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俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第六章 海の向こうの大陸で――

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エピソード 3ー8 足湯メイドカフェ『アリス』で

「弟くん、お帰りなさい!」

 ミューレのお屋敷。エントランスに顔を出すなり、クレアねぇが出迎えてくれた。

「ただいま、クレアねぇ。アリスから聞いてると思うけど――」

「ええ、イヌミミ族よね、どこにいるの!?」

 クレアねぇはきょろきょろと周囲を見回す。そして俺に続いて屋敷に入ってきたシロちゃんを見て――文字通り飛びかかった。


「やああああああん、ほんとに可愛いわ!」

「ふえええええええぇっ!?」

 突然抱きつかれて驚くシロちゃん。

「凄い凄いっ。聞いてた以上にモフモフね! ちょっとモフっても良いかしら? と言うかモフるわよ!」

「ひゃあっ!? お姉さん、そんなに激しくっ、しちゃ、ダメええええええっ!」

 モフり倒されるシロちゃん。なんか……クレアねぇのキャラが崩壊してるぞ。


「……あの女性は誰ですか?」

 オリヴィアが二人の様子をなんともいえない表情で見ながら尋ねてくる。

「あれは、グランシェス家の当主代理にして俺の姉。クレアリディルだよ」

「あぁ……リオン様の。どおりで……」

 ……え、そのどおりでと言う呟きは、なにに対する納得なんだ? まさか、俺がシロちゃんをモフってるのも、他人からはあんな風に見えて……いやいや、そんなまさか。


「クレアねぇ、ほかにお客さんもいるから、モフるのは後にしてくれないか?」

 息も絶え絶えになっているシロちゃんから、我を失いつつあるクレアねぇを引っぺがし、オリヴィア姫も同行してるって早馬で知らせただろと小声で伝える。

「――はっ!? そうだったわね。……コホン。ようこそいらっしゃいました。あたしはグランシェス家当主代理のクレアリディルです」

 ……ものすごい変わり身の早さである。

「突然の訪問を受け入れてくださってありがとうございます。ザッカニア帝国第三王女、オリヴィアと申します」

 そして、そんなクレアねぇの挨拶に冷静に答えるオリヴィアも凄い。なんて感心しながら、俺は二人の挨拶を見守った。


「それで、そちらの方がイヌミミ族の代表であるアオイさんですね。ようこそグランシェス領へ。あたし達は、イヌミミ族を歓迎いたします」

「ああ、えっと……感謝する。いや、します。クレアリディル様?」

「ふふっ、場所によって習慣が違うものね。あたしのことはクレアで良いわ。それにしゃべり方も普段どおりで良いわよ。今後は少しずつなれてもらう必要があるけど、ね」

「……そう言ってくれると助かるよ、クレア。その代わりと言ったらなんだけど、あたいのこともアオイと呼んでくれてかまわない」

 アオイはあからさまにほっとした表情。普段は敬語とか使わなさそうだもんな。その辺でトラブルが起きないよう、前もって手を回しておこう。


「分かったわ、アオイ。それで今回はイヌミミ族の移民にあたって、ミューレの街を視察に来たという話だけど……なにか見たいところとかはあるかしら?」

「なら、聞きたいことがある。主はイヌミミ族に偏見を持っていないと言っていたが、クレア達もそれは同じなのか?」

「あぁ……そうねぇ。イヌミミ族の様々な噂を知っているのは事実よ。だけどあたしは、噂なんかより弟くんを信じる。だから、貴方達に思うところはないわ」

「だが、全員がそうとは限らない?」

「そう、ね……」

 クレアねぇは周囲をちらりと見回す。おそらくだけど、門番の兵士や周囲に控えている使用人なんかに視線を向けたんだろう。


「たしかに、いま現時点ではイヌミミ族に対して良くないイメージを持っている者はいるわ。そしてそれは、捨てなさいと言っても捨てられるものじゃない」

「つまり、この地でも我らは迫害されると?」

「されないと断言は出来ないわ。けど、言われなき差別を、あたしは決して許さない。……弟くんからも、同じようなことを聞いたんじゃない?」

「そうだな。主も同じようなことを言っていた」

「なら安心して。あたし達は基本的に、弟くんの意志に従っているから」

 そうかなぁ……。姉弟で恋愛とかあり得ないとか言ったのに、割と強引に口説き落とされたりとか……結構あれこれあった気がするんだけど。

 ……話がややこしくなるから黙ってよう。


「――あ、そうだ弟くん」

「うん?」

 二人の会話を見守っていると、不意にクレアねぇに呼ばれた。

「あたしがアオイとシロちゃんの話を聞いているから、弟くんはオリヴィア様の案内をお願いできるかしら?」

「あぁ……そうだな」

 オリヴィアがついてきたのは、イヌミミ族の心配もあるんだろうけど、ミューレの街の観光が主な目的だろう。馬車の中でもはしゃいでたしな。


「それじゃ、俺がオリヴィアさんとアーニャを案内するけど……ソフィアはどうする?」

 出来ればクレアねぇ達の護衛を引き受けてくれると嬉しいけど――と言う意味を込めてソフィアをみる。別にアオイ達を疑ってる訳じゃないんだけど、一応、な。

「ん。それじゃソフィアは、クレアお姉ちゃんに同行するね」

「分かった。それじゃよろしくな。――という訳でオリヴィアさん。よかったら街を案内しますが……どうします? 長旅で疲れてるなら、まずは休憩でもかまいませんが」

「いえ、ぜひ案内してください!」



 ――という訳でやってきたのは、足湯メイドカフェ『アリス』。

「お帰りなさいませ、私の愛するご主人様っ!」

 なにやらお迎えのセリフがいつもより情熱的だ。と言うか……

「…………なにをやってるんだ?」

 俺達を迎えたメイド姿のウェイトレスはアリスだった。

「えへへ、イヌミミ族の件を報告したあと、久々に店員の指導をしてたの。そうしたらリオンの気配がしたから、せっかくだから私がお出迎えしようかなって思って」

「へぇ、店員の指導なんてやってたんだ」

「最近はみんなにまかせ気味だったんだけどね。今回はリオンもいなくて時間があったから」

「なるほど……」

 人の多い街の中なのに、気配で俺が分かるってなんだよ――なんて、今更だから突っ込まない。犬とかは人が歩くときに発生する電磁波のパターンで、数百メートル先のご主人様を判別するとか言うしな。

 アリスも気配察知の恩恵で、似たようなまねが出来るんだろう、たぶん。


「それで、いまはオリヴィア様を案内中なの?」

「おっと、そうだった。三名だけど、席は空いてるか?」

「もちろん。――三名様、VIPルームにご案内いたしまーすっ」

 アリスがメイドドレスの裾をひるがえし、店の奥へと歩いて行く。俺達はその後ろをついて行くことにした。

 ……今更だけど、屋敷のメイド服と違って、こっちは結構スカートが短いんだな。例によって例のごとく、スカートとニーハイソックスのあいだに見える絶対領域がまぶしい。

 なんて思いつつ歩いていると、いつの間にかVIPルームの扉の前にたどり着いていた。以前、どこぞの王子と姫が入り浸っていた部屋である。


「オリヴィアさんとアーニャはそっちにどうぞ」

 靴を脱いで部屋の中に。オリヴィアに上座の席を勧める。

「ありがとうございます。ところで……どうして席の足下に水が張ってあるんでしょう?」

「それは水じゃなくて温泉だよ。ここは足湯カフェなんだ」

「……足湯、ですか?」

「そうそう。下だけ脱いで、足をつけるんだよ」

「し、下を脱ぐんですか!?」

「下って言っても靴下だけ……」

 俺はあらためてオリビアの姿を確認。いわゆるドレスっぽい服だけど……もしかして、ストッキングのようなモノをはいてるのか?


「悪い。そこまで考えてなかった。別の店に移動しようか?」

「い、いえ、下だけ脱ぐのは可能なので、少しだけ後ろを向いていて頂けますか?」

「ん……まあ、オリヴィアさんがそう言うのなら」

 俺はオリヴィアに背中を向けて待機。なんとなく衣擦れの音が艶めかしい――なんて思っていたら、同じく待機しているメイドアリスと目が合ってクスクスと笑われた。

 ……一応言っておくけど、これを狙った訳じゃないからな? なんてアリスに視線で答えておくけど……まあ伝わらないだろう。

 意思が伝わらないのではなく、伝わった上で信じてもらえない的な意味で。


「お待たせしましたリオン様」

「いやいや、こっちこそごめんな」

 声を聞いてくるりと振り返る。そこにはロングスカートの裾を掴んで、太ももまでたくし上げるオリヴィアの姿があった。生足が凄く艶めかしい。

 俺より一つ年下って話だけど、将来有望だな……なんて思っていたら、今度は背後から衣擦れの音が聞こえてくる。なにがと思って振り返ると、ミニスカ生足メイドにクラスチェンジしたアリスがそこにいた。


「……おまえ、なにしてるの?」

「え、リオンと一緒に足湯に浸かろうかなって」

「いやいや、いまは仕事中なんだろ?」

「ご主人様と一緒に足湯につかるサービスでございます」

「…………そんなサービスは初耳なんだが?」

「リオン専用だから、ね」

「ふむ……」

 それなら別に良いか――と思った俺はだいぶ毒されてる気がするけど、今更なので気にしないでおこう。

 ただ……アリスが席に着いたことで、別の店員が俺達の対応をすることになり――担当になった女の子がプレッシャーで青くなってたけど……それは必要な犠牲だろう、たぶん。



「……なんという、なんという美味しさでしょう! このパフェというデザートですか? 信じられないほどの美味しさです。ね、アーニャもそう思うわよね?」

「ええ。このような食べ物は、食べたことがありません!」

「建物にも驚かされましたが、足湯に至高のデザート。その一つ一つが信じられないものばかりです。さすがは神々の住む街ですね」

「……気に入ってもらえたのなら安心しました」

 とは言ったモノの、あまり心配はしていなかった。

 ザッカニア帝国はいまだに砂糖が高級品だ。そんな国で育った少女に、生クリームにチョコレート。あげくはアイスクリームまで使用したパフェを提供した訳だからな。

 甘いものが嫌いだったとかだと……さすがにあれかもしれないけどさ。


「こんなにおいしいのなら、毎日の食事として食べたいですね」

「それはさすがに栄養のバランスが良くないですよ」

「栄養、ですか?」

「同じモノばっかり食べない方が良いって話です。とくに甘いものは太りやすいですから」

 毎日の食事がパフェとか、絶対に体型がやばいことになる。

 けど、食べ過ぎたら太るという概念はあっても、甘いものを食べると太りやすいという概念は、この世界にはまだない。

 ……ミューレの街に肥満な住民が増える前に、それとなく噂を流した方が良いかもな。


「……本当に、リオン様は色々なことを知っているんですね。もっとこの街のことを教えて頂いてもよろしいですか?」

「良いですけど……本当にと言うと?」

「ミュウから色々と噂を聞いていたので、どんな方だろうと気になっていたんです」

「あぁ、噂ですか。思ったより普通だったでしょう?」

 噂みたいに、姉妹ハーレム万歳とか言ってないし、俺は至って普通の人間だからな。

「いえ、聞いていたよりずっと非常識な方でした」

 ……しょぼん。


「……ええっと、どうして褒めているのに落ち込むんでしょう?」

「自分を過小評価した末に、変な誤解してるだけなので放っておいてあげてください」

 オリヴィアとアリスがなにか言ってる。よく分からないけど……強く生きよう。いまの噂があれだとしても、これから改善していけばいい話だからな。


「と、取りあえず、この街のことを話せば良いですか?」

「ええ。そうですね……まずは――」

 パフェを食べながら、俺はあれこれとこの街のことについて語り聞かせた。

 

 

 次話の投稿に前後して、新作の投稿を予定しています。

 ヤンデレ女神の作ったステータスありの異世界が舞台です。

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