12.『赤月』の魔女
体調不良が続いて急いで投稿したので内容が噛み合わなかったり文章が拙かったりしています。
気づき次第訂正を心掛けますが、読みにくい箇所もあると思います泣
久しぶりに魔女としての力を使ったことで疲労困憊に陥ってしまった。目が覚めたけど大量消費し魔力枯渇を起こした身体が重くて、暫し天井を眺めて意識を覚醒させることに努める。
起こしてくれると言っていたし、今日は遠慮なく甘えさせてもらうことにしよう。
マルハロ国に近い魔物の森入り口付近に構えているこの店は依頼があれば何でも調合する薬屋を営んでいる。最近は付近の村の何でも屋と化しているが。
何もかも疲れ切ってフラフラになりながら彷徨い歩いた末にたどり着いたのがこの場所だった。
魔物の森でありながら周りの瘴気は浄化され、妖精が好んで住んでいるためか辺りには祝福が満ち溢れていた。
妖精たちが楽しそうに歌い話す声に自然と心が安らいでいき、妖精たちも私が来たことに特に不満はないのかそのまま新しく来た住民のように接してくれる。
この場所だけは私を受け入れてくれているような気がした。十数年振りに心が安らぐ気がした。
初めは家を建てようと決めていたけど、この地の妖精達へのお礼ができないため、幼少の頃からの趣味を活かしてこの地に店を開くことにした。
妖精たちに許可をもらい、一晩で店を建てたら近くの村の人たちに大いに怪しまれてしまったのは盲点だった。
最初の頃は魔物が人間を店に誘い込ませるためにできた罠だ、薬がなかなか手に入らない地域に高額で売るために来た悪徳商人がやっている店だ。
人間が材料の薬を作るために人攫いしやすい辺鄙な店にしているんだ、等々散々言われながら経営していた。
最近は薬の効能が良いところが認められたのか常連客ができてお忍びで来た貴族から高額依頼を受けるくらいまで商売が成り立ってきた。
経営が安定して来た頃から珍しいお菓子や蜂蜜、キラキラした屑石、たまに雑貨などを日頃のお礼として妖精に贈り物をしている。
たまに妖精達からリクエストされる物を集めに行ったり接客をする等、穏やかな日々を過ごしていた。
その日もいつも通り穏やかな日々を過ごすはずだった。
倉庫を見に行くと先ほど調合した虫除け薬の分で魔物の森に自生する薬草が切れていたため、採取に出かけていた帰りにこんな拾い物をするとは思わなかった。
四肢の半分が千切れ、もう半分がかろうじて繋がっている状態で呼吸をしているのが不思議なほどの物体。服はほとんどがドス黒く染まっていてどこが服なのかさえも判別できないくらいぐちゃぐちゃだった。
清浄魔法をかけると顔部分が認識できるようになり、黒髪の女性だと判別できた。このまま放置しておいたら30分ほどで生き絶えるだろう。
タイミングも悪い方で重なってしまった。
今日は依頼が少ない日で倉庫に薬草はあるけれど薬の在庫が無く、手元の薬草も回復系統は採取していない日だった。
幸いここは魔物の森で、他の場所では考えられないほど薬草となる植物が自生している。
ただし効能は強いが身体に攻撃を受けているんじゃないかと思うほど不味い。
この女性には瀕死のところ気の毒だが、回復するけど追い打ちをかけるような不味さで有名なマロの実を味わってもらうことにする。探知魔法でマロの実を探し、風魔法で手元へ運んだ。
顔を上げ口を開けさせたらマロの実を突っ込む。
反射的に咀嚼したことにより声にならない悲鳴を上げながらなんとか意識を取り戻したようだった。
自分用に持ってきていた負荷軽減薬を飲ませたらとりあえず私の家まで運んで、できるところまで治療することにした。
道中使えそうな薬草を探しつつ家に着いてから女性を寝かせて保管していた薬草を持って急いで先ほどの部屋に戻ったら、ベッドを肉塊が蠢きながら覆い尽くしている光景は誰が予測できるだろうか。
脳が処理しきれなくて一旦思考が停止された。
何とか現状を飲み込み魔法で肉塊を調べたが、それ自体に悪意はないようだしとりあえず様子を見ることにした。
肉塊が消えてから使う予定の回復薬を黙々と作る視界の端にもぞもぞと蠢く肉塊がある光景はきっと私の長い人生でもこれが最初で最後になるだろう。
見慣れない人が見たら気絶するほどの衝撃映像を目にしている自覚はある。
私にとっては魔物を狩っているとよく見かける光景のためあまり気にせず黙々と魔法薬を作っていき、気づけば夜になっていた。
そのまま軽く夕飯をとって寝る前に彼女の部屋へ再度様子を見に行った。すると先ほどまで蠢いていた肉塊は消え去り、未だ眠っている彼女は身体が綺麗に元に戻っていた。
肉体の再生という能力は高位の魔人のみが持っている。
魔人であるはずの彼女は死にかけだったことが原因なのかは不明だが特に敵意はなく、魔法を発動する気配もなく終始されるがままだった。
意思疎通もとれ、尚且つ瀕死の状態でも人型を維持している魔人は四天王クラスに値する。
魔物でも小さな魔物や人語を理解して理性的に動けるものも少なからずいる。ただしそれらはごく稀にしか存在しない。
特に魔王の血を得た魔物は主への忠誠心が高く、自分の意思より人間を滅ぼすという主への大義のために動くはず。
滅ぼす対象である人間とまともに会話して助けられて部屋で寝かされるなど主に篤い忠誠を誓った魔人にとっては死より辛い拷問となることだろう。
会話が通じるなら手伝って欲しいことがあるため、友好的なら良いにこしたことはない。
もし攻撃してきたとしても転移魔法で大海原の真ん中に落として、私は隠蔽魔法で姿を眩ませながらまたどこかへ逃げれば良い。
いずれにしろ大きな拾い物をしたものだと思いながらそのまま部屋で寝かせておき、自分も部屋に戻り眠りにつく。
一般的には魔物の森にいた時点であの森へ放置しすぐさまその場を離れることだろう。
しかし私の大好きな姉だったら、魔物だろうが憎き人間だろうが助けただろう。だから私も助けた、ただそれだけ。私の場合は助けたお礼をきちんと返してもらうけど。
2歳しか離れていないのに私のために一生懸命頑張って守ってくれていた。自分は愛なんて貰えなくて寂しい思いをしていたというのに、私には一生懸命に愛をくれた人の背中を見て育った。
あの日何も知らない私はそのまま国を出て国境を超えた先で気を失った。気づいたら全く違う遠い国に転移させられていた。
各国を転々とさせられたけれど結局最初から最後まであの国の道具として扱われた。
血を吐くような日々を過ごしていても見失ってしまったあの立派な背中をいつか、今度こそ抱きしめられるように必死で追いかけて、追いかけて、追いかけたけどその先にあったのは大切な人だけがいない空虚な世界だった。
真実を知るあの時まで姉が愛してくれていた人間としての私を保っていたが、それを壊してきたのは人間だった。
視界が真っ暗になりこれが絶望かと納得していた私の元へ一冊の本がやってきた。
自分の主と決めた、ただ1人の魔女のために綴られた本だった。
対象以外が見たら空白の本だけど、私にとっては大事な本だった。人間の皮を脱いだ私は迷いなく本を手に取り魔女となった。
そのあとは殺戮機械宜しく文字通り国全てを真っ赤な炎に染め上げた。
全てが燃え尽きてただの大地となっても私の消えない怒りと憎しみを表しているのかあの大地は永遠に炎が消えることなく現在も絶えず全てを燃やし尽くしている。
ぼーっとしていたらすこし魔力が回復してきた感覚がする。とりあえず疲労回復の魔法を唱えようと身体の向きを変えたら、ふと机にある開きかけの魔法書が目に入った。
あの激しい炎に魂を包まれた女性に使った魔法薬は禁忌として燃やされたはずの魔法書に描かれていた1つ。
魔法書と言っても使用を禁止するだけのもので、魔法陣を描くだけなら処罰の対象にはなり得ない。
人間であれば禁忌対象の魔法陣に魔力を流すと体内の魔力回路を破壊されて2度と魔法が使えなくなる。
魔女なら魔法陣を書き換えられるから何も問題はない。
禁忌として封印される理由は多岐に亘るけど、主な理由は人間1人では決して扱うことのできない魔法だから。
国家間で決議して滅した数々の禁忌魔法には3つほど共通して当てはまることがある。
1、魔法陣に魔力を捧げる生贄を必要数用意することで使い方次第では国一つ滅ぼせる強力な魔法であること。
表向きは非人道的で神が愛した人々の尊い命を無闇に失いたくないからとしている。
そこまで規模の大きいものは魔女が作成した魔法になるため、魔女より自国が優れていると誇示したいという理由が本質。
2、魔法陣に必要な材料が魔女の血であること。
魔法陣の材料として魔女狩りが行われたが1人目の魔女が火刑に処された時、王侯貴族も魔女と共に灰になり灰が飛散した土地は二度と作物が育たなくなったという伝説がある。
魔法一つと引き換えに国を犠牲にするのは割に合わないと禁止された。
実際は魔法陣の作成に使う血は高濃度の魔力を保持した者であれば人間でもそれ以外でも問題はない。
これは元の魔法書に書かれている内容で、全て魔力で編んだ文字を用いられているため、ほとんどの人間は読み解くことができず全て魔女の呪いだとして禁止した。
3、この世界の国にはそれぞれ崇拝している神がいる。そして魔物や魔女は背教者で異端である。
特に魔女の魔法はこの世界の理を変えかねないものもあり、そのような魔法を使うのは神への冒涜だと定められた。
神への崇拝はどの国の建国史にも書かれているほど重要なものとされている。
各国の歴史書を捲ると真っ先に目に入るのがこの一節。
建国史第一節 <誕生>
神は始まりの創造主であるが、特に人間を愛していた。そのまま神界で愛でていたいと思っていたが人間は神界に耐えられる力を持っていなかった。
神は人間に無償の愛を授けた。下界に人間が住める豊かな大地を創った。神が愛する人間同士で争うことのないようにと秩序と理を授けた。
神が与えたもうた寵愛は尽きぬというのに人々は絶えず紛争を繰り返す。
死と憎しみに塗れたこの世界を憂いたもうた神は人間が一丸となってこの世界を愛せるよう試練として魔物を、重罪を犯したものには神の怒りとして人の理から外れる印を付け魔女と名付けた。
こうして世界は神のご意志を汲み取り、無益な争いを止め人間同士の無意味な諍いを止めたのだった。
魔物という脅威に対抗するため人々は手を取り合い、今日も神に感謝を告げ国を愛し、世界を愛し、ただ神座に還る時を待ち侘びるのだった。
— 建国史第一節 完 —
それぞれ崇拝している神の御名は異なるけれど、どの国も一文違わず同じ言葉が引用されている。
建国史を思い返すたびにレゲリア聖王国が滅ぶまで戦争を続けていて、よくもこんなお粗末な歴史書が作れたものだと感心してしまうことが癖になりつつある。
世界の断りを捻じ曲げる禁忌魔法を各国が戦争で乱用するあまり世の理に触れたため大地や空が歪んで亀裂が入ってしまい瘴気が発生し、空や大地の裂け目から魔物が生まれた。
今も深淵がこちらに向けて手を伸ばしているのを何としてでも抑えようと聖女を消費して何とか食い止めているがこれも持って100年だろう。
世界の終焉を認めてしまうと神が人間を深く愛しているという民の信仰心を破ることになってしまう。
空が割れる所を見せるのは何としてでも阻止したかったのか結界魔法に長けているものを聖女と呼ぶことにして人柱にし、一時の休息を得ている。真実を闇に葬り去ったのが国家や教会の中枢にいる人間だった。
レゲリア王宮書庫にある禁書や歴史書は必要なもの以外全て灰にしてしまったが、きっと世界が滅ぶ寸前まで他の愚かな人間達は是が非でも隠し通すのだろう。
そういえば黒髪の彼女はやるべきことがなくなったと話していた。私も11年前、いやそれよりも前に失っていた大切な人がいるから気持ちがわかる。
2年前までの私のような雰囲気をしている彼女を見て放っておけなくなってしまった。
彼女は魔物だけど、誰よりも人間だと言えるような姿を見てついあのような提案をしてしまった。
何より彼女を見放したら私の大切な人に叱られてしまう。たとえもうこの世にいないとしても絶対にあの人を後悔させるようなことはしないと決めた。
孤児院にいた時お姉ちゃんが私にしてくれたように、彼女が再び歩み出せるまで私は少しの手伝いをするだけ。
真実を知っているのは私だけ。客が来ても魔法でどうとでもできるから、彼女が魔物でも何ら問題はない。
私としても人間よりは魔人の方が雇うのに抵抗がない。
牙を向くものは容赦なく塵にするが、友好的なものは人間より余程賢いためお互いこの森で仲良く暮らしている。
魔物にこれほど有効的なのは私の生まれながらの体質が影響しているからだった。
私の母は生まれつき魔女であった。赤ちゃんの時から魔法の知識が備わっており、2歳の頃に崖から落とされたが生まれつきの魔法のセンスで生き延びた。
ある程度魔物たちから話を聞き人の常識を学んでからは普通に人に紛れて生きていたが、親から与えられるはずの愛情や情緒というものを知らなかった。
それを気にすることもなく魔法知識ばかり求めたせいで私たちが生まれても何の感情もなく、ほとんど世話は魔法で済ませていた。
私たちを置いて行ったあの日も国立図書館の司書をやっているから禁書庫も見ることができると誘われ、母はまんまとついて行き、戻ってくることはなかった。
連れられてすぐ火刑に処されたと歴史書に書いてあったから戻れるはずもないだろう。
私は母の魔女の遺伝子を継承していたらしく、魔法の知識と魔力を生まれつき持っていた。
私を愛してくれる姉という存在がいたから、姉の笑顔のような花々や綺麗な薬草の知識を求めた。
たまに仲の良い花屋さんからもらう花を姉に渡した時の笑顔と手元に咲き誇る花が好きだったから。
私が自分の名前を好きじゃ無いことを理解してくれていたから、ずっと私の好物のザクロを名前として読んでくれていた。お姉ちゃんは特に名前を嫌っていなかったけど私に合わせて愛称で呼ばせてくれていた。
幸せな思い出に浸っていると黒猫がトテトテ部屋の壁をすり抜けて入ってきた…と思ったら
「ご飯できたよーーーーーー」
家が壊れそうなくらい盛大なアラーム機能が搭載されていた。
魔物と魔人の違いは四足歩行か二足歩行かの違いという設定にしています。強さの差は特にありません!




