表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
“大銃壊”−その日、空から銃が降ってきた−   作者: 秋浦ユイ
EP: Communion 11時〜18分〜12時00分
24/24

EP: Communion

《11時18分》

樹太朗は両親と再会し、自然と抱き合った。言葉がなくとも、胸の奥の思いは深く通じ合う。母の目には涙が浮かび、父は安堵で小さく息をついた。

「樹太朗……元気だったのね……」

「母さん……父さん……やっと会えた」

その後ろ姿を、保科は距離を置いて見つめていた。手には高松の銃。だが、金澤は、その親子に再び迫ろうとしている。


保科の胸の奥で、かつて後輩と話した「正義」の定義が蘇る。


『オレが思うに、正義ってのは、三つ入りのミニプリンを二人で分け合う時に、最後の一つを一緒に食べ合うことだと思う』


そのとき、七尾が保科の元へ駆け寄る。

「撃つんですか……警察官さん」


彼女は警察の制服姿の保科を見て問いかけた。保科はわずかに首を振る。


「いいや、撃たない。奴の罪は――自ら認めさせる」


七尾は少し間を置き、トランシーバーを取り出す。敬語で、避難者たちをまとめ上げる黒岩に呼びかけた。


「失礼します。現在地上では大勢の生存者が――」

その時、金澤が唸り声を上げる。


「ワタクシの計画を邪魔するな!ワタクシの善を踏みにじるな!」


そして近くの信者のライフルを奪い、空に乱射した。轟音と火花が辺りに響き渡る。


保科は小刻みに震え、葛藤する。七尾は焦りつつも冷静に、トランシーバーを操作する。


「黒岩さん、聞こえますか?状況が変わりました!――」


保科はその声を聞き、決意を固める。

引き金を引く――だが、弾は空に向かって放たれた。


「皆!地下鉄へ行け!!生き残りたければ、さあ早く!!」


保科は七尾と顔を見合わせる。

保科の声は樹太朗に届き、彼はすぐに行動に移った。


「父さん、母さん!しっかり!」

「樹太朗……行くよ!」


古都が金澤の横をダッシュで駆け抜け、樹太朗たちのもとへたどり着いた。息を荒くしながら古都は呼びかける。


「奴を振り払わないと!地下鉄に行こう、樹太朗!」


「今は生きることが先よ!」


空は先ほどまで青空だったが、次第に黒く曇っていく。片里は腕時計で時刻を確認した。


11時19分――暗くなる時間帯ではない。


「これ……どういうことだ?」


パクが眉をひそめ、空を見上げる。


「もしや……雨か?」


片里は低く呟いた。


「え?……本当に?」

「ね、ねえ……変なこと言うけど

もしかしたら“二回目の銃落下”……?」


パクが不安な声を漏らしながら問う。


「可能性はあるな……今は逃げるしかない」


片里はパクの顔を見て淡々と答え

素早く声を上げた。


「みんな地下へ!地下鉄へ!今すぐ移動しろ!」

パクが補足する。


「二回目の銃が降ってくるかもしれません、早く!」


近くで路頭に迷っている若者が叫ぶ。

「でも、どの方向に行けばいいんだ?」

「真っ直ぐだ!迷わず進め!」


片里が指示する。群衆は恐怖に駆られつつも、片里とパクの指示に従い始める。


「待って、あの子は!?小さい子どもが一人!」

母親の声が響く。

「僕が連れてくる!」

一人の少年が叫び、手を差し伸べる。

「そうだ、皆で助け合え!」


片里も叫び、パクは肩を叩きながら人々に走るよう促した。次々と駅へ向かう群衆の中で、保科は一人、倒れ込む金澤の元へ歩み寄っていく。


七尾は、そんな保科を呼び止めた。


「警察官さん!地下鉄内へ行きましょう!そこには生存者がたくさんいます!安全ですよ」


だが保科は静かに答える。

「俺には、ケジメを付けるべき相手がいる」

七尾は一瞬迷うが、毅然と答えた。


「っ……わかりました……健闘を祈ります!私は先に行きます!」


金澤と対峙する保科。保科は金澤を見下ろす形で銃を構えている。


「へっ……ワタクシは、元々役に立たない奴だった。世界も、自分も、もう全てが嫌だったんだよ」


金澤は屈したのか、力なく座り込み語り始めた。静かにそれを聞く保科は、依然として銃を構える。


「でも、そんな時に空から銃が降る――

そんな好機が来た……ワタクシは自分を変えられると思った、望む世界を創造できるとね」


声が段々と強くなり、憎しみや悲しみのような感情が保科に伝わり、銃口が震えていく。


「善を振りかざし、意を分け与える。たとえ武力や恐怖であろうと、ワタクシはね……厭わなかったんだ」


保科は固く閉じていた口を開いた。


「やり方は間違っている……お前は罪に値する行為を繰り返したんだ。情状酌量の余地は望むなよ」

金澤は不敵に笑う。


「結局、何も変わっていないね……

ここでお前がワタクシを殺せば

やっていることはワタクシと同じだよ」


保科は、憎しみややるせなさをぶつけるように、強く答えた。


「なら、アンタが変われると俺に誓えよ」


――その瞬間、空からポツポツと銃が降り始めた。

二人は時間がないことを悟る。保科は手を差し伸べて彼を立ち上がらせた。


「駅へ――ここは危険だ」

金澤は走り出す。だが、彼の中に拭えない何かに引っかかり、立ち止まった。


「おい!!金澤……逃げるぞ!!」


次の瞬間、近寄っていた保科を突き飛ばし

自らの運命を受け入れた。


「ワタクシには、これが美しい……

変わらない、ワタクシこそが――」


徐々に銃の雨に押し潰される金澤。その姿を目にした保科は、やるせなさを胸に、地下鉄のホームへと千鳥足で戻っていった。


地下鉄内には既に大勢の人々が滞在していた。保科は人々を見渡すと、樹太朗を見つめる。


「樹太朗、無事でよかった」

神尾が、ゆっくりと足を運んで歩み寄る。

「神尾さん……無事でよかった……」


樹太朗は目に涙を溜めながら、神尾と硬い握手を交わした。すると、思い出したように樹太朗は両親に神尾を紹介する。


「母さん、父さん……この人は神尾さんって言ってね……“信頼できる大人”なんだ」


両親は軽く会釈をして

微笑みながら神尾を見つめる。


「ええと〜はじめまして、樹太朗の親御さん……樹太朗君は――ご存知の通りハハッ勇敢な奴ですよ」


神尾は苦笑いしつつ、照れを隠すように樹太朗の肩を静かに優しく叩いた。


「樹太朗がお世話に……なりました……本当に本当にありがとうございました」


両親は深く深く頭を下げる。神尾は満身創痍な中、誇りを持って両親に向けて口角を上げた。

その時、古都は神尾に歩み寄り

後悔まじりの声で謝罪した。


「あ、あの……あの時、銃を向けてしまって……

ごめんなさい」

神尾は首を振る。


「いやいや、嬢ちゃん……その時は仕方がなかったことなのは、理解してるよ。

まあ、とにかく皆んな生き残って良かったよ」


神尾は古都に向かって小さく頷いて微笑みかけた。彼女は微かな雫を頬に流して、再び頭を下げた。


次に保科は、白装束たちが群がる方を見渡した。

その方向では片里とパクが、信者たちの質問攻めにあっていた。


「この私が拾った石は

光る隕石の可能性はありますか!!」


「避難する際の最適なルートってどこですか!

まさか、地下鉄のホームで永遠に!?」


「イエスマン様はどうなりましたか!

彼がいなきゃ我々は、生きていけない!!」


片里は戸惑う。

「え……えっと、なんで僕が……?」


近くにいたパクが補足する。


「み、皆さん落ち着いてください……

片里氏も片里氏で専門家では――」


片里は深呼吸し、呆れた顔で答える。


「ま、まず、アンタらの指導者はあそこで自滅した……事実上、この教団は崩壊していることになるが、理解してくれよ」


信者らは騒めき、絶望する声が後を絶たない。


「ただ、僕が科学を持ってアンタらを導くことはできなくはないが……どうするよ?」


パクが静かに「えぇ……なにそれ」と呟くと

片里は淡々とする。


「まあ、今は人手が欲しいからな……」


地下鉄内では助け合いの声が響き

団結の空気が生まれていた。


七尾と安東は避難してきた人々を地下線路へと

誘導していく。

樹太朗と親子、その他一行が言葉を交わす姿。

片里とパクは信者や避難者をまとめ上げ

隕石や危険の有無を伝えていく様子。


保科はその光景を静かに見守る。

正義や平和について考えを巡らせながらも

地上から降り注ぐ銃の轟音が耳を打ち続けていた。


ふと頭上を見上げると、天井のガラスや照明カバーに無数のヒビが走っていることに保科は気づく。


「皆さん!上を見て下さい!天井が危険です!破片に注意してください!今すぐに線路へ向かって!!」


避難者たちは慌てて距離を取り

慎重に足を進める。保科の声は、地下でも頼れる存在として人々に届いた。


七尾は群衆を誘導しながらも

後ろを振り返り声をかける。


「皆さん、焦らず、ゆっくり!!安全な場所まであと少しです!」


樹太朗ら避難者たちは列を作り慎重に線路を渡る。


「ゆっくりと落ち着いて!」


七尾が声をかける。

片里とパクは避難者をまとめ上げながら質問に答えつつ、列に並んでいく。


地下鉄内では恐怖の中でも助け合いの声が交わされ、小さな団結の空気が生まれていた。


樹太朗と神尾、安東、両親、古都、避難者たち

片里とパク、保科――


それぞれが安全を確認しながら

地下鉄の奥へ奥へと進む。


しばらく歩いていくと、大勢の人々が彼らを歓迎して迎えた。政治家の黒岩ら、様々なリーダーシップを発揮する人々のおかげだ。


それから人々は安全性のある

地下デパートまで歩き、息を潜めていく。




不安は拭えず、正義も正解もわからない。

ただ、生き残った人々は各々の感情を抱えながら、刻々と命を燃やすのだった。


――未だ銃が降り続けているこの世界で。



                      完

《12時00分》



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

《後書き》


※EP10〜EP: Communionには一部、AIによる誤字脱字の依頼修正いたしました。



EP: Communionにて今作は一旦の完結を迎えることになりました。今日まで4ヶ月の連載を追って下さった皆様、ありがとうございました。

反省点は多々ありますが、改善してまた何かしらの作品を連載したく思っています。


※【追記】26年4月6日にて新連載を開始します!詳しくは活動報告で話していますので、ご興味があれば!



また「大銃壊」での物語が好評でしたら、不完全燃焼ってこともあって、各キャラクター背景をより詳細に描くスピンオフの様な物を作成したく思っていますのでグッドや評価、感想ご気軽に宜しくお願いします。


それでは、次回作で会いましょう。


                    秋浦ユイ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ