5-4 「悪くねぇ朝だ」
アンダーグラウンドの空気は、酒と鉄のにおいで重たかった。
息をするたびに、のどが焼ける。
床のあちこちで寝息とうめきが混ざり、低い風みたいに響いていた。
ルシファーは顔をしかめて、頭を押さえた。
「……酒、控えりゃよかった」
片翼を毛布みたいにかけたまま、ゆっくりと身を起こす。
動くたびに、空気がわずかに揺れた。
悪魔たちが転がっていた。
「アタマ……ワレ、ル……」
「……リュック……ヤカマシイ……」
黒い羽がだらりと伸び、暗がりの中で静かに沈んでいる。
リュックがバタバタと足を鳴らした。
「おいおい!全員死んでんのか!? ……って、あれ?」
顔をぐるぐる回して、辺りを見渡す。
「チビがいねぇ!!」
毛布の中から、寝ぼけた声がした。
「……うるさい……もう少し寝かせて……」
レビが顔を枕に押しつけたまま、リュックを蹴った。
「イッテェ!?」
暗がりの奥で、ひとりの悪魔がゆっくりと顔を上げた。
目は細く、声はかすれている。
「……ナユタ……ソト……」
その言葉に、重たい空気がひと呼吸止まった。
ルシファーはため息をついて立ち上がる。
足音が階段をのぼるたび、静かな空洞にひびいた。
上に行くほど、空気がやわらかくなっていく。
通路の出口で、白い光が揺れていた。
外はもう朝だった。
鉄屑の上で、ナユタが両手を前に出している。
小さな吐息が白くのびて、風に消えた。
何も起きない。
それでも、彼はもう一度、手を伸ばした。
ルシファーはその背を見ていた。
光が彼の顔をかすめ、影がゆっくりと動いた。
しばらく黙ったあと、かすかに笑う。
「……悪くねぇ朝だ」
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