6-1 「夜を裂く悲鳴」
夕方の稽古を終え、痛む膝を抱えたまま夜を越え──
夜明け前の薄光の中、ナユタはひとりで構えていた。
「……今日も、やる。」
ルシファーは眠たげな顔でその様子を眺め、
何も言わず、ただ隣に立った。
訓練は朝から昼へ、そして夕方まで続いた。
太陽が傾くにつれ、二人の影は長く伸び、
ナユタの動きは何度も揺れ、よろめきながらも立ち続けた。
夕暮れの風が吹く頃には、膝と肘の擦り傷はさらに増えていた。
それでも構えだけは崩さなかった。
やがて空が深い橙に染まり、
鉄骨の隙間から差し込む光がゆっくりと弱まっていく。
地平の向こうで太陽が沈んだ瞬間、
ナユタの額から落ちた汗が、最後の光を受けてわずかに煌めいた。
ルシファーが静かに言う。
「……終わりだ。戻るぞ。」
夜のアンダーグラウンドには灯りが灯り始め、
蒸気とスープの匂いが温かく広がっていた。
「ナユタ、これ……熱いから気をつけてね。」
レビが湯気の立つ皿を差し出す。
ナユタは小さく微笑み、礼を言った。
「ありがとう。」
膝には古い絆創膏。
肘には擦れた赤い傷。
それでも顔には達成感が残っていた。
リュックは足をバタつかせながら、じろりとナユタの傷を睨みつけた。
「……お前よ、ほんと加減ってもん知らねぇのかよ。」
悪魔たちもあちこちで皿を持ち、
騒ぎはないが、どこか家族めいた静かな空気が流れていた。
ルシファーは壁にもたれ、無言でスープをすすっている。
その視線は、ほんの少しだけ柔らかかった。
──この夜が、続くはずだった。
遠くの通路から、金属を裂くような鋭い音が響いた。
続いて……
「……イヤァァァァーーッ!!!!!」
女性の絶叫がアンダーグラウンド全体を貫いた。
皿が震え、レビが息をのむ。
リュックの布地が逆立つ。
悪魔たちの手が、ぴたりと止まった。
ナユタは立ち上がろうとして、痛む膝をかばいながらよろめく。
ルシファーが目を細める。
「……今の声、どこからだ。」
悲鳴は、通路の奥で何度も反響していた。
誰のものかも、何が起きたのかもわからない。
ただ、その叫びだけが
アンダーグラウンドの夜を真っ二つに裂いていた。
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