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世界一の科学者と“ひとり”のロボットの物語

作者: 名口慎


ーー20XX年。

度重なる戦争や環境破壊によって人類の数は、10億と2000ほどにまで減少した。

人類が人類を滅ぼす最悪な、とある人類の時代の話。


そこにある科学者がいた。家族も友人もいない、ひとりぼっちの老人だった。

彼は世界一の技術と才能を持った科学者だった。

彼が作ったのはロボット。人を助けるための、ロボットだった。


彼は、たくさんのロボットを生み出した。

まるで母が赤子を産みおとすように、毎日毎日、身をボロボロにしながら、命がけでそこに愛を詰め込んで。

そんな彼のロボットを、世界中の権力者たちは欲しがった。しかし、いくら金を積まれても彼は頷くことはなかった。

それは、戦争に使うためだと知っていたから。


「生み出した我が子に、人を殺せというのは、人だけで十分ではないか。

 私は、そんなこと、我が子に言えないよ」


彼は、生み出したロボットを世界の貧しい地域に無償で届けた。

まるでサンタ・クロースがこっそりと枕元に置くプレゼントのように・・・。

愛と未来への希望を願って。


彼は、ロボットを生み出すとき、必ず3つの願いを込めた。


  1、人の笑顔を作れるように

  2、人に優しさと勇気を与えられるように

  3、そして・・・・


それを人は“こころ”と呼ぶ。

でも、ロボットには脈打つ心臓もなければ、36℃のぬくもりも持ってない・・・だけれど、人を想い、笑顔にし、一緒に居ることは出来る。

ひとりぼっちの男の子を一人にさせないことが出来る。


ロボットが、育児や介護、看護や手術をする時代になることは構わない。

でも、その優れた能力で、人を殺すようになることは、この先何十年経ったとしてもあっちゃいけない。

たとえ、人類が全ての人類を残虐に殺してしまう日が来たとしても。

君たちロボット理不尽に壊したとしても。


人を、恨んではいけないよ。・・・君たちは、“ひと”になってはいけない。




ザクザク・・・


荒れ果てた大地に錆びつき曲がったシャベルを差して穴を掘る1体のロボット。

油が切れたのか、動く度にギシギシと鈍い音を立てる。どこもかしこもボロボロで立っているのがやっとのようだ。

それでもロボットはザクザクと焦げついた黒い土に穴を掘り続けた。


・・・今は亡き、主たちを静かに弔うために。


その作業をすべて終えた瞬間、もう何もかもなくなってしまったその地を見渡した。

そして涙を授からなかったその瞳を静かに瞑り、片手を胸の前に持っていき、主へ鎮魂の祈りを捧げた。



いつの日か、再びこの大地へ生まれ来る命が、

戦いに生きぬように・・・笑顔で、幸せであるように・・・と。



ひとりのロボットは、両膝を付き、祈ったまま静かに眠りについた。


深いふかい眠りに・・・





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