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始まりの音

新しく連載しました。

文章もお見苦しいところがあるかと思いますが、読んでいただけると嬉しいです。

「まにあうかな……っていうか、なんでまだ来ないの!?」

と、スマートフォンに表示された時間と電車の発車時刻を見比べながら明は言った。

「あと1分で学校行きの電車、発車するね。」

と呟いた奏多の冷静な声がさらに明を焦らせる。

「もう!これ逃したらあと一時間後だから完全に遅刻なのに……!俊、美雨にも咲人にも電話繋がらないの!?」

「繋がんない!何回もかけてるけど。」

明に言われ今だ駅に現れない2人に電話をしていた俺は、ふと電車内での電話の使用はご法度だと気がついた。明に言われて電話したのであって俺は悪くない。うん。……そう明に責任転換しつつ俺は慌てて、携帯をスクールバックにしまった。


その直後、

「もう電車出発だよ……」

という明の声とともに、俺の耳には電車の発車を知らせる特有のベルと

「待って!乗る乗る!!」

「すいません!乗りますー!」

という2つの声が飛び込んできた。



遅刻組2人が乗ったところで電車は発車。と同時に明のあきらかにいつもより低い声が、美雨と咲人に向けられた。

「ねぇ。美雨、咲人くん。昨日あれだけ遅刻するなって言ったよね?」

「明、すいませんでした!」

と明の顔を見て、びくっとした美雨は即座に謝る。

……それにしても明さんよ。顔は一応笑ってるけど、目が笑ってなくて超絶恐ろしいことになっておりますよ?

そして

「なんで遅れたの?」

奏多が、明の顔に怯えている美雨に声をかけた。

すると美雨はいいにくそうに、

「えっと……。それはね……」

と言いかけながら横の咲人を一瞬見た。

その行動を明は見逃さない。

そして、もう一度息を吸い笑顔を浮かべなおしてから、

「美雨、正直に言って?」

と言った。

明の恐ろしいを通り越しておぞましい笑顔を向けられては、おそらく誰であろうとも逆らうことなどできるわけがない。

「……咲くんが、来るの待ってたら、電車の時間に間に合わなくなりかけ……で、でも咲くんは悪くないから!!」

その言葉を言った瞬間、おぞましい笑顔さえも消えた明の顔が、咲人の方に向けられたため、必死に擁護する美雨だったが時すでに遅し。

「咲人くん!美雨巻き込んじゃだめでしょ!?」

「いやあ。昨日は結子ちゃんと凛花ちゃんととLINEで遅くまで話してたらさあ…。しかも俺、美雨に待っててくれとか一言も言ってねーよ!?」

「美雨の優しさに文句つけんのか!?元凶はあんたの女癖が悪いからでしょうが!」

ぎゃあぎゃあと言い合いを始めた明と咲人。

俺らの他に誰もいないとはいえ、一応公共の乗り物電車ですよ〜。うるさくするのはやめましょう。と言っても今の2人の耳には届かないと思うので、心の中で注意。

「明!もうその辺に…」

と2人に声をかける美雨に奏多は

「ちょっとこっちにおいでよ。」

と自分の方へ美雨を呼ぶ。

「え?うん。」

美雨が言い合いをしている2人から目を話し、奏多の方へ行くと奏多は薄く笑って、

「咲人と裏路地でも通ってきたの?珍しく髪が乱れてるよ。」

と美雨の二つ結びの片方を少し引っ張っりながら言った。

美雨は奏多に言われて慌てて自分の髪をほどき、

「恥ずかしいなあ。奏多くん、教えてくれてありがと。」

と笑い、自分で髪を結びなおそうとした。

「ん。いいよ。それより僕が結んであげるから、もっとこっちに来なよ?」

と、美雨の手から2本のヘアゴムをとり美雨の髪を結び始める。

そして、

「美雨、髪サラサラだよね。綺麗だよ。」

とそんな言葉を平然と言ってのけたのだった。

この歯が浮くような言葉を本人は全くの無自覚で言ってらっしゃるのだ。どのような家庭環境で育てばこのようになるのであろうか。

残念ながら、この天然発言で女子にドキッとさせる芸当は、鬼のように恐ろしい母と、とてつもなく楽観的な父、人をパシリとしか思ってない姉という家族構成のもと育った俺には、到底無理なのであった。

そもそも、俺がそんなこと言ったら間違いなく

「頭でも打った?俊。」

と言って笑われるだけである。

この言動は、奏多だから許されるのだ。奏多がうらやましい限りである。

そして、そんな言葉を言われた美雨は、

「もう、奏くん……。無自覚って恐ろしい……。」

と呟いた。やっぱり小さい頃から一緒にいる幼なじみでも、さすがにこれには慣れないらしい。


「それはそうと。」

とふいに俺の後ろから、明の声が聞こえる。

咲人との言い合いは終結したようだ。

「私たち今日から高校生よ?楽しみじゃない?」

「そうだね。制服も変わってるし、ワクワクする。」

と美雨は明の声に返事をした。

「そうえば、美雨。新しい制服も似合ってるよ。かわいい。」

奏多に言われた美雨は一瞬だけ、戸惑ったような表情を見せた気がしたが、気のせいだったようで、

「ありがと。奏くん。」

と照れ笑いを浮かべた。

「俺らは、幼稚園の時から5人一緒だから……うわ。もう13年くらい一緒にいるぜ。」

咲人がいった声に

「うわ、とはなによ。……まあ、さすがに高校は離れると思ったのにね。」

と明が言った。

「そうだよなー。俺らが行く清瀬北高等学校って家のあたりから、超遠いしな。誰かと行く高校、示し合わせたわけでもねーのにさ、すごいよな。」

俺の言葉に美雨は少し悪戯っぽく笑って、


「これも、運命だよ。」


と呟く。



次は、清瀬北高等学校前〜清瀬北高等学校前〜、と間も無く電車が到着する事を知らせるアナウンスが、俺らの耳に響いた。



ピーコンピ―コン

ドアが開く。

俺たちは新たなスタートに向かって一歩をふみだした。





読んでいただきありがとうございました。

感想など聞かせていただけると嬉しいです。

これからも、ぜひよろしくお願いします。

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