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“大銃壊”−その日、空から銃が降ってきた−   作者: 秋浦ユイ
草山樹太朗篇 8時25分〜10時32分
7/19

EP;5

「さあ、ようこソ……」

 

 七三分け男が率先して、鉄の扉を開き

 古びた金具のキィーンと鈍い音が聞こえる。


 男は勝手に閉じない様にか鉄の扉を支え

 僕を扉の向こうへと無言の圧力で歩かせた。

 

 アンナはびっちりと僕の横に付く。


「此処がワタクシ達の拠点さ

 君達まず銃の部品を仕分けてくレ」


「その前に……靴を履きなさい……」


 金澤は近くに置いてあった

 靴を僕に差し出した。


「奥の仕切りのある場に行けば、何をすれば

 いいか、分かるはずだヨ……」


 そして部屋の奥の方へと指差す。

 そこは部屋の最奥であり、沢山の銃器が積まれているのを見て取れた。


「ワタクシは()()()()()()を見てくるとすル」


 七三分け男が、一方的に打ち明ける。

 彼の方へ振り返ると、踵を返していた。


「古都さん、彼を宜しくネ……期待しているヨ

 もし、君も不自然な動きをしていたら……

 勿論分かっているよネ――」


 閉じていた扉を再度、慣れたように開けて

 ゆっくりと、部屋を後にしたのを確認した。

 ドンッと扉が閉じると僕らは、無言で歩き出す。

 

 空間は学校の体育館ぐらいの広さで

 人が溢れかえっている。


 部屋を直進していくと仕切りが置かれていて場所毎に作業や用途が違う事が窺えた。

 

 僕は貰った靴を履いて、足踏みした。

 裸足と違って矢張り歩きやすい――


 僕が靴を履いたのを確認してアンナは

 一緒に奥の方へ歩き出す。


「……すげ……」


 地下室を眺めて感嘆な声を漏らしていた。

 家のとは全く大きさが違った。


「人々は此処に砂漠のオアシス的な感じで希望を感じているんだろうね……」


 アンナは、僕と同じ歩幅。

 そして何か寂しさや孤独の様な闇を含んだ、感情でアンナは僕に話す。


「んでも――悪魔と契約しないと

 そのオアシスには居られないのも現実

 皮肉って、こう言う事に言うだね……」

  

 薄明かりのランタンが数メートル間隔で置かれて、歩く度に二つの影が蠢く。

 その影とアンナとの話し声に避難者らは

 気付いたのだろうか


「って言ってもアタシも拠点に入ったのは

 初めてなんだけどねぇ」


 アンナは語尾を伸ばした。

 拠点に入るのが初めて……か。


 仕切りの板から覗く目線。

 ヒソヒソと呟く声。


「そ、そうなんだ……」


 決して僕らに声を掛ける事はなく

 歓迎されていないのだとさえ、思う。


 だが決して、そう言った負の感情だけではないのも理解している。

 全部は“支配者”による自己中心的な

 “支配”による物なんだと思う。


「てかアンナ……あの人、なんなんだ?

 シリアルキラーって奴だろ!」


「っ……ンハハ!」


 アンナは不意に弾けて笑った。


「樹太郎〜正直すぎ!

 んなのアタシも分かってるし皆んな思ってるよ」


 神尾さんの時と同じ様にアンナは

 鳥籠から放たれた小鳥みたいに元気になった。


 本当に奴の前で装っていたんだと、感心する。


「そ、そっか」

 

 感心と言ってもアンナの生存本能的な部分にだ。

 それは、昔から身に付けていた処世術なのか

 未曾有の事態に土壇場で習得した物なのか……


「あの人は金澤って野郎でさぁ〜

 最初良い人そうだなあって思ったんだけどなぁ

 ……んでも違った……」


 気付けば、空間の最奥まで来ていたみたいだ。

 アンナはダルそうに肩をすくめている。


「……樹太郎」


「ん?」


「ごめん……マジごめん!樹太郎と、あの人に銃向けた事とか!金澤(アイツ)の前で、ずっとスカしていた事とか!」


 アンナは誠心誠意、謝罪する

 綺麗な90度を作りながら、何よりも強く。


「全部アタシの弱さだ、支配されてんのも、ずっとずっと自分を着飾ってるのも……全部――」

 

 顔を挙げて大粒の涙を、ポロポロと流す。


 そうだよな……辛かったよな。

 痛かった、よな。

 だって自分自身の心を押し殺してるんだから。


「こうしてギャル演じてんのも……全部」


 壊れそうな、消えてなくなりそうな声だ。

 ヒクヒクと体が震えていた。


 どんな声を掛けるべきなのか……安易な言葉を掛けるにしても、彼女を傷付けるだけ。


 でも、自分自身を……

 今までの自分を否定しないで欲しかった。


 “人間なんて演じて、なんぼ。

 だから大丈夫”


 そう声を掛けたらアンナは、どう思うかな?

 傷つくのかな?安心するのかな……

 僕の本音は“アンナは悪くない”そういう事。


 確かに彼女にキツイ言葉を吐いてしまった時は、苛立ちがあったけれど……。


「ごめんごめん、ごめんね樹太郎……あの時

 『煩い』って言われた時、やっと自分の醜さに気付いてぇ……」


 止まらない涙の数だけ時間が進んているみたいだ

 僕も辛くなる。


 ――違うって……アンナのせいじゃない。


「ごめん……」


 ――ちがうよ……


「え……じゅ…………たろう?」


 どんな声を掛けるのが正解なのか。

 これ以上、傷つけないように。

 今、欲しい言葉を行動。


 僕は咄嗟にアンナの手を取って握った。

 彼女は困惑していたけれど

 何も言葉が出てこなかった。


 どうして、そんな事をしたのか分からない。

 それでも、何か気持ちが冷えていたなら


「地下って――寒いな、アンナ……」


 ――温めるべきだって、想うから。


「……うん……」


 急な僕の行動を経て気持ちが落ち着いたのか

 涙が止まっていた。


「子供みたいに泣いちゃった……なんか、色んな事を考え出したら涙、出て止まらなくなってさ」


 涙目、顔が涙で濡れている。

 それを僕に向けて歯を見せて笑った。


「……そんな時もあるよな……」


 僕は急に恥ずかしくなって

 手をさりげなく、戻した。


「あ、えと……そうだ早く、此処から出ないと」


 アンナは涙を袖で拭き取る。


「ん、うん……そうだね」



『おい……テメェら早く作業に移れ!』


 そんな時、僕らに怒号を飛ばし作業場から

 男がやって来た。

 大柄でタンクトップ姿、そしてスキンヘッド。

 正に海外マフィア映画に出てくる人みたいだ。


「っ、す、すみません!」


 彼の気迫も相まって、怯えた。

 このままブタれるんじゃないかってヒヤヒヤする

 だがアンナは然程、怯えずに平然としていた。


「分かりました!

 アタシ達、何すればいいですか〜」


 アンナは陽気な雰囲気と顔を緩ませる。

 大柄の男の横を通り

 僕の手を掴み作業場に身を動かしてくれた。


「そこの机の部品を部品毎に仕分けろ!」


 大柄の男はギロリと濁った瞳を僕に向けて

 言い放った。


「はいはい〜!」


 アンナは軽快に返事をして

 作業場の机に移動し、促されるまま

 パイプ椅子に座る。

 

 僕は壁際で端っこで正面には仕切り

 手元には冷たい鉄の机。

 その上には青のケースに入った小さな部品。

 

 右横を覗くと机の前で作業をする人々が

 ズラリと一定距離で存在していた。


「仕分けって事は同じ物を揃えていけば

 いいんでしょ!」


 アンナが一つ右の机を持って来ると

 僕の机と机をくっつけた。

 

「以外と簡単だよ、多分!やった事ないけど!

 樹太朗なら直ぐにできるんじゃねぇ〜」

 

 そして青いケースを二つドンッと

 机と机の間に置いた。


「え、え?アンナ……?」


 意気揚々と隣に座り

 アンナは青のケースから小さな部品を手に取って

 机に並べていた。


 多分これは銃の部品……だよな。

 僕達以外にも、こうして作業しているし

 銃の解体をする人達もきっと、この空間には

 存在していると思う。


 アンナが集中しているのを横目に、それでも尚

 “こんな事をする目的が何なのか”

 その疑問が一生、頭の中を這い回っていたのも

 事実であり、疑問に思う事は正しいと思う。


 じゃあ、なんで銃を解体して部品を仕分けるのか

 人々に銃を入手させないためか?

 銃そのものを無くしてしまうためか。


「ど!樹太朗できそ?」


「あ、う、うん……」


 目を輝かせてアンナが言い放つ。

 アンナの机を見ると、結構な数の部品が

 並べなれていた。

 大きく息を吹き返したら飛んでしまいそうだ。

 それぐらい細々とした部品達。


「アタシの分、終わったら

 樹太朗の分も手伝うね……」


 アンナの優しい声は太陽のように暖かく感じた。

 陽気で場に暖かさを与える、あの人は

 何処に行っても、そうなんだと思う……


 例えそれが猫被りだとしても

 偽りの物だとしても。


 ――ゴンゴン! ゴンゴン!


『開けなさい、我は主らに交渉を持ち掛けに来た』


 突如、入り口の扉を叩く音が聞こえた。

 地下金庫に居たものは口々に疑問と不安を述べる


 僕らも、机から立ちあがり

 出入り口の方向を凝視しする。

 

 周りからの様子を見るに

 どうやら金澤の仲間ではない

 面識のない人間だと言うことが窺える。


 ――キキイィー!


 擦れる音が煩く思わず、耳を塞ぐと

 鉄の扉が開いたのを目視した。


「我が名はイエスマン!」

 《事象発生1時間32分後 10時32分》

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