表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第一章 自重しない異世界姉妹

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/242

エピソード 2ー5 穏やかな日々。そして――

 アリスとの共同生活。

 俺はマリーの目を盗んでは、アリスとの密会を……じゃなかった。マリーに毎晩密会をしていると見せかけ、アリスから様々なことを学んだ。

 エルフという種族をあまり知らない俺にとっては意外でもなんでもないんだけど、アリスはほぼ見た目通りの年齢で、俺より八つ年上の十七歳。

 世界を回ったのは数年程度らしい。

 それでも、好奇心旺盛な性格だからだろう。その知識量は凄まじく、俺の望んでた作物などの知識は十分に手に入れることが出来た。

 いずれはあれこれ取り寄せて、内政チートを始めるのも夢じゃないだろう。


 なにより嬉しかったのは、アリスに魔術の知識があったことだ。そのお陰で、俺は念願の魔術の修行を始められた。

 もっとも、俺が習ったのは魔術の基礎訓練だけで、肝心の使い方はまだ習ってない。

 魔術の習得は魔術師のサポートがなければ難しく、魔術を封じられているアリスにそれが出来ないからだ。

 それでも、アリスを奴隷から解放したら教えて貰う約束は取り付けてあるので、今からその日がくるのが楽しみで仕方ない。


 そんなこんなで充実した月日は流れ――俺は再び誕生日を迎えて十歳になった。

「はぁ……はぁっ」

「ほらほら、どうしたアリス。もう息が上がってるぞ?」

「はぁ……ど、どうしてリオン様はそんな体力があるんですか? はぁっ、私だって毎日一緒に走ってるのにぃ~」

 暖かくなり始めた、走りやすい季節。アリスと一緒に屋敷の周りを走っているのだけど、さっきからアリスは息も絶え絶えで苦しそうだ。

 一日およそ十五㎞をゆっくりなペースで走る。それを三日繰り返しては一日休みというメニュー。十歳の俺が走るのは無茶な距離かも知れないけど、十八歳になったアリスはいいかげん慣れても良いと思う。


 あ~でも体質なのかな? 毎日走ってても手足は細いままだし、持久走は向いてないのかも知れないなぁ。などと思いつつも、一緒に走るのは止めさせないけどな。

 だって、誰かと一緒に走る楽しみを覚えちゃったからな。アリスには悪いけど、これからも付き合って貰おう。

 そんな風に考えながら、最後の一周を終える。


「はぁはぁ……やっと終わったよぉ~」

「こらこら、走り終わったらちゃんとクールダウンしなきゃダメだぞ?」

「判ってますよぉ……」

 アリスは愚痴りながらも座ったままストレッチを始める。

 持久力はいまいちだけど、体はすっごく柔らかいんだよな。両足を開いて曲げた上半身が、ぺったりと芝生の地面に押しつけられている。


「リオン様、ど こ を、見てるんですか?」

「どこって……」

 アリスは悪戯っぽい笑みを浮かべて俺を見ながら、リズム良く芝の地面に上半身を押しつけている。その度に豊かな胸が地面に押しつけられて形を変えていた。

「……誤解だぞ? 俺はただ、柔らかいなぁって思っただけだからな?」

「そうですね。私の胸は柔らかいと思いますよ?」

「だから違うって! って言うか、判っててからかってるだろ?」

「あはは、すみません。でもリオン様が悪いんですよ? 私のことをじーっと見つめたりするから。リオン様もついに、そう言うお年頃なのかと思っちゃいました」

 そう言ってクスクスと笑う。相変わらずの敬語だけど、随分と柔らかくなったと思う。いや、胸でも体でもなく、対応の話だけどな。


 そうして朝の日課をこなしていると、お世話役兼お目付役のマリーがやって来た。

「リオン様、御当主がお呼びです。準備をして、本宅の執務室までお願いします」

「ん、なんだろ?」

「詳しくは御当主にお聞き下さい」

 マリーは素っ気なく言い放ち、アリスへと視線を向ける。

「今日も大変ですね」

「走るのは大変ですけど、リオン様と一緒に運動をするのは楽しいですよ。マリーさんも一緒にいかがですか?」

「いえ、私は仕事があるので遠慮しておきます。それでは」

 マリーは軽く会釈をして、そのまま立ち去っていった。

 俺とは相変わらず最低限のやりとりしか話してくれないのに、アリスはいつの間に仲良くなったんだ。なんか負けた気がする。

 ……っと、父を待たすのはまずいな。なんの用事かは知らないけど行ってみよう。


「悪いけど、アリスは離れで待っててくれるか? 自由にしてて良いからさ」

「はい、それじゃ大人しく待ってます。問題を起こしたりしないから安心して下さいね」

 何故にフラグを立てたし。



 ――父の呼び出しは、ソフィア嬢と会う段取りが決まったという知らせだった。結婚前に親睦を深めるという理由で、俺がスフィール家を尋ねることになったそうだ。

 そんな訳で数日後。

 護衛――盗賊の類いから俺を護る為か、それとも俺が逃げないようにする為かは判らないけど――に連れられて、俺は馬車でスフィール家の領地へと向かった。

 ちなみに、スフィール領とうちは隣り合っているので距離は意外と近い。そんな訳で馬車に揺られること三時間。俺はスフィール家の屋敷に到着した。


「グランシェス家の次男、リオンと申します。この度は、突然の申し出を受け入れて下さってありがとうございます」

「良く来てくれた。俺はスフィール家の当主カルロス。そしてこっちが妻のエリーゼだ。君を歓迎するよ」

「ありがとうございます」

 俺は一度お辞儀し、改めて二人に視線を向ける。

 カルロスさんは、蒼い瞳に茶色の髪か。古くから貴族の家系はブロンドの髪が一般的なはずだから、スフィール家の当主が茶髪なのは少し意外だ。

 あぁでも、妻のエリーゼさんの方は鮮やかな金髪だな。


「リオンくん、来る時にスフィール領の街を見たと思うが、君の目にはどう映った?」

「えっと……」

 率直に言えば、のんびりとした田舎町といったイメージ。だけど、自然の豊かな領地というのは、この世界じゃ褒め言葉にならないよな?


「貴方、リオンくんはまだ十歳なのよ? そんな質問をしても困らせるだけよ」

「おっと、確かにそうだな。いや、すまない。名高きグランシェス伯爵のご子息の目にどう映るか、つい気になってしまってな」

「素晴らしい土地だと思います」

「ふっ、そうか。ありがとう」

 返答に遅れたせいでお世辞だと思われた可能性は高いけど、今のは俺の本音だ。これだけ豊かな土地があれば、アリスに教えて貰ったあれとかこれが育て放題だ。

 俺がスフィール家に婿入りすればの話、だけどな。


「さて、それで肝心のソフィアなのだが……すまない。娘は人見知りでな。リオンくんが来ると知って、部屋に隠れてしまったのだ」

 部屋に……隠れた? もしかして、ソフィアにとっても、これは望まない結婚だったりするんだろうか? ……って、考えるまでもないな。会った事もない女の子が俺に惚れてるはずもないし、相手にとっても親が勝手に決めた結婚なんだろう。


「それじゃ……会うのは難しいですか?」

「それなんだが。執事に案内させるので、直接部屋を尋ねてみてくれないか? ……レジス、彼の案内を頼む」

 カルロスさんが声を掛けたのは、部屋の隅で控えていた初老の男だった。

 執事と言うが、やたらと体格が良い。どちらかというと、引退した熟練の騎士と言ったイメージである。

「かしこまりました。それではリオン様。お嬢様のお部屋までは、わたくし――レジスが案内いたします。どうぞこちらへ」

「よろしくお願いします」


 俺は執事に従って応接室を退出。そのまま後を追いかけて屋敷の廊下を歩く。

「レジスさん、一つ聞いても良いですか?」

「わたくしはただの執事。どうぞレジスと呼び捨てになさって下さい。そのような敬語も必要ありません」

 あ~そっか、そうだよな。妾の子供だから自覚はなかったけど、俺も対外的には伯爵家の次男。執事に敬語を使ったら相手の方が困るか。


「それじゃ、レジス。一つ聞いても良いか?」

「何なりとご質問下さい」

「じゃあ聞くけど、ソフィアはこの結婚に否定的なんじゃないか?」

「……そのような質問をなさるのなら、予想がついておいでなのではありませんかな」

「まぁな。会ったこともない相手と結婚とか言われても怖いよなぁ。ましてや、ソフィアってまだ七歳らしいし、無理もないよ」

「そう言うリオン様も十歳だと記憶していますが、随分と達観していますな」

「え? あぁ、うん……まぁ色々あってな」

「ふむ。その年で随分と苦労をされているご様子」

 そうそう。不治の病で闘病生活の末に、死んで異世界に転生したりな。なんて、ちょっと言ってみたい。いや、言ったら正気を疑われるに決まってるから言わないけど。


「しかし、解せませんな。それが判っていながら、どうしてソフィア様に会いに来られたのですか?」

「どうせ結婚しなくちゃいけないなら、お互い納得できた方が良いと思ったんだ」

「会えば納得出来ると?」

「どうかな。判らないから会ってみるんだ。お互い一目惚れをする可能性もゼロじゃないだろ?」

 政略結婚だと考えるからつい否定的に考えちゃうけど、お見合いだって考えれば、自分と似た家柄の、三つ下の女の子って言うのは悪い相手じゃないはずだ。

 もっとも、会うまで見た目や性格が判らない上に、例えどんな相手でも拒否権がないお見合いだけどな――って、そう考えたら不安になってきた。

 いかんいかん、前向きに考えよう。


「取り敢えず、仲良くなる努力もしてみるつもりだ」

「努力、ですか?」

「小細工とも言うけどな。部屋に行く前に厨房を貸してくれないか? とっておきの秘密兵器を用意するからさ」

 そうしたら、いよいよ婚約者様とのご対面だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】(タイトルクリックで作品ページに飛びます)
三度目の人質皇女はうつむかない。敵国王子と紡ぐ、愛と反逆のレコンキスタ

klp6jzq5g74k5ceb3da3aycplvoe_14ct_15o_dw

2018年 7月、8月の緋色の雨の新刊三冊です。
画像をクリックで、緋色の雨のツイッター、該当のツイートに飛びます。
新着情報を呟いたりもします。よろしければ、リツイートやフォローをしていただけると嬉しいです。

異世界姉妹のスピンオフ(書籍化)
無知で無力な村娘は、転生領主のもとで成り上がる

書籍『俺の異世界姉妹が自重しない!』の公式ページ
1~3巻好評発売中!
画像をクリックorタップで飛びます。
l7knhvs32ege41jw3gv0l9nudqel_9gi_lo_9g_3

以下、投稿作品など。タイトルをクリックorタップで飛びます。

無自覚で最強の吸血姫が、人里に紛れ込んだ結果――

ヤンデレ女神の箱庭 ~この異世界で“も”、ヤンデレに死ぬほど愛される~
精霊のパラドックス 完結

青い鳥症候群 完結

ファンアート 活動報告

小説家になろう 勝手にランキング
こちらも、気が向いたらで良いのでクリックorタップをお願いします。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ