4-7 「塔の領域」
森の奥から吹く風が、頬を撫でた。
レビは思わず足を止め、肩をすくめる。
「……ねぇ、2人とも。やっぱり、帰ろうよ」
声が震えていた。
闇の奥で、何かがすり抜けた気がした。
塔が見えた。
光が雲を白く染めた。
ナユタもリュックも、その先を見上げる。
夜の空が、何かに支配されているように見えた。
上空には天使とドローンが渦を巻き、結界の縁を覆っていた。
天使たちの翼が月明かりを反射し、輪郭をやわらかく浮かび上がらせている。
ナユタの足が止まる。
冷えた空気が、ぴんと張りつめた。
レビの息もリュックの小さな足音も消えた。
「この先は塔の領域だ」
静かな声が、夜を裂く。
空気が歪み、ルシファーが影の中から現れた。
月光が銀の翼を、鈍くかすめた。
彼の視線が、空を漂う天使たちへと向けられる。
「お前に、あれが倒せるのか?」
ナユタの拳が震える。
「……やれるよ!」
かすれた声が夜を貫いた。
ルシファーは笑った。
「撒き散らすだけの今は無理だな……今はな」
「さー帰るぞ、2人と1匹」
肩紐をばたつかせ、リュックが跳ね回った。
「1匹だってよ、可哀想に」
レビがため息混じりに、冷たくあしらう。
「……あんたよ」
リュックは口をパクパクと動かし、考え込んだ。
「俺様は……1匹?…1個?どっちだー!!」
緊張の糸が、ふっとほどけた。
夜風が頬を抜ける。
ナユタは塔を振り返った。
天使とドローンの群れは、遠い壁のように見えた。
その肩に、ルシファーの手が置かれる。
黒い羽に触れたあの日よりも、ずっと暖かかった。
ナユタはまだ知らない。
探している黒い翼の正体を、この男がすでに知っていることを。
塔は黙したまま、遠くで光を脈打っていた。
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