6-3 「壊れる前に」
青白い残光が、通路全体を揺らしていた。
破裂した金属片、斜めに走る焦げ跡、血のしみ──
静寂の中に、星屑だけが無数の残光を引いている。
ルシファーは足を止めた。
息がわずかに詰まる。
「……何が起きてやがる」
星屑は脈動していた。
生き物のように、怒りに合わせて鋭く震えている。
その中心──ナユタがいた。
肩を上下させ、涙に濡れた瞳の奥では、
青白い光がまだ形を保てず揺れている。
足元には、血を流して倒れた少年。
横で泣き崩れていた女性が、声を失ったまま震えていた。
そして──
ナユタの視線の先に、血ぬれの男がいた。
ナユタは一歩、前に出た。
「……許さない」
声は低く、震えていたが、
その奥には確かに“怒り”が宿っていた。
星屑が反応し、通路の風を切る音が跳ねた。
男が息を吸うより速く、
ナユタの体が地を蹴る。
「なんで……殺したんだよ!!」
突き出した拳より先に、
星屑が一斉に閃き、男の肩・腕・脇腹を浅く切り裂いた。
金属音にも似た高い響きが散り、
男は崩れ落ち、呻き声をあげた。
星屑は止まらない。
血の匂いに混じり、青い光が狂ったように円を描く。
「ナユタ、やめろ!」
ルシファーが叫ぶが、届かない。
ナユタの体が前へ傾き、踏み込もうとしている。
そのとき──
女性がゆっくりと立ち上がった。
涙に濡れたまま、弟の亡骸をそっと床に降ろす。
その手が剣の柄を強く握る。
震える声が落ちた。
「……返してよ。
わたしの弟を……返して」
女性は一歩、そしてもう一歩と前へ出た。
刃先が揺れ、今にも倒れそうなほど体は震えているのに、
その目だけが深い怒りで燃えていた。
「やめろッ!」
ルシファーが駆け、
振り下ろされかけた手首を掴んで強引に止めた。
衝撃で剣が床に落ち、金属音が響く。
同時にナユタが再度踏み込もうとし、
ルシファーは空いた腕でナユタの肩を押さえつけた。
星屑がルシファーの腕をかすめ、火花のような光が散る。
「──ナユタ。
それ以上は……お前が壊れる」
女性は崩れ落ち、
ナユタは荒い息を吐いたまま動けなかった。
星屑はなお揺れていたが、
やがてひとつ、またひとつと光を丸めながら萎んでいく。
散っていた粒子は、揺らめきながらナユタへ向きを変え、
線のように伸びて細く収束していった。
光の筋はそのままナユタの瞳の奥へ吸い込まれていく。
残響だけが淡く揺れ、
通路には本来の闇が戻る。
静寂が落ちた。
ただし、その静けさは誰一人として安らがせなかった。
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