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俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第四章 過去の想い

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エピソード 4ー2 ミューレの街へ帰還

 マックスさん達との取引を終えたあと、俺達はグランプ侯爵家のお屋敷、クレイン邸へと舞い戻った。

「まずは、ソフィアちゃんに報告かしらね?」

「そうだな。交渉がどうなったか心配してるはずだからな」

「弟くんが名乗らなかったせいでね」

「ぐぬぬ……」

 その通りなんだけどさ。クレアねぇに言われると何故か反論したくなる、不思議。


「あーっ、リオンお兄ちゃんおかえり! クレアお姉ちゃんも!」

 不意にソフィアの声が廊下に響く。見れば、ちょうど廊下の向こうからソフィアが小走りにやってくるところだった。

「ただいま――っと」

 駆けよってきたソフィアが飛びついてくる。それを俺は慌てて抱き留めた。柔らかな温もりが腕の中に広がり、甘いミルクのような匂いがふわりと香る。


「ただいま、ソフィア。キモならちゃんと手に入ったから、心配しなくて大丈夫だぞ?」

「うんっ。交渉相手って、クレアお姉ちゃんだったんだよね」

「あれ、どうして知ってるんだ?」

「リオンお兄ちゃんが出かけたあと、クレインさんが教えてくれたんだよぉ~」

「あぁ、なるほど……」

 俺にイジワルをしても、ソフィアへのフォローはちゃんとしてた訳ね。

 まあ考えてみれば、クレインさんはロリ巨乳好きだからな。不安がるソフィアをそのままにしておくはずがなかったな。


「ねぇ、リオンお兄ちゃん。これで材料は揃うんだよね?」

「ああ、そうだよ。あとはクレインさんに調査報告を出して、ミューレ学園で世界樹の葉を採取するだけだからな。エリーゼさんは大丈夫だ」

「良かったぁ……ありがとね、リオンお兄ちゃん」

「どういたしまして、だ」

 マックス達が先にリュクスガルベアを捕獲したときはどうなるかと思ったけど……どうやらソフィアを悲しませずにすみそうだ。

 俺はホッと一息。ソフィアの金色でふわふわの髪を撫でつけた。



 その後、クレインさんに地竜の爪を譲り受け、リュクスガルベアは解体。キモや肉を冷凍保存し、俺達はグランシェス領へ向かって出発した。

 そうして馬車での移動を続けた三日目の昼下がり。無事ミューレの街へと到着した。

 急いで帰ってきたので少し疲れ気味だけど、俺とソフィアは構わず学園の校舎裏へと向かい、世界樹から葉っぱをプチプチとむしり取っていく。

 校舎裏に生えている木の葉っぱをむしるだけとか、こんなのが本当にクスリの材料になるのかと疑うレベルである。

 とはいえ、

「……これで、お母さんを救えるんだね」

 校舎裏に生えていようと、エルフの里の聖域に生えていようと、ソフィアにとっては、お母さんを救うクスリの材料に変わりはない。

 感慨深そうに世界樹の葉を眺めている。


「なあ、ソフィアはまだ元気か? まだ元気なら、今日中にスフィール家に向かっても良いけど……どうする?」

 本音を言えば、今日はソフィアを休ませたい。グランプ侯爵領からの強行軍にくわえ、気持ちがせいていたようで、ソフィアは少し寝不足のようだから。

 とは言え、エリーゼさんを心配するソフィアの気持ちは判るし、早くスフィール家にいった方がソフィアが安心するかもと言う思いもある。

 だから、どうするかを聞いたんだけど……

「リオンお兄ちゃんが許してくれるなら、ソフィアは今日中に行きたいよ」

 ソフィアの答えは予想通りだった。


「分かったよ。なら日が暮れる前に到着するように出発しよう」

「えぇ、今すぐじゃないの?」

「気持ちは判るけどな。エリーゼさんやエリックさんに、薄汚れて疲れた姿を見せる訳にはいかないだろ? 出発前にお風呂に入っておいで」

 グランプ侯爵領とグランシェス伯爵領を繋ぐ街道には宿場町が点在してるから、言うほど汚れてないけどな。それでも、屋敷にいる頃と比べると少し汚れている。

 だからお風呂にと言うのは嘘じゃない。

 ただ俺の方も、スフィール家に行く前に済ませておきたい用事があるのだ。


「ん~、分かったより、リオンお兄ちゃん。それじゃ一緒にお風呂に入ろうよ」

「おう、それじゃ入ろうか――とか言わないからな?」

「え~? せっかくミューレの街に帰ってきたんだし、たまにはソフィアとも一緒に入ろうよう」

「こらこらこら。俺が別の女の子とは一緒に入ってるみたいに言うのは止めろ」

「え、入ってるよね?」

「入ってませんよ?」

「アリスお姉ちゃんから読み取らせてもらった記憶に、グランプ侯爵領へ出掛ける前日のがあるんだけど――」

「俺が悪かったから、そう言うコトを話すのは止めてくれやがりませんかね?」

 と言うかアリスの奴、マジでなんてことを……今更だけど少し自重するように釘を刺しておこう。効果があるかは……分からないけど。


「ねぇねぇ、リオンお兄ちゃん。ソフィアと一緒にお風呂に入ろうよぉ」

「もう少しソフィアが大きくなったらな」

「むぅぅぅ……」

 俺は少し拗ねたような表情のソフィアの頬を優しく撫でつけた。

 足湯は良く一緒に入っているけど、お風呂となると一つハードルが高い。とは言え、俺とソフィアの関係も、義理の兄妹から恋人へと変化している。

 後ろ髪を引かれる思いはあるけど……今回はどのみち用事がある。と言うことで、取り敢えず今回は一人で入っておいでと説得した。


 その後、ソフィアと別れた俺は少し急いで風呂に入り、他のみんなが上がる前にと自室に移動。そうして待つことしばし、待ち人であったティナが尋ねてきた。

「お久しぶりです、リオン様」

「一ヶ月ぶりくらいだな。なにか変わったことはなかったか?」

「内政は相変わらず順調ですよ。うちより豊かな領地は、いまやこの大陸の何処にもないと思います」

「まぁ、そうだろうなぁ……」

 影の支配者とか言われてるくらいだしなぁと苦笑い。


「ただ、その……その反動でお見合いの申し込みが物凄いことになってます」

「え、俺?」

「主にクレア様の方ですね。一般的には、クレア様がグランシェス領を治めていることになってますから……って、リオン様?」

「え、あ、うん。そうなんだ」

 いかんいかん。クレアねぇにお見合いの話とか聞いて、思わず動揺してしまった。


「お見合いはもちろん全部断ってるんだよな?」

「もちろん、全て丁重にお断りしています。ただ、それでも諦めない方は多いですね」

「ふぅん、そぅなんだ……」

 クレアねぇは地位をぬきに考えても、むちゃくちゃ美人だからな。見合い話が殺到するのは無理もないだろう。

 ただ……クレアねぇが色んな人に評価されるのは嬉しい。嬉しいはずなんだけど、なんかもやもやする。

 とは言え、気持ちをハッキリしていない俺にどうこういう資格はない訳で……あぁもう、それはソフィアの件が終わったら考えよう。

 俺は気持ちを切り替えるべく、頬をぱんぱんと叩いた。


「それで、例の件は進んでいるか?」

「申し訳ありません、過去の資料を探すのに手間取っていて、もう少し時間を下さい」

 例の件というのは、エリーゼさんの病についての調査だ。

 スフィール家の薬師は結核性の――と見立てたらしいが、この世界の医学レベルで細菌を確認することは不可能だ。

 ある程度の知識はミューレ学園でも教えているので、症状から考えて判断しているんだと思うけど……その見立てが正しいかは分からない。

 とは言え、代々スフィール家に使える薬師で信用出来るってことだからな。原因が細菌かどうかはともかく、症状から見た対処法まで間違ってるってことはないだろう。

 それは、エリーゼさんの容態を安定させていることからも想像出来る。

 なので、これはあくまで念のため。

 俺やアリスは前世と違って健康な体を手に入れたからと安心していたけど、エリーゼさんのように、今後なんらかの病を患う可能性がないとは言い切れない。

 今から少しずつ病についても調べていこうと言うのが主な目的だ。


「特に急いでる訳じゃないから、別に慌てなくて良いよ」

「ありがとうございます。ただ、少し気になることもあるので、色々と調べておきます」

「気になること?」

「あぁいえ、思い過ごしかもしれないので、詳しく調査してから報告させて下さい」

「ふむ。まぁティナがそう言うのなら任せるよ」

 俺はそう言って立ち上がる。

 なんにしても、エリーゼさんを救うために必要な材料は全て揃った。リュクスガルベアの依頼が競合したときは焦ったけど、もうあんなトラブルもないだろう。

 あとはクスリの材料を届けて、エリーゼさんを救うだけだ。

「リオン様?」

「そろそろ、ソフィアがお風呂から上がる頃だからな。あまり待たせちゃ可哀想だし、出発の準備をしてくれるか?」

「かしこまりました。直ぐに手配をします」

 

 

「ねぇねぇ、リオンお兄ちゃん。ソフィアと一緒にお風呂に入ろうよぉ」

「ダメだよソフィア。アカバンが怖いって作者に言われてるんだ」

「むうぅ、作者の意気地なし!」

 メタでぶっちゃけようかと思ったけど自重しました。

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