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第四話「声の正体」

「誰?」

 暗闇のせいか少し神経質になった竹秋は、そう、辺りに向かって叫んだ。

「ちょっとちょっと、二つも同時に訊くなんて、礼儀も知らない不届きものめ」

 先ほどのか細くうんざりする声が、そう答えた。と同時に、左側から、かさかさ、と小さな虫かねずみが身じろぎする音が聞こえた。まさか……。そう思った瞬間、一枚のトランプが姿を現した。スペードのエース。そのトランプは立っていた。誰にも支えられずに。

 すると途端に、そのトランプが話し始めた。

「そもそもお前ら“双子”は生まれてくるべきではないのだ。それなのに、俺が離らかしてやったのに、なんでくっつくんだ!」

「え、ちょっと、双子って……?」

「お前ら二人に決まってるだろ! そんな事も分からないのかこの能無し」

 この口の悪さにさすがに私も堪忍袋の緒が切れた。

「ちょっと初めましての人に対してその口は失礼なんじゃないの? しかも私に双子なんかいません! 竹秋は私の友達です! 能無しはあなたの方よ!」

「本当に何も知らないんだな。お前らの両親偉いや。ま、俺が記憶を抜いてあるからなんだけどな。うひひひ」

「……記憶を抜いたって、どういう意味だよ」

 竹秋が言った。

 するとトランプはこほん、と一つ咳をしてか細い声を少し太めにして語り始めた。

「あれは二十年くらい昔だったかな。俺はいつも通りトランプ業界のトップという仕事をしていた。だが突然ある日から、俺たちの仲間の奴らが消え始めたんだ。俺は人間界に問題があると思い使者を百人ほど出した。一人一人違う家で調査をさせた。するとある事に気が付いた。調査から帰って来た者は皆何も特別な事はないと言った。だが帰って来なかった者は二度と帰って来なかった。何でだか分かるか?」

「……誰かに食べられた?」

 私も竹秋も検討がつかなく、最初に出た答えはそれだった。

「トランプが誰に食べられるのだ馬鹿野郎。そいつらの共通点とは、お前らのような双子の家に行ったこと、ただそれだけだった。だから俺達はできる限りの双子を撤去し始めたのだ。だがそれがどれだけ危険なことか。ある者を撤去するにはある程度その者に近寄らなければならない。しかし近寄り過ぎたトランプは消えてしまう。結局世界のほとんどの双子は撤去できた。一組を除いて……。お前ら二人の事だぞ!」

 私には当分信じがたい話だった。トランプが消えるのもそうなのだが、逆にトランプが双子を撤去するというのは到底不可能であろう。でも今この四次元のような不思議な空間にこのちっぽけなトランプが私達を連れて来たのは事実だから可能なのだろうと信じることにした。

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