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俺の異世界姉妹が自重しない!  作者: 緋色の雨
第四章 過去の想い
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エピソード 2ー2 平地と山地

「議論に終止符を打つ手伝いって……フルフラット侯爵は今いらっしゃるんですか?」

「ああ。お前が来る前も議論を交わしていたところでな。いったん休憩を挟んだんだが、また討論を再会するだろう。そこで、お前の意見も聞かせてくれ」

 ……いるのか。クレインさんの仲が良いほど喧嘩するポジションの人。正直、混ぜるな危険的な雰囲気がひしひしとしてるから、会いたくないんだけど……

 ソフィアのお母さんを不治の病から救うためには、クレインさんの持つ地竜の爪が必要不可欠だ。ここで断るという選択肢はない。

 俺は仕方なく、本当に仕方なく、自分で良ければと答えた。


 そして程なく、フルフラット侯爵が姿を現した。

 最近はうちと協力関係にあるグランプ侯爵領が頭一つ抜き出たとは言え、すぐさま追従して領地を発展させているという。

 クレインさんと同等、もしかしたらそれ以上にやりての侯爵様。外見もクレインさんに負けず劣らずの、精悍な中年男性だ。

 そしてその後ろには、やはりクレインさんと同じように、十歳くらいの女の子を従えている。こっちは、身長だけではなく胸もぺたんこだ。と言うか真っ平らだ。


「キミがグランシェス家の御当主かな?」

「――っ、初めまして。お会い出来て光栄です、フルフラット侯爵。私のことはどうぞ、リオンとお呼び下さい」

 厳格な声で挨拶をされて我に返った俺は、慌ててかしこまった。

「……ほう。これはこれは。確かにクレインの言っていた通りだ」

「くくっ、驚いただろう。これがこいつの素だ」

「あぁたしかに驚いた。中々に面白いではないか」

 頭を下げる俺をよそに、二人がなにやら笑っている。どういうことだと顔を上げると、フルフラット侯爵が興味深げに俺を見ていた。


「……あの? 私がなにか失礼を致しましたでしょうか?」

「そうではない。と言うか、その逆だ。キミはなにをそんなにかしこまっているんだ?」

「……申し訳ありません。お言葉の趣旨が分かりません」

 うちは伯爵家で、相手は侯爵家。たった一つとは言え、その隔たりは大きい。普段から交流のあるクレインさんはともかく、フルフラット侯爵にかしこまるのは当然のはずだ。

「……ふむ。つまりキミは、自分の方が格下だと言っているのか?」

「うちは伯爵家ですから」

「たしかに‘なぜか’伯爵家だな」

「どういう意味でしょう?」

 礼儀がなっていないと言われるのなら判る。けど、それとは逆の理由で呆れられているように思える。だからこそ、意味が判らなかった。


「キミの元にはあらゆる力が集まっているという意味だ。例えば……金の力だな。リゼルヘイム中の金貨が、グランシェス家に集まっていると言っても過言ではないはずだ」

「いえ、そんなことは在りませんよ。昨年度も、うちは少し黒字な程度です」

「街を丸ごと一つ建設し、全国の街道整備を自腹で行った上で、だろう? 本来であれば、財政が破綻していない時点でありえん話だ」

「それは、まぁ……」

 内政チートで集まりすぎてたからな。国家予算級の金貨をばらまいた自覚はある。


「しかも、集めた金を貯め込むでもなく、各領地のために使った。いまや多くの貴族がお前に味方している。くわえて、アルベルト殿下の信頼を得て、リーゼロッテ姫を自らの義妹にくわえた。本当に……どうしていまだ伯爵なのだ?」

「いや、そんなことを言われましても……」

 一般的に金や名声で手に入れられるのは伯爵家まで。建国直後とかならともかく、古くから続く国で侯爵家に格上げというのはまずありえない。


「アルベルト殿下はその口実に、全国の街道整備などと言う無茶をお任せになったのではないのか?」

「私ごときにアルベルト殿下の深慮は分かりかねますが、少なくとも私はそう言ったお話を聞いたことはありません」

 と言うか、実際にあるはずがない。街道整備はアルベルト殿下に押しつけられたモノだけど、自腹は集まりすぎた金貨を使うためにこちらから言い出したモノだからだ。

 ……まあ、儲けすぎて困ってたんですなんて、口が裂けても言えないけどな。


「ふむ……まあ良い。ともかく、わしに対して、その様にへりくだる必要はない。クレインに接しているのと同じような感じで構わん」

 それはさすがに……と、断ろうと考える。だけど、クレインさんに視線で後押しされて、俺はお言葉に甘えることにした。

「分かりました。そう言うことなら普通に話させてもらいますよ」

 少しだけ話し方を崩す。その瞬間、彼はするっと俺の懐に飛び込んできた。


「よし、では腹を割って話そう。キミがあの、伝説のリオンなんだな!?」

「……は? いきなりなんですか? と言うか、伝説?」

「うむ。数々の幼女を義妹に、己の道を征く生き様はクレインから聞いているぞ!」

 ちょ、クレインさんっ! なに言っちゃってるんですかああああああああ!?

 非難の視線を向けるけど、クレインさんは何処吹く風。彼は我々の未来を照らしてくれたのだとか、意味の判らないことをのたまってる。

 俺が照らしたのは、農業とかの未来であって、決してロリコンの未来じゃなかったはずなんですけどねぇ。


「どうだオーウェン、彼なら俺達の議論に決着を付けてくれるとは思わぬか?」

「ふむ……そうだな」

 フルフラット侯爵はそこで一度言葉を切り、俺の後ろにいるアリスとソフィアに視線を向け、僅かに眉をひそめた。

 ……なんだ? アリスやソフィアを見て眉をひそめるとか、なんとなく感じが悪い。なんて思ったんだけど、フルフラット侯爵が眉をひそめたのは一瞬だけ。

 彼は直ぐにニヤリと口の端を吊り上げた。


「まあ彼ほどの男なら、公平な判断を下してくれるだろう」

「ああ、その点については心配ない。彼の義妹には様々なタイプがいるからな」

 フルフラット侯爵の呟きに、クレインさんが訳の判らない答えを返す。

 俺は一体どういうことなんだろうと首をかしげた。……いや、嘘だ。本当はなんとなく予想がついている。そして猛烈に嫌な予感がしている。

 そんな俺の予想に答えるように――


「巨乳か貧乳、真の幼女にふさわしいのはどちらだと思う?」


 クレインさんが言い放った。……凄く、どうでも良いです。

「ええっと……それぞれに魅力があるんじゃないですか?」

 やっぱりそんな論争だったかと呆れつつ、巻き込まれない様に日和ってみるけど――

「俺はローリィのように、幼い体に豊かな胸という組み合わせこそが、幼女の真の魅力を引き出していると思うのだ。だがオーウェンは貧乳こそが正義だとぬかしおる」

「当然だ。幼女とは即ち、未成熟なつぼみそのものだろう。一部だけ成長しているなど、邪道ではないか。うちのペタンこそが正義だ!」

 話を聞いていて一瞬、ペタンってなにと思ったけど、フルフラット侯爵の後ろでツルペタ幼女が恥ずかしそうに身をよじっている。たぶん、少女の名前なんだろう。

「邪道だと!? 貴様にはこのアンバランスな美しさが理解出来ないと見えるな!」

「なにがアンバランスだ! お前はただ巨乳が好きなだけだろう!」


 ……うん。この二人、人の話を聞いてないね。

 正直、こんなどっちを選んでも敵を作るような二択に関わりたくない。

 関わりたくないんだけど……地竜の爪を譲り受けるには、この争いに終止符を打たなくてはいけない訳だ。

 ……正直、エリーゼさんの命を天秤にかけてすら、わりと本気で帰りたい。けど、ソフィアを悲しませる訳にはいかないからな……と言う訳で、俺は咳払いを一つ。


「ロリ巨乳かツルペタ幼女のどちらが正義か。これは人の数だけ答えがあると言って差し支えないでしょう。ですから、争うなんて無意味です」

 頑張って互いに手を取り合う未来を提示してみる。

「それは判っている。幼女が正義なのは当然だ」

「だが、そこをあえて、どちらがより正義かを聞いているんだ」

 ……このロリコンどもめ。こんな時だけ息ぴったりになりやがって。


 しかし、困ったな。どっちかを答えなきゃ納得してくれなさそうな雰囲気だ。

 地竜の爪を手に入れると言う目的を考えれば、クレインさんの味方をするべきなんだけど……フルフラット家もクレインさんと同格の侯爵家。出来れば敵に回したくはない。

 どうしたモノかと視線を彷徨わせていたら、おもむろにアリスと目が合った。アリスは、私に任せてとばかりにこくりと頷く。

 一抹の不安がよぎるけど……このままじゃろくな結果にはならないだろう。と言う訳で、アリスに任せると頷き返した。

 いや、決して現実逃避をしたわけじゃなく。


「二人とも、根本的に間違ってるよ」

 アリスは果敢にも、言い争う二人のあいだに割って入った。

「む、アリスティアよ。永遠とも言える時を生きるお前には関係のない話だ」

「そうだ、育ちすぎた貴様に幼女のなにが判る」

 クレインさんが尋ね返し、フルフラット侯爵が咎めるように言い放つ。なんかさりげに酷いことを言われてる気がするけどアリスは怯まず、背後からソフィアの両肩を掴んだ。

 ソフィアの胸が反らされ、体格の割りにやたらと成長した胸がたゆんと揺れる。


「ふぇ? ア、アリスお姉ちゃん?」

「真の幼女とは、ソフィアちゃんのコトを言うんだよっ!」

 戸惑うソフィアに構わずアリスが言い放った。

 ソフィアが可愛いと言う点においては同意するけど……それじゃクレインさんに味方してるのと同じじゃないか?

 そう思ったのは俺だけじゃないようで、

「む、流石はリオンの腹心。良く判ってるではないか!」

 クレインさんがすかさず同調。フルフラット侯爵は苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべた。だけど――

「二人とも誤解してるね。私は別に、幼女は巨乳だなんて言ってないよ?」

「……なんだと?」

「――むっ!?」

 今度はクレインさんが眉をひそめ、フルフラット侯爵が期待の表情を浮かべる。


「ソフィアちゃんはまだ十二歳。つまり、ようやく結婚が出来るようになったばっかりの、純情可憐な乙女そのもの。にもかかわらず、にもかかわらず、だよ? ソフィアちゃんはリオンのために、花魁(おいらん)に匹敵する教育を受けているんだよ!」

「――お、花魁に匹敵だと!?」

「それは事実なのか!?」

 クレインさんとフルフラット侯爵の視線がソフィアへと集中。アリスに両肩を掴まれて逃げられないソフィアは頬を染めつつこくりと頷いた。

 そんなソフィアの態度に、二人はゴクリと喉を鳴らす。


「ふふん。気付いたようだね。それこそがソフィアちゃんの魅力! 貧乳か巨乳かなんて関係ない。内面と外見のギャップこそが真の幼女の魅力なんだよ!」

 やかましいわ――と突っ込みたい。けど、クレインさんとフルフラット侯爵は「な、なるほど……ごくり」とか言っている。

 ここでよけいな突っ込みを入れるよりは、アリスに話を合わせた方が平和的な決着を望めるだろう。それになにより、内面と外見のギャップこそソフィアの魅力というのは理解出来なくもないからな。……ごくり。


 ――って、ごくりじゃねぇよ。俺まで乗せられてどうする。と言うか俺は、ソフィアが好きなだけで別にロリコンじゃないし。

 それにロリコンとか言ってるけど、この世界の子供は成長が早いので、この世界の十二歳は日本の十五、六歳くらい。ソフィアはそれより少し幼いので中学生くらいの外見。

 クレインさんやフルフラット侯爵との年齢差を考えるとアレだけど、現在俺が十六歳であることを考えれば、ソフィアを魅力的に思ってもおかしくないはずだ。


 ……まあ、前世の年齢を入れるとアレだし、深く考えるのは止めよう。それにほら。精神年齢ってある程度、肉体年齢に引きずられると思うんだよね。

 この世界の子供は成長が早い分、十六歳くらいの外見になったら成長が逆にゆっくりなるみたいだし、あんまり気にしない方が良いんじゃないかな。

 ――閑話休題。


 真のロリはロリ巨乳かツルペタ幼女か。

 長きにわたって続けられた論争は、内面とのギャップこそが正義だという第三の結論にて決着がついた。

 だが……彼らは気付いていない。

 内面と外見のギャップこそが幼女の魅力だとしても、そのギャップがより映えるのはロリ巨乳か、ツルペタ幼女か。その問題がまるで解決していない事実に。


 まあ……どうでも良いので教えるつもりはない。俺は地竜の爪を譲って貰うのが目的だからな。二人が納得したのなら黙っておこう。

 と言う訳で、残りはキモの入手と、学校とギルドの視察だけだ。この調子なら思ったより楽なんじゃないかな――と、この時の俺は思っていた。



 メインテーマが重い分、サブプロットを軽くしたらこんなことになりました。正直やりすぎたかなって思ったんですが……よく考えたらエピソード2は毎回こんな感じでした。

 と言うわけで――


 *注意。この物語はロリ的表現が頻出します。閲覧の際はご注意下さい。


 ちなみに、この世界に花魁があるかは謎なんですが……可能な限りソフト? な表現で、夜用だけじゃない様々な技術を持っていると言う意味で花魁という単語をチョイスしました。

 実際には最高級娼〇とかそんな感じの単語が使われていると思います。

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