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7.『藍』の魔女

すみません収拾がつかなくなりそうなので、エピソード7,8は猛ダッシュで進めていきます。

と言うわけで、昼過ぎにあったあらましの報告を終えた。こっそりと例のブツも魔法で透明人間になって拝借してきた。


この3日間王城内を歩き回っていたけど怪しさ満点だったのはヤクの話のみだった。

あとは陰謀論が少々だがこれは関係ないだろうと省く。


「ご苦労様、これで初任務はおしまいね。

1ヶ月くらい続くものだと想定していたけど案外尻尾を出すの早かったわね、これで順調に任務を消化できるわ。私の肩の重荷も少し軽くなったかな〜」


それなら笑ってくださいユリア先輩。私暗殺の方に行きたいんですユリア先輩。あとアルカイックスマイルしている時の表情筋がピクピクしてきて辛いです。


今日も考えに考え抜いた末の闇魔法で作った花束を氷で凍らせてユリアが持った瞬間に砕けて鳥になって羽ばたいていくという渾身の演出は笑ってもらえなかった。


ユリアのために考えた何通りもの驚かしバリエーションは宴会ネタに使える以外は用途がない。

感心するのではなく笑ってほしいよユリア先輩、とは口に出さずにお礼を言って今日の仕事は終わり。


いつも通りレバリーに行く。多忙を一つ切り抜けた達成感からか心なし足取りが軽い気がすると思っていたら実際に軽くなっていたらしい。


「あら今日はご機嫌ね、仕事がうまく行ったの?」

艶やかな黒髪のお姉様が話しかけてくれるのでにっこり笑って何度も頷いた。


「珍しい、アイが笑ってるわ。でもあれ他のお客サマとお話しした途端に真顔に戻るのよね…なんて勿体無い。」「ね、本当にもったいないわよね〜」

他のお姉さまも口々に何か言っているがスルーしておこう。


黒髪のお姉さまは頭を撫でて褒めてくれた。

今日はストレートヘアにしているので多少崩れても水でぱっぱっと直せる簡単ヘアスタイルである。

多少ボサボサになっても良いこともあってお姉様は今日は長めになでなでしてくれた。


お姉様とのスキンシップは落ち着くものがあって、機会があったら喜んで撫でてもらっている。

お姉様も嬉しそうで私も嬉しい、良い方の相互作用があるスキンシップとなっている。


「今日はご機嫌だねアイちゃん!俺も女房が珍しくご機嫌だったもんだから酒が進む進む!!」

ガハハと笑いながら日本酒とハイボールを交互に飲んでいるおじさんにみんなは呆れた顔をした。


「あんまり飲んでると奥さんまた不機嫌になるわよ。そろそろそれくらいにして日頃のお礼でも伝えた方がよっぽどいいと思うわよ?」

違えねえ!と笑いながらお酒を飲んでいるおじさま。


追加注文しない辺りお姉様の言葉を有言実行するのだろう。素直でいいおじさまだ。



こんな賑やかな楽しい仕事をこなし、退勤後に市場で任務を終わらせたご褒美に好物のチョコを買って帰った。

ウキウキで1日を終わらせ、心の中はニコニコで今日もユリア先輩を笑わせにいく日課を過ごした。


「次は街中でこの服を着て調査してきてちょうだい。そうね、1、2週間ほどで情報は出てくるんじゃないかしら?


件のヤクの件を意図的にばら撒いたから、熱烈な奴らがわんさかくると思う。殺さずに捉えて王城の地下牢に放り込んどいて。


情報が出たら切り上げてすぐに報告。私と調査に向かうこと、以上よ。」


お貴族様に雇われている人が着るような、一般的なメイド服を手渡されながら任務内容を言われる。

諜報で学んだスキルで会話を引き出しあの件に引っかかる話題が出たら報告すること、と言う意味だろう。


大人しく着替えて商店街に向かう。王都は平民街、貴族街、スラム街に分かれていて、平民街と貴族街の間に商店や居酒屋が乱立している。


どうやら重要な手がかりが見つかって、証拠集めをしているようだ。王城よりは気さくにできるし、接客ならお手のものだから幾分楽で安心した。


早速茶髪茶目になってからメイド服に着替え、街へ向かった。


初めて王都に踏み入れた時は魔力枯渇で行き倒れかけていたから記憶がほとんどないし、それ以降も寮とレバリーを行き来するだけで他は何もしていなかった。だから王都の街並みを歩いたのは今回で初めてだ。


内心ウキウキしながら街の品揃えを眺める。

平民街、貴族街には新鮮な香辛料や食材達が豊富に並んでいる。綺麗な布や服も売っていてとても盛況なようだ。


あたかもご近所さんに接するかのように気さくに話しかければすんなり答えてくれた。


「お疲れ様、今日も豊富な品揃えね。ここ最近は香辛料が多く出回っているみたいだけど、そっちの国は潤ってるの?

うちの旦那様が飽き性で何か珍しいものをご所望なのよ。この辺で見ない香辛料とか布地だったら良いんじゃないかなと思って。


何か珍しい商品の噂とかない?」


「お疲れさん。ああ、アヴァメリ国からの輸入品の香辛料や布地を扱ってる店に行くといいよ。あっちの水色の天幕の店が最近人気の店だよ。


旦那様のご機嫌とっとかなきゃあとが怖いもんな、しっかり品定めしとけよ。」


ありがとうと言って別れ、離れた店にいくつか同じく探りを入れるがどれも水色の店の話題だった。

手ぶらで行くのも怪しいなと思い、いくつか美容にいい商品や食料、布地を買ってから人気の店へ足を向けた。


「こんにちは、何かおすすめの商品とかない?

飽き性の旦那様のために色々好みに合いそうなものを探しているのよ。」


品のいい従業員が出迎え、丁寧な挨拶で話しかける。

「いらっしゃいませ。

ここはアヴァメリ国から輸入してきた珍しい布地や工芸品を取り扱っていますよ。

宜しければこちらの洋服等はいかがでしょうか?


シルクの布地に銀の縁取りを入れて月花を袖口にあしらったものです。裏地には縁起の良い月桂樹の葉を入れ、色合いも夜会や舞踏会などにぴったりの品ですよ。」


見るだけでわかるくらいの最上級の品だ、ここで1番高いものだろう。残念だけど服が目的ではない。

「とても素敵ね。あら…私の持っているお金だと少し厳しいからまた今度購入するわね。


何か少し高めだけど良いものってないかしら?そうね…アクセサリーとかは他のメイド達も用意してそうだし、香辛料とかはある?」


「こちらの棚に香辛料の取り扱いはありますよ。

ですがこれと言って珍しい品は今は取り扱っていないですね。


大体7日に1回、5日後くらいに商品を入れ替えるので普段のお買い物のついでに良いものが決まるまで通われるのはいかがでしょう?


もしかしたら別の日に良いものが見つかるかもしれませんし、今日1日で決めるものでなければ是非、また見にいらしてください。」

丁寧な礼をして話してくれる店員さんはとても親切だった。


また来ますと伝えたあとは市場を出て貴族街に向けて歩く。裏路地でささっと荷物を収納魔法でしまい込み、次は婦人服や紅茶を取り扱うお店を見て回った。


特にこれといった噂はなく、薬が出回っていると言うのも公に広まってはいないようだ。

あまりいろんな店をフラフラと回って顔を覚えられても困るから、今日の街歩きはやめにすることにした。


夕方に諜報部隊へ帰り、報告を終わらせて少し早めに帰宅する。

ユリアには道中で買った評判のいい化粧水を渡したところ、喜んではいたけど笑ってはくれなかった。贈り物をしたいだけだったため表情は特に気にしなかった。


のんびりシャワーを浴びて夜の仕事へ向かった。仕事を終えてからも特に何もなく1日が終わり、噂の巡りも遅いのかなと思いながら帰路に着く。




それから1週間は何もなく日々が過ぎて行った。

相変わらず出勤退勤時間にユリアに仕掛けるが笑ってはくれないし、街に出ても情報は一切なし。

唯一あるのは水色の店の店員さんと仲良くなって目から離れなかったルベライトのピアスを自分用に買ったくらいだ。


それから3日後、レバリーでの仕事終わりに変化は起きた。いつも通り裏口から出て寮に向かっていると、頭上から2人、後方に1人、左右に1人ずつ、前方に1人音もなく襲いかかってきた。


気配で察していたため、危なげなく順番に避けて闇魔法で全員捕え服をひん剥いてから、魔法で地下牢へ吹き飛ばしておいた。


そんな不届きものと戯れる日が1週間ほど続き、服をひん剥いては地下牢に放り投げそろそろ地下牢も人が入らなくなるんじゃないかなと思っていた頃に悪い方に変化が起きた。私にとって最悪の事件だった。




その日は珍しくレバリーで早上がりを促されて、いつもより3時間ほど早く帰宅した。

早めに帰ってきてもやることは特になく、今日は特別に湯船へ浸かって久々にゆったりした時間を堪能した。


気分よく上がり全身に乾燥魔法をかけてベッドで明日情報収集をするための巡回チェックリストを眺めていたら、ふと空気が収縮し、瞬間に辺り一面が爆発した。


咄嗟だったせいで自分の周りしか防御結界を作れず、一瞬で周りが瓦礫の山になっていた。

幸い寮には私しかいなかったためほっとしたけど、息を整える間もなくまた離れた場所で爆発音がした。


煙が立ち上ったのはレバリーのある辺りだった。


周りの瓦礫を魔力の圧で吹き飛ばし、全速力の浮遊魔法を使い必死で煙が立ち上った先へ向かう。魔力の消費量が膨大でも惜しまずどんどん浮遊魔法へ注ぎ込む。


私の家はこの寮で、私はオーナーとお姉様方を大切な家族だと思っている。


あの時拾ってくれて親切にしてくれたオーナーと、何も知らない私にいろいろなことを教えてくれて、悩んでいたら相談に乗ってくれたお姉様方を失う恐怖に苛まれる。


妹を遺して逝ったあの時のように冷や汗と動悸が止まらない。とにかく早く着くことだけを考えて進んだおかげか1分くらいで着いたけど私にはとてつもなく長く思えた時間だった。


職場のある場所へ飛び降りて周りを眺めたけど、レバリーのあった面影はなくあるのは瓦礫の山だけだった。


声をかけようとも思ったけど周りにまだ爆発を仕掛けた輩がいたら厄介だから、気配を潜めながら魔法を行使する。


感知魔法で生きている人を探しつつ、すぐさま風魔法で瓦礫を安全な場所に吹き飛ばし、反応のする方へ飛んでいく。


瓦礫の先に見えたのは複数張り合わせた防御結界だった。魔力を補い合いながら張ったのだろうそれはなんとか形を保っていたみたいで、すぐに消えてしまった。


座り込んでいる人も複数人いたけど、お姉様方は全員無事で、来ていたお客さん数名も無傷なようで心底安心した。だけどオーナーの姿が見当たらなくて血の気が引いた。


私の姿を見てお姉様達が駆け寄る。

「無事でよかった!あんただけ先に帰らせてごめんね。本当にごめんね…」「良かった、あんたの姿見るまで生きた心地がしなかったわ。怪我はないの?」


「無事でよかったわ。というか、あの瓦礫の量吹き飛ばしたのすごいわね貴女…本当に人間技なの?私たち防御結界で瓦礫からみんなを守るのも限界ギリギリだったんだけど。」


いつものお姉様方が暖かく迎えてくれて少し血の巡りが良くなった気がしたけど、オーナーのことが気がかりでならない。


「お姉様方遅くなってごめんね、みんな無事でよかった。怪我あったら言ってね、治すから。ところでオーナーは?オーナーは無事?」

私が早口で言うと、お姉様方は優しく返してくれた。


「みんな擦り傷とかだから大丈夫よ。

この防御結界オーナーが張ってくれたんだけど、みんなの魔力で安定させていて欲しい。


アイがもうすぐ来るからそれまで頑張ってって言ったあと瞬きした瞬間にどこか行っちゃったのよね。」


「わかった、オーナーが心配だからすぐ追いかけてみる。」

お姉様方に伝えつつみんなを守るための結界魔法を作り、これには魔力を使わなくていいと伝えながらヒールを素早く全員にかけた。


魔力探知を行い、また全速力の浮遊魔法でオーナーの痕跡を追いかける。

5分ほど路地裏を巡り貧民街の端の方で痕跡が無くなった。


周りの音を収束して探知魔法をかける。

地面の下、地下のような場所に7人いるようだ。

出入り口を探している暇もない、早くオーナーの行方を探したい一心で闇魔法で影に溶け込み地面の下へ侵入する。


7人がいたのは拷問部屋のような場所だった。

そして、そこにいたのはオーナーではなく隊長だった。

どうやら6人を捕まえて尋問を行っていたらしい。もう終わったらしく、6人は縄でぐるぐる巻にされて床に転がっている。


音もなく影から出てきて隊長に尋ねる。

「突然すみません、この辺りに長身で茶髪の男性は来ましたか?」


隊長は私に気付いたようでこちらを振り向いた。

「アイさんでしたか、無事でなによりです。


先ほど話をしていたのですが、どうやら行き違いになってしまったようですね彼なら無事ですよ。

実は彼と私は親戚でして、諜報部隊も懇意にしている店なんですよあそこ。


だから今回狙われたんですかね…お客様もいるところでドンパチやって報復がいつもより酷くなると想定もできないのですかね。


それにしても職場も住む場所も同時に無くなるとはなんとも悲惨ですねえ。


ああ、住む場所にあてがないのでしたら諜報部隊の宿舎に泊まられてはいかがでしょうか?少し狭いですがふかふかのベッドがありますよ。


あと宿舎にいれば身分証明する必要がないので、休日に書庫の本を読み放題ですよ。」


「そっちに行きます!いや行かせてください隊長!ありがとうございます!!」

食い気味にお礼を言い、今までで1番綺麗なお辞儀をした。


床一面が赤い液体でコーティングされていて、隊長の服もほぼ赤く染まっていることも顔や手に液体が飛んでいることも気にせず前のめりになって宿舎の場所を尋ねた。


逆に隊長から大げさに避けられたが気にしない。

早くていいと承諾を得て早速今日から移り住むことにした。


一旦レバリーに戻り、お姉様と会話していたオーナーと会い、これからのことを話し合ったあと宿舎に移ることを話した。


いつになるかは分からないけど、レバリーはこの場所に再建するらしい。それまではみんな別の場所でそれぞれ働いて、再建が終わったら戻ってくると聞いた。


またみんなと働けることが決まって、心がポカポカ温かくなった。


なんとしても今回の襲撃犯を懲らしめて、2度とレバリーに攻撃を仕掛けようなんて愚かなことは考えないように教えなければ。


一通りみんなが落ち着いたところでそれぞれ解散となり、私は荷物を持ちながら浮遊魔法で宿舎に向かった。

レバリーから寮までは徒歩20分ほどです。

浮遊魔法で2分ということは、アイの歩く速度を時速6キロほどとすると全速力の浮遊魔法は時速120キロになりますね。


アイは箒も何も使わないため手ぶらの生身で120キロ…さながら高速道路を走っている車ですね。

生身で120キロのスピード出すの怖すぎる。

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