4-4 「涙と一枚の羽」
ナユタは、羽を拾い上げた。
黒い羽は、静かに揺らめき、じんわりとした温もりを返してきた。
指の奥まで染み込んでいく。
──あたたかい。
それだけなのに、心臓の奥がじくじくと熱を持ちはじめた。
知らない誰かに触れられたような、不意打ちの感触が心を揺らす。
ナユタは動けなくなった。
羽を包み込む手が震える。
視界が滲む。
涙が頬を伝い、羽先に落ちた。
ナユタはそっと瞳を閉じた。
過去の景色が巡る。
「……なんで……」
胸が痛い。
思い出せない……わからない。
鋭い視線、抱かれた暖かさ、ただそれだけ。
どうしようもなく涙が溢れた。
ルシファーは一歩も動かず、その様子を見つめていた。
何も言わない。
ただ、静かに。
レビが歩いてきて、ナユタの前に立った。
彼女は何も言わず、小さなハンカチを差し出した。
白地にちょっとだけ赤い刺繍が入った、それは日常の一片のようだった。
「……ほら、泣きっぱなしは格好つかないでしょ」
ナユタは一瞬、戸惑った顔をした。
それから小さく頷いて、その布を受け取った。
涙を拭うと、ハンカチの柔らかさが指先に残った。
リュックがジッパーを鳴らす。
「泣き顔なんて似合わねぇぞ」
ナユタは鼻をすする音を立て、涙を拭きながら歩きはじめた。
足音が静かな路地に溶けていく。
静寂が満ちる中、ルシファーが視線をナユタに向けた。
「また来る」
レビは小さくうなずいた。
「……うん」
リュックは肩をすくめ、「おうよ」と鼻を鳴らす。
泣いた顔を照らす太陽は、ただまっすぐで、優しかった。
静まり返った路地の先には、アンダーグラウンドへ続く階段が口を開けている。
ナユタの掌には、羽とハンカチの余韻が、確かに残っていた。
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