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俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第六章 海の向こうの大陸で――
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エピソード 4ー4 ソフィアの許せないこと

 なろうの仕様変更で、近々ブラウザ側に保存されていた当該入力フォームのオートコンプリートの情報がリセットされる場合があるそうです。

 勝手にログインされるから、もうアカウントもパスも覚えてないよって方は今のうちにご確認を!

 地響きが鳴り止まぬ謁見の間。けれどそこにいる者達は静まりかえっていた。騎士の口から、リーゼロッテ姫の伝言を耳にしたのが原因だ。


『リオンお兄様をすぐに返しなさい。でなければ、今すぐこの城をぶちこわしますわよ? まずは城壁からです』


 普通に考えて、そのセリフは意味が分からない。せいぜいが怒り狂った小娘のはったり程度にしか聞こえないだろう。


 だけど、事実として地響きは鳴り止まず、城壁が崩壊している。


 この事態は間違いなくリーゼロッテ姫が引き起こしている。それをここにいる全員が否応もなく理解し――その常識外の事実に言葉を失ったのだ。


「ば、馬鹿な。小娘がたった一人で、城壁を破壊しているというのか……?」

 信じられないと言うよりは信じたくないのだろう。ケント将軍がかすれた声で問い返す。


「は、はい。信じがたいことですが」

「一体なにをどうすれば、個人で城壁を破壊するようなマネが出来るというのだ?」

「詳細は分かりませんが……なんらかの魔術を使ったようです」

「ま、魔術だと!? 単独の魔術で城壁の破壊など出来るものか!」

 ケント将軍は否定したけど、俺はなんとなくカラクリを理解した。


 リズの精霊魔術は、瞬間火力は最低クラスだけど、持続時間が長いのが特徴。そして、鳴り止まぬ地響き。おそらくリズはアリスと協力して、城壁を支える地盤を崩したのだ。

 いくら丈夫な城壁でも、基礎が崩れ去ればどうにもならないからな。


「――ご報告いたします!」

 あらたな兵士が謁見の間に飛び込んでくる。その兵士はその場で片膝をつくと、まくし立てるように報告を始めた。


「正体不明の娘が三名。強硬手段に訴え、この謁見の間に迫りつつあります!」

「なんだと!? 直ぐに止めさせろ!」

 ケント将軍が声を荒げる――が、

「近衛兵が対処しようとしていますが、既に半数が無力化されました。止められません!」

「そ、そんな馬鹿な話があるかっ! 一体何倍の戦力差があると思っている!」

 なにやら、ザッカニアの王城が制圧されつつあるようだ。


 ……って、アリスのやつ無茶しすぎだろ。城に滞在している兵士は多くても数百とか、そんな感じだろうけど……不測の事態で怪我とかしたらどうするんだ?


「――皇帝陛下! これは立派な敵対行為です! 今すぐに彼らを拘束し、リゼルヘイムに反撃を仕掛けましょう!」

 ……ふむ。ケント将軍は色々とうやむやにして、当初の目的を果たそうとしてるみたいだな。既に城が制圧されかけている状況をどうやってひっくり返すつもりか知らないけど。

 もしも皇帝陛下が同調したら、面倒なことになるな。


「ならん。先に王女暗殺を企てたのはこちらだ。城壁を破壊するというのは……まるで意味が分からんが、王女の怒りは正当なものと言えるだろう」

「では、このまま指をくわえて見ているおつもりか!」

「無論そんなことはない。――リオン伯爵!」

 皇帝陛下はケント将軍から視線を外し、俺へと向き直った。


「このたびの一件、誠に申し訳ない。後で正式な謝罪をするつもりだが、まずは我が国とリゼルヘイムの戦争を止めるために力を貸して頂きたい」

「分かりました。リズを止めれば良いんですね?」

「可能だろうか?」

「ええ。俺が行けば止まると思いますよ」

「そうか。ではすまぬが、今すぐに無事を伝えてくれ。行き違いはあったが、我々にリゼルヘイムと戦うつもりはないと」

「分かりました」

 立ち上がり、城門へと向かおうとする。そんな俺とソフィアの前に、ケント将軍とその部下達が立ちはだかった。


「……どういうつもりだ?」

「リオン伯爵、お前をここから出す訳にはいかん」

「……話を聞いてなかったのか? 俺はリズを止めにいくんだぞ?」

「だからこそではないか。これは立派な戦争行為だ。その一味を逃がす馬鹿がどこにいる」


 それ、皇帝陛下を馬鹿呼ばわりしてるよな? なんて思ったけど、さすがに口には出さない。だけど俺が口に出すまでもなく、皇帝陛下にも聞こえていたのだろう。


「ケント将軍、今すぐ彼を行かせるのだ」

「――お断りします」

 皇帝陛下の命令に対して、ケント将軍がきっぱりと断った。その予想外の態度に皇帝陛下は息をのみ、周囲の人間は一様に騒然となる。


「ケント将軍よ、我の命に背くというのか?」

「皇帝陛下はぬるすぎるのです。そのような考えでは帝国は守れない」


 ケント将軍が断言する。その言葉に応えるように、彼に付き従っていた部下の半数が、皇帝陛下を始めとした高官達を包囲するように動いた。

 それは、つまり――


「ケント将軍。先ほどあなたは、反乱は起こさないともうしませんでしたか?」

 皇帝陛下の後ろに控えていたオリヴィアが、怒りに満ちた声で問いかける。それに対して、ケント将軍はにやりと笑みを浮かべた。


「反乱などと人聞きの悪い。これは民意ですよ。弱体化する帝国を憂えた者達による、ね」

 そりゃ自分と同じ考えを持つ人達を集めて決議をすれば、全員が同意するだろう。とか思ったけど、俺は突っ込まない。なぜなら――


 ソフィアがふらりと立ち上がり、ケント将軍のもとへと歩み寄ったからだ。


「……小娘、なんのつもりだ?」

「それはこっちのセリフだよ?」

 ソフィアがちょこんと小首をかしげ、天使のような微笑みを――浮かべているかどうかは、背後にいる俺からは見えないけど、想像は出来る。


 あれは天使のような微笑みを浮かべ、悪魔のようなことを考えているときの仕草だ。あれはやばい、絶対にやばい。そう思った俺が止める暇もなく、


「よく分からんが……ちょうど良い。外の連中の目的がお前達だというのなら、お前を人質にして止めれば良いのだからな」


 ケント将軍がソフィアに向かって右腕を伸ばす。――刹那、ソフィアがゴシックドレスの裾をひるがえし、太ももに隠し持っていた短剣を引き抜きざまに振るった。


 ――ちょ、ザッカニア帝国の将軍を血祭りにするのはやばいぞ!?


 なんて思ったんだけど、俺の予想に反して血の雨は降らなかった。代わりにケント将軍が身につけていた服の袖がはらりと切り裂かれていた。


「き、貴様!?」

 ケント将軍は慌てて腕を引き、ソフィアを睨みつけようと顔を見て――表情をこわばらせた。考えるまでもなく、ソフィアの場違いな微笑みを見てしまったからだろう。


「ソフィアはね、どうしても許せないことが三つあるの。それは……リオンお兄ちゃんを馬鹿にされることと、リオンお兄ちゃんを傷つけられることと。そして――リオンお兄ちゃんに手を出してもらえないことだよ!」


 俺のことばっかりである。


 と言うか……最後の一つ関係ないよな? ソフィア的に同じくらい許せないことなのか? もしかして俺もそのうち、ケント将軍みたいにお仕置きされるのか……?


「お、お前はなにを言っているのだ?」

「うん、まぁ……いまのはどうしても許せないことだから、今回は関係ないよ」


 関係ないのかよ!? とは、誰も突っ込まなかった。

 あまりにも普通の――普通じゃない状況下においての、ソフィアの普通な行動に、誰もが言いしれぬ恐怖を抱いているのだ。

 だけど、周囲の反応にかまわず、ソフィアは穏やかな口調で続ける。


「ソフィアにはね、他にも許せないことがあるの。それは……みんなに、ソフィアの家族に危害を加えられること。だから……お仕置きだよ?」


 ソフィアはゆったりと、本当に穏やかな仕草で一歩前へ詰め寄り、短剣を振るった。今度はケント将軍の左袖が切り裂かれる。


「いまのは警告。そんな風に油断してると……ソフィアに殺されちゃうよ?」

「き、貴様っ! 上等だ――っ!?」


 激高したケント将軍が剣を引き抜こうとした瞬間、ソフィアは再び短剣を振るい――彼の持つ長剣を根元から断ち切った。


「ば、ばかなっ!? 我が家宝の剣を切り裂いただと!? 貴様の短剣は一体なんだ!?」


 目を見開き、ソフィアの短剣を見る。たしかにソフィアの短剣は特別製だけど……たぶんそういう問題じゃないと思う。まぁ……気持ちは分かるけど。


「ほら、また油断してる。隙だらけだよ?」

「――くっ!」


 ケント将軍は飛び下がりつつ、腰へと手を伸ばす。おそらくは予備の武器として隠し持っていた短剣を引き抜こうというのだろう。


 ――だけど、ケント将軍は再び驚愕に目を見開いた。無理もない。なぜなら、抜こうとした短剣がなくなっているんだからな。


 ちなみに……なぜ俺がそれを知っているのか、その理由は至って単純だ。彼が探し求めているであろう短剣が、絨毯の上に落ちているからだ。

 ソフィアが隙だらけだと指摘したとき、意識外からの攻撃で留め具を切り飛ばした結果だ。


「……おじさん、さっきから油断しすぎじゃないかな」

「な、なにを馬鹿な。俺は油断などしていないっ!」

「ふぅん、そうなの? それじゃあ……単純に弱いだけなんだね」

「ふ、ふざけるな! よりにもよって俺が弱いだと!? 良いだろう、もう人質などと言うまどろっこしいことは言わん。ここでぶち殺してやる! お前達、この娘を――」


 部下に指示を出す。だけど、それは俺がさせない――と、ケント将軍の声に真っ先に反応した三人ほどを見繕い、精霊魔術で吹き飛ばした。


「馬鹿な、詠唱もなしに瞬殺――っ!?」


 ケント将軍は、驚きに目を見開いた。その瞬間、かろうじて気がついたのだろう。その一瞬の隙をついて、ソフィアが自らの懐に入り込んでいることに。


 だけど、すべては手遅れだ。

 ソフィアは短剣を逆手に持ち、柄をケント将軍のみぞおちに叩き込んだ。


「こ、の……小娘、が……」

「だから言ったんだよ。おじさんは油断しすぎだって。……という訳で、将軍はソフィアに負けちゃったけど……まだ戦うつもりの人はいる?」


 倒れかかってくるケント将軍を払いのけ、天使のような微笑みを浮かべる。そのソフィアに逆らう気概のある敵は、ただの一人も残っていなかった。

 彼らは一人、また一人と武器を捨てていく。


 あとなんか、「幼女様だ」とか「女神様だ」とか呟いて跪いている連中も混じってる。

 なにやら、ソフィア教が広がりつつあるような気がする。


「うんうん。みんな素直だね。それじゃ皇帝陛下、彼らを拘束していただけますか?」

「……………………」


 ソフィアが問いかけるが皇帝陛下は無反応。どうやら先ほどのソフィアを目の当たりに、茫然自失となっているようだ。


「皇帝陛下? 拘束してくれないなら、ソフィアが全員始末しちゃうよ?」

「……はっ!? す、すまぬ。ただちに捕らえさせて頂きまする」


 ソフィアの命令っぽいお願いに、皇帝陛下がちょっとおかしな口調で答え、近衛騎士達を動かす。そうして、ケント将軍の反乱は、わずか数分で鎮圧された。

 

 

 次回はエピローグで、7章へと続きます。

 7章は再びミューレの街が舞台で、イヌミミ族の受け入れなんかがテーマとなっています!


 話は変わりますが、ヤンデレ女神の箱庭、先日1章が閉幕しました。

 なにやら予想外の数の評価や感想を頂いていて、凄く凄く感謝ですよ。

 ちなみに、頂いた感想はノクタ待ったなしとか、ヤンデレ可愛いとか、そこ変われとか、そんな感じです。異世界姉妹経由で既に読んでくださってる方もかなりいるようで、ありがとうございますっ!


 現在は二章を執筆中ですが、14万字オーバーの一章をきりの良いところまで読むことが出来ます。

 リンクは作者名か、↓のタイトルもしくは『http://ncode.syosetu.com/n1110eb/』からご覧頂けます。

 まだの人は、ぜひぜひご覧くださいっ。

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