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俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第五章 想いを伝えるために

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エピソード 1ー1 情報の信憑性

 エリーゼさん毒殺未遂事件から一ヶ月が過ぎた。

 最初は中毒症状が酷く、しゃべることも困難だったエリーゼさんだけど、今では少しずつ快復に向かっているらしい。

 この一ヶ月、エリーゼさんに付きっ切りだった、ソフィアが嬉しそうに語っていた。

 精霊魔術で胃の洗浄をおこなうという離れ業に、世界樹の葉で作った生命力を強めるクスリ。そして砒素を排出する効果を持つニンニク。

 知識を出し合い、それを実行に移した。俺達の誰か一人でも欠ければ、エリーゼさんは救えなかっただろう。

 けど、あえて一番の功労者を上げるのなら、それはきっとソフィアだ。そう思えるほどに、ソフィアは母親に尽くしている。

 つきあい始めたばかりの彼氏としての立場で言わせてもらうと、彼女が実家に入り浸りなのは少し寂しいけどな。事情が事情なので仕方がない。

 一刻も早いエリーゼさんの快復を願うばかりだ。


 ちなみに――と、続けて言うと凄くアレなんだけど、クレアねぇとの関係は相変わらずだ。

 告白されて、返事は待って欲しいと伝えてからおよそ五年。しかもそのあいだにアリスやソフィアと付き合い始めた。

 いくら事情が事情とは言え、そろそろ答えを出すべきだろう。

 それはもちろん分かってる。分かってはいるんだけど……前世で妹だったアリスや、義理の妹であるソフィアと違い、クレアねぇは実際に血の繋がった姉。

 こう、なんというか……踏ん切りがつかないのだ。

 おかしいと感じる――ではなく、踏ん切りがつかない。その時点で答えは出てるのかもしれないけど、な。


 なんにしても、そんな状況ではアリスといちゃつく気にもなれない。というか、ここ最近はあちこち飛び回っていたから、俺が担当すべき仕事がたまっている。

 なので俺は、黙々と仕事を片付けていた。

 そんなある日。

 仕事の息抜きにサロンを訪れると、二人の少女が楽しくお喋りをしていた。

 一人は桜色の髪に蒼い瞳。少しだけとんがった耳が特徴のエルフ。俺の前世の妹にして、この世界での恋人。精霊魔術のエキスパートであるアリスティアだ。

 そしてもう一人は青みがかった銀髪に紫の瞳。透明感のある歌声と、なにもないところで転ぶのが特徴的なこの国のお姫様。俺の義妹となったリーゼロッテ姫である。


「あれ、リオンじゃない。どうかしたの?」

「ちょっとした息抜きだよ。それにしても珍しい組み合わせだな」

「あと三ヶ月ちょっとで今年も終わりでしょ? 新年を祝う王都のお祭りで、またライブをしたいねってリズちゃんと話してたんだよ」

「ライブって……卒業記念にやったあれか?」

「うん。盛況だったからね」

 たしかに卒業ライブは盛況だった。この世界の演奏とはまるで違う。リーゼロッテ姫がヘソ出しにミニスカートという過激な衣装で歌って踊ったんだから当然といえば当然だ。

 アレを王都でやれば、民衆は文字通り熱狂するだろう。……服装だけは改善しないと、今度こそアルベルト殿下に殺されそうだけどな。


「それでね。年末年始にリズちゃんを連れていきたいんだけど……リズちゃんに頼らない輸送システムの開発はどうなってるの?」

「――アリス」

 その話はまだリズには秘密だと遮るけど、間に合わなかった。アリスは決定的な一言を口にしてしまった後だ。それに気付いたアリスが少し慌てるように口元を抑える。


「……アリスさん、今のは、その……どういう意味なんですか?」

「え、いや、それはその……ねぇ、リオン?」

 助けを求めるような視線。蒼い瞳に見つめられ、俺は仕方ないなと肩をすくめる。

「実はリズには秘密にしてたんだけど、交易の中継地点となる宿場町に魔術師を配置したり、保温箱や氷室の性能アップを図ったりと、色々計画を進めてたんだ」

 今更隠しても手遅れだろう――という訳で、俺はこの機会にと正直に話すことにした。そして、それを聞き終えたリズは少し寂しそうに瞳を曇らせた。

 リズは自分にしか出来ない仕事にやりがいを感じていたからな。自分はもう必要とないと言われたように思って落ち込んだのだろう。

 だから――

「リズ、そんな心配はいらないぞ」

 俺はリズの頭をぽんぽんと叩き、青みがかった銀髪を優しく指で()いてあげた。


「リオン、お兄様?」

「リズの負担が減るだけで、いきなり必要なくなるわけじゃない。それに他にもリズの精霊魔術が有効なモノはいくらでもあるから」

「……そう、ですの?」

「ああ。それに、リズの透明な歌声だって、他の人にはマネ出来ないものだ」

「……そうでしょうか?」

「ライブの歌はみんなに絶賛されてただろ?」

「では、リオンお兄様はわたくしの歌――いえ、歌っているわたくしが好きですか?」

「そりゃもちろん」

「だったら良いですわ!」

 とたんに笑顔になるリズ。ちょろい――と言って良いのだろうか?

 さり気なく、‘わたくしの歌’ではなく、‘歌うわたくし’とか言い直してたからな。何気にしたたかな気がしないでもない。


「ねぇリオン。思ったんだけど、中継地点とかの設置とかするくらいなら、輸送速度を上げちゃえば良いんじゃない?」

「と言うと?」

「蒸気機関車を開発するとか」

「いくらなんでもオーバーテクノロジー過ぎるわっ!」

「それ、ミューレの街を見ながらでも同じことが言えるの?」

「うぐっ。た、たしかにミューレの街は異常だけどさ。蒸気機関車が登場するのって、この世界の技術から考えると千年くらい先だぞ」

 大切な人達を幸せにするために、この国を豊かにする。その方針はいまも変わらない。けど、だからこそ、急速な発展は危険すぎると思う。

 いずれは作ってみたいとは思うけどな。段階的に行くべきだろ……と言うか、さすがにいまの技術力で蒸気機関車は無理じゃないかな。

 そう思ってアリスを見ると、クスクスと笑っていた。

「ごめんごめん、ちょっとした冗談だよ。そもそも私も、蒸気機関の構造までは知らないしね。さすがに、一年くらい研究しないと作れないよ」

 ……一年研究したら作れるのかよ。なんて突っ込まない。突っ込まないからな。

 という訳で、アリスから視線を外した俺は、リズがキョトンとしているのに気が付いた。


「どうかしたのか?」

「いえ、お二人がなんの話をしてるのか良く判らなくて」

「え? あぁ……悪い。そういえば言ってなかったな。俺とアリスには前世の記憶があるんだ。それも、この世界よりずっと技術の進んだ世界の、さ」

「あぁ、そうだったんですの」

 リズがあっさりと頷く。ソフィアやミリィ達も案外すぐに信じてくれたけど、ここまであっさりじゃなかったぞ。意外と大物――

「………………え? 本気で言ってるんですの?」

 ではなく、たんに冗談と思っていただけのようだ。


「本気も本気、大マジだぞ。そして、アリスは前世の妹だ」

「あぁ……納得ですわ。リオンお兄様が姉妹じゃないと愛せないのは、前世の世界での風習だったんですわね。どおりで変わった性癖だと思いましたわ!」

 リズはまだ信じてなくて、冗談で返しているのだろう。そう思って反応を待ったのだけど、

いくら待っても望んだ反応は返ってこなかった。

 俺はリズにそんな風に思われていたのかと絶句する。

「一応言っておくけど、俺は別に姉妹しか愛せない性癖とかじゃないからな?」

「もぅ、リオンお兄様? そんな突拍子もない話、信じるはずないじゃないですの」

 ……今、わりと本気でぐさっと来た。

 前世の記憶があるうんぬんは少し驚いただけで信じてくれたのに、性癖うんぬんは信じられないってどういうことなの。


「ええっと……冗談とかじゃなくてさ。前世の世界にそんな風習はないし、俺は至って普通の性癖だから」

「でも……アリスさんと付き合ってるんですよね? 前世の妹なのに」

「……そ、それはまぁ色々事情があってだな」

「最近はソフィアさんとも付き合い始めたって聞いてますわよ? それも、最初は婚約者だったのに、わざわざ義理の妹にしたんですわよね?」

「そ、それも色々事情があってだな……」

「クレアにも惹かれてるよね。血の繋がったお姉さんなのに」

「うぐぅ……って、なんでアリスがとどめを刺しに来てるんだよっ!? そもそもの原因はアリスだろ!?」

 トドメがアリスのセリフであることに気付いて突っ込みを入れる。


「えぇ、私のせいじゃないよ。そもそも私がリオンのところに奴隷として来たのって、クレアを優しくリードする知識を身につけるためでしょ?」

「あれはクレアねぇが勝手に言ってただけだ」

「でも、リオンがなんでもするって言った結果なんだよね?」

「………………」

 俺は思わず明後日の方向を向いた。言われてみれば、俺の失言が原因な気がしないでもない。って言うか、良くそんな話を覚えてるな。


「――と、とりあえず、俺達がもらたしてる技術は、異世界に存在した技術なんだ」

 俺は強引に話を戻すべくリズへと告げた。

「はぁ……それで、結局。リオンお兄様の性癖は――」

「その話は終わりだ」

「ですが……」

「俺は聞き分けの良い女の子の方が可愛いと思うなぁ」

「はい、異世界の技術の話でしたわね」

 やっぱりチョロイ。いやまあ、可哀想だから素直で可愛いと言っておこう。


「ともかく、俺やアリスに前世の記憶があるって無理をして信じなくて良いけど、知ってるのはごく一部の人間だけだから、内緒な?」

「分かりましたですわ!」

 ……良い返事だけど、ドジっ娘だからなぁ。信頼出来る相手として教えたけど、秘密保持という意味では不安だ。ちょっと早まったかもしれない。

 

 

 ハッピーハロウィン!(大遅刻)

 Twitterでは宣伝したんですが、なにげに初めての閑話かもしれないハロウィンのお話を活動報告にアップしてあります。もし良ければご覧下さい。

 活動報告は左下の『作者のマイページ』か右上の『作者名』から飛べます。

 なお、次話は5日を予定しています。 


追記:PC大破で次回更新が遅れるかもしれません。お手数おかけしますが、詳しくは活動報告にあげたのでそちらをご覧ください。

データ的には大丈夫のはずなので、そこまでは遅れることはないと思います。

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