第五話「危機」
「まあやっと全て撤去できる。お前らが来てくれたことに感謝してやろう」
トランプの声は初めに会った時より二倍か細くなっていた。しかし初めの頃の怒りとは違い、喜びに満ちていた。
その途端に私は気付いた。双子に近寄ると消えてしまうトランプとか細い声との関係、そしてなぜ彼は今喜んでいるのか……。
竹秋の顔を見ると青ざめていて、彼も実態に気付いたようだった。
その瞬間、彼は私の手を取り暗闇の中を一目散に逃げ出した。しばらく暗い中にいて目は少し慣れてはいたものの、走るとなるともうどこに何があるのか分からなかった。
懐中電灯も、ずっと付けてあったせいかもう電池がなかった。どこに向かっているのかあのトランプはまだついて来ているのか分からず、無我夢中で走った。
どれくらい経ったのだろう。一時間だろうか。それともたったの十分か。少なくとも暗闇の中では人間は時間を把握できなくなるということは事実だったようだ。
私と竹秋は走り疲れ、息を切らしていた。電灯なしで逃げたおかげか、あのトランプがついて来ている気配は無かった。緊張が解けたのか私達は、深い眠りについた。