはなんて書いてあったの?」

「あぁ、ザッカニア帝国の皇帝が、シスターズのライブを見に来るって」

「うわぁ……」

 エインデベルがドン引きだと言わんばかりに顔を歪めた。


「やっぱりそういう反応になるよな。なんでシスターズって、こんなに人気なんだろ」

「え? シスターズが人気なのは当然でしょ?」

 素で返されてしまった。


「……たしかに人気だけど、全員既婚者だぞ?」

「それは、そういう噂があるだけでしょ? 私の聞いた噂だと、全員清らかな乙女って話よ」

「いや、まぁ……それは、な」

 たしかに噂はある。他にも、シスターズはトイレに行かないとか、それ、もはや人間じゃないだろって突っ込みたくなるような噂もたくさんある。

 ……なんで、そんなありえない噂が信じられてるんだろうなぁ。


「ねぇ……その、ウィルくんもやっぱり、シスターズの女の子が好きだったり、するの?」

「……はぁ?」

「い、いや、その、クラスの男子もみんな、シスターズの誰が可愛いとか、誰を恋人にしたいとか、そんな話ばっかりしてるじゃない」

「あぁ……あのリハーサル以来な」

 先日、シスターズが学園にやって来て、体育館でリハーサルをおこなった.それを見学した生徒達が、一気にシスターズのファンになってしまったのだ。


「それで、ウィルくんは、どの子が好みなの? リーゼロッテ様?」

「たしかに美人だとは思うけど……なんで、そのチョイスなんだ?」

 あの人、わりとめんどくさいぞ……と、声には出さずに呟く。


「べ、別に、私と似てるからとか、そんなことは考えてないわよ?」

「はい?」

「な、なんでもないよ。って言うか、リーゼロッテ様じゃなかったら、最近メンバーに入った、サクヤちゃんとか?」

「ないない。と言うか、シスターズの誰が好きとか、そういう発想はないな」

「……そうなの?」

「ああ。もちろん、綺麗な人達だとは思うけど……な」

「そっか……そうなんだ」

 エインデベルは、胸の前で両手をぎゅっと握りしめている。なにを考えてるのかはなんとなく想像がつくけど……まぁ良いか――と、俺は新聞に視線を戻した。


 シスターズを恋愛対象として見られるかというと、無理と言わざるを得ない。

 十代の乙女――なんて言われているけど、実際は十数年前から活動していて、メンバーの大半は二十代後半から三十代……なのは、別にどうでも良い。


 実際、十代から二十代前半にしか見えないし、クラスの男子が浮かれるのも分かる。

 けど、いくら見た目が綺麗でも、いくら歌がうまくて仕草が可愛くても、自分の母親や、自分を育ててくれた――父のハーレムメンバーや実の妹を恋愛対象とみられるはずがない。


 あぁ……どこかに母さん達や妹より可愛い女の子はいないものかと、俺はため息をついた。

 

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