5-7 「影が重なるとき」
夕日が沈みかけ、空き地全体が赤く染まっていた。
ナユタの足取りはすでに重く、膝と肘は薄く血でにじんでいる。
息を吸うたびに胸が震え、肩が上下していた。
それでも構えを解かなかった。
ルシファーが静かに歩み寄り、隣に立つ。
夕日の斜光が二人の影を地面に長く引き伸ばす。
ルシファーはゆっくり腕を上げ、
踏み込み、腰の沈め方を示す。
いつもより遅く、ナユタの速度に合わせて。
ナユタもふらつきながら動きをなぞる。
足がもつれそうになっても、止まらない。
少し離れた場所で、レビが目を丸くしたまま見つめていた。
やがて小さく息を整え、足を開いて真似をし始める。
「えっと……こう、だよね……?」
リュックがその隣で、
身体全体をぐらりと傾けて動きを真似した。
「ちょ……おい……こ、これバランス悪ぃぞ……!」
レビの影とリュックの影がぎこちなく揺れた。
さらに後ろで、悪魔たちが無言で立ち上がる。
誰に言われたわけでもなく、
ただ自然に、ゆっくりと構えを真似ていった。
大きな影、小さな影、歪んだ影。
それぞれが夕日に伸びて、地面の上で揺れた。
ナユタはよろめきながらも動きを続けた。
視界が滲んでも、足に力が入らなくても──
止まる理由はどこにもなかった。
**黒い羽に、いつか届くために。**
ルシファーが僅かに顎を引く。
その小さな合図を受けて、ナユタが最後の一歩を踏む。
夕日が、地平の端で最後の光を放った。
その瞬間──
二人の影が、ゆっくりと重なった。
**ナユタの小さな影と、
ルシファーの大きな影が**
同じ動きで、同じ向きに流れ、
一つの影となって静かに地面を滑る。
レビが息を止めたまま見つめた。
リュックも思わず体の傾きを止める。
悪魔たちの影も、重なり合う影を囲むように揺れた。
夕暮れの光が、最後の輝きを落とした。
二人の影は──
ひとつになったまま、ゆっくりと動きを止めた。
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