表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第五章 想いを伝えるために

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

147/242

エピソード 3ー2 植林予定地の村

 植林予定地にある村の名前をアカネから聞いた俺は、ある根回しをおこなった。

 そうして、そろそろ午後の授業が終わるであろうミューレ学園へ。まずは職員室でリアナの所在を聞き、その教室へと向かう。

 ちょうど授業が終わったところなのか、教壇に立つリアナに向かって、生徒達が挨拶をしているところだった。それを見届け、俺は教室の中に。

 部外者らしき俺の姿を見た生徒達がざわめき始める。

 だけど――

「あれ、リオン様じゃないですか。どうなされたんですか?」

 リアナの問いかけを聞いた生徒達は驚きの声を上げ――続いて波が引いていくように静まっていく。そうして静寂が訪れた教室の中、俺はおもむろに口を開いた。


「リアナ、俺に付き合ってくれないか?」

「つ、付き合う?」

「明日から十日ほど出掛けるから、俺の世話をして欲しいんだ」

「夜のですか!?」

「いや、一日中だけど?」

「朝から晩まで!?」

「そうなるな。と言っても、アリスやソフィアもいるし、やることはそんなにないと思うぞ」

「まさかの四人ですか!?」

「いや、護衛のエルザもいるから五人旅だけど?」

「………………ええっと? その、リオン様? 一体、なんの話ですか? と言うか、ホントになんの話なんですか?」

 それはこっちのセリフである。俺は仕方なく、最初から説明をやり直した。


「……街道を騒がす盗賊を討伐しに出掛ける、ですか?」

「ああ。途中により道もするけどな。そんな訳で十日ほど出かけるから、ミリィの代わりに世話係としてついてきて欲しいって話なんだけど……?」

「ですよねぇ……ええ、分かってました。分かってましたよ」

 やさぐれるリアナが可愛い。まあ生徒の前であんな恥ずかしい誤解をしたからな。いじけたくなるのも無理はないだろう。

 ……え? リアナが誤解してるのに気付いてたのかって? その答えはイエスだ。

 いや、途中で気付いたんだけどさ。俺が誤解に気付いてるってリアナが知ったら、よけいに落ち込むかなと思って気付いてないフリをしたのだ。

 そもそも俺は、ちゃんと出かけるって言ったし、普通に考えて生徒の前で教師にそんなことを頼むはずがない。なのに、なんでそんな誤解をしたのか、まったくもって謎である。



 ――そうして翌日。予定していたメンバーでの旅だったのだが……馬車に揺られながら、一人だけふてくされている少女がいる。

 青みがかった髪に紫の瞳。最近は生徒にモテモテと噂のリアナである。


「もぅ、昨日の今日で旅に付き合えなんて、いくらなんでも急すぎですよ、リオン様」

「悪い悪い。けど、ほら、最近はリアナと絡む機会がなかったからさ。たまには一緒に出かけても良いかなって。……迷惑だったか?」

「そんなことは……ないですけど」

 なにやら恥ずかしそうにそっぽを向いてしまった。学園を卒業してからあまり会う機会もなかったんだけど……まだ想いを寄せてくれてるっぽい。

 俺はハーレムを増やすつもりはないんだけど……ここまで慕ってくれてる相手の好意に気付かないフリを続けるのは……少し申し訳ない気がする。


「ところでリオン様、寄り道とか言ってましたが、何処に向かってるんですか?」

「実はある村で植林をして貰う予定でな。その視察を兼ねてるんだ」

「……植林、ですか? 邪魔な木を切るのではなく、わざわざ植えるんですか?」

「邪魔な木を切るのとは別に、邪魔にならないところに植えるんだよ」

 伐採の目的は土地の開墾と木材の入手。だけど俺達が様々な技術を導入したことで、材木の需要が大幅に上がっている。土地の開墾よりも、材木の需要が上回りつつあるのだ。


「ええっと……木を植えることになにか意味があるんですか?」

「今はないな。でも、この国の技術が今より発達すると、木がもっと必要になる。そうなってから慌てたくないだろ?」

「……木が足りなく、ですか」

「今は想像もつかないだろうな」

 森林破壊なんて、俺達が生きているうちに直面する問題ではないかもしれない。

 けど……俺の子供や孫の代には、確実に降りかかる問題だ。だから、今のうちにそういう流れを作っておきたいのだ。せっかく、地球の歴史を知っているんだからな。


「リオン様が言うのなら事実なんでしょうけど……木を植えることで、村人の生活が潤うんですか?」

「いいや。だから仕事に応じて、グランシェス家が報酬を支払うことになってるんだ」

「報酬、ですか? 失礼ですが……その。木を植えた報酬にお金を払うと言っても、村人は信じないのではないですか?」

「あぁ、それについては問題ない。実は、リアナを呼んだのはそれとも関係しているんだ」

「……どういう意味でしょう?」

「今は秘密だ。でも、村に着いたら分かるよ」

 俺はいたずらっぽく言い放った。



 その後の俺は、窓辺に寄りかかって馬車に揺られていた。そうして流れゆく景色をぼーっと眺めていると、ソフィアとリアナの楽しそうなお喋りが聞こえてくる。

「そう言えば、リアナお姉ちゃんとはときどき遊びに出掛けてるけど、一緒に街の外に出かけるのって初めてだよね?」

「そうだね。そもそも私は、ミューレに来てから街の外に出るのが初めてだよ」

「そっか、それでかぁ。リオンお兄ちゃんがリアナお姉ちゃんを連れてきたのは」

「え? 街の外に出たことがないからって意味?」

「うぅん、そうじゃなくて……」

「そうじゃなくて?」

「ふふっ、秘密だよぉ~」

「え~ソフィアちゃんまで、イジワルだな~」

 楽しそうな笑い声。平和だなぁなんて思っていると、アリスの「目的地に到着したよ~」と言う声が響いた。


「思ったより早かったですね……え、この村って、もしかして?」

 馬車から降り立ったリアナが、目の前に広がる景色を見て驚きに目を見開いた。それもそのはず。到着したのはレジック村――リアナの故郷だったからだ。

「えへへ、びっくりしたでしょ? リオンお兄ちゃんからのサプライズ、なんだよ?」

「そう、なんですか?」

「植林をするのがこの村だったのは偶然なんだけどな。せっかくだから、リアナに里帰りをさせてあげようかなって」

「ありがとうございます。とっても嬉しいです」

「――惚れ直した?」

「えぇ、惚れ直しました――って、ソフィアちゃんなにを言わせるの!?」

「自分で言ったんじゃない」

「そうだけど、そうだけど、そうだけど~~~っ」

 真っ赤になってソフィアに掴み掛かる。俺はそんな二人のやりとりを横目に、街の入り口で待っている人影に視線を向けた。


「お待ちしていました、リオン様」

「久しぶりだな。もしかして、そこでずっと待っててくれたのか?」

「少し前に早馬が知らせてくれましたので」

「……そうか」

 そう言いつつ、心の中では感謝しておく。いくら早馬で知ったとしても、そんな細かい時間までは分からない。それなりの時間を待っていたはずだからな。


「リアナは相変わらずおてんばのようだな」

「失礼ね――って、お父さん? うわぁ、久しぶりだね、元気してた!?」

 カイルさんに気付いたリアナが、駆けよって抱きつく。そうして抱き合っている姿を見ると、連れてきて良かったと思う。

 この世界じゃ電話なんてないし、平民じゃ手紙のやりとりもままならない。積もる話もあるだろうし、ゆっくり話させてあげたいけど――

「再会を懐かしんでるところ悪いけど、先にこっちの用件をさせてくれ」

「あっ、ごめんなさい、リオン様」

「いや、こっちこそ悪いな。後でゆっくり出来る時間を取るから、少しだけ我慢してくれ」

 俺はリアナに断りを一つ、カイルさんへと視線を向ける。


「今日この村を訪ねたのは植林についての指導と、少し聞きたいことがあったからなんだ」

「聞きたいこと? はて、なんですかな?」

「実はこの街道を行き来する馬車が数台、この付近で消息を絶っている。カイルさんはなにかしらないか?」

「馬車が行方不明……ですか? 残念ながら。ご存じのことと思いますが、うちは宿場町として廃れつつありますから」

「分かってるよ。ただ、なにか噂とかを聞いていないかと思ってさ」

 馬車の改造と街道の整備で移動速度が上がり、四泊五日から一泊二日にまで短縮されることで、宿場町の需要が一気に減った。ここはそのあおりを受けた村の一つだ。


「噂、ですか? そういえば……このあいだ旅人がなにか言っていましたな。たしか……そうそう。立ち寄った村が、やたらと感じが悪かった――とかなんとか」

「……感じが悪いと言うと?」

「接客態度がなっていないと言うことでしょうな」

「それは珍しいのか?」

「宿場町――正しくは村ですが……それは一つじゃありませんから。評判が悪くなれば、立ち寄る旅人も減ります。宿場町としてやっていくなら、礼儀は必要です」

 客をもてなすつもりのない旅館みたいなイメージか。そう言われると、少し不自然な気がするな。

「その村の名前は?」

「それは……すみません、そこまでは聞いていません。ただ、うちに立ち寄ったのは馬の不調が原因だったそうなので、本来使われる宿場町のどこかだと思います」

「そう、か……ありがとう、他の村でも聞いてみるよ」

 もともとこの村に立ち寄ったのは、植林の指導がメインだからな。噂話を聞けただけでも御の字だろうと、その話は打ち切ることにした。


「それじゃ、植林予定地を見てみたいから、誰かに案内させてくれないか?」

「それでしたら、私が案内しましょう」

 カイルさんが自ら名乗り出てくれるけど、俺はそれをやんわりと断ることにする。

「せっかく娘と再会したんだ。ゆっくり話すと良い。こっちは、植林を担当する人をつけてくれれば良いよ」

「いえ、私はこの村の村長ですから」

 カイルさんは引き下がらない。

 そういえば……リアナがうちの領地に来たのも、生け贄を求められていると勘違いしたカイルさんが、他の村娘ではなく、自分の娘を犠牲にしようとしたから、だったな。

 責任感が強いのは相変わらずのようだ。

 仕方ない。これ以上は親切の押し売りになりそうだし、みんなで植林予定地に行くか。

 

 

 少しお知らせ? があります。

 昨日気づいてしまったのですが、一章でリオンが、自分とソフィアは次男と次女だと言ってます。

 次男と、次女……

 ソフィアにお姉ちゃんがいた!?


 キャラ設定の方には長女って書いてあったんですけどね……w

 せっかくなので……ソフィアは次女です!w

 いままで出てきてないので、既に嫁いでいるか、引きこもっているか、お亡くなりになっているのどれかだと思います。そのうち登場するかも?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】(タイトルクリックで作品ページに飛びます)
三度目の人質皇女はうつむかない。敵国王子と紡ぐ、愛と反逆のレコンキスタ

klp6jzq5g74k5ceb3da3aycplvoe_14ct_15o_dw

2018年 7月、8月の緋色の雨の新刊三冊です。
画像をクリックで、緋色の雨のツイッター、該当のツイートに飛びます。
新着情報を呟いたりもします。よろしければ、リツイートやフォローをしていただけると嬉しいです。

異世界姉妹のスピンオフ(書籍化)
無知で無力な村娘は、転生領主のもとで成り上がる

書籍『俺の異世界姉妹が自重しない!』の公式ページ
1~3巻好評発売中!
画像をクリックorタップで飛びます。
l7knhvs32ege41jw3gv0l9nudqel_9gi_lo_9g_3

以下、投稿作品など。タイトルをクリックorタップで飛びます。

無自覚で最強の吸血姫が、人里に紛れ込んだ結果――

ヤンデレ女神の箱庭 ~この異世界で“も”、ヤンデレに死ぬほど愛される~
精霊のパラドックス 完結

青い鳥症候群 完結

ファンアート 活動報告

小説家になろう 勝手にランキング
こちらも、気が向いたらで良いのでクリックorタップをお願いします。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ