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“大銃壊”−その日、空から銃が降ってきた−   作者: 秋浦ユイ
片里毱歌篇 7時55分〜10時47分
16/20

EP12

「い、隕石……?」

「まあ、可能性として考えてくれればいい」

ボクは、その漆黒の石を拾い上げた。案外、重量を感じる。コンクリートなのか、それとも他の物なのか。ボクは専門家ではないので詳しくは分からない。

「取り敢えず拾っておく。他に同じ物があったら教えてほしい……」

周りの信者はぽかんと口を開けたままだ。どうにもこうにも、この人たちと行動することは致し方ないことだ。

「その石が、隕石だとして考えられることは?」

イエスマンが口を開いた。白い布が息で沈んでは突起する。

「もしかして、この銃器、これ全部……」

パクが騒ぎ立てて、辺りに散らばる銃器を身体全体で表すかのように目線を送る。

「宇宙からやってきたってこと――」

そうすると信者たちがざわつき始めた。イエスマンが、ざわめきを察知すると、オーケストラの指揮者のようにジェスチャーをして、信者はぴたりと静止する。

これでは、まるでロボットだな。

「……うーん、どうだろうね。否定はできないけれど、肯定を求めるにはあまりにも情報が少ない」

「そうか……実は我、密かにその石を見つけていてね――珍しくて手に取ったんだ」

イエスマンは白いズボンを手探った後、手を開きボクに見せた。それは先程と同じく漆黒の石であった。

「ちなみに今日、近くの高校前で拾ったよ。時間帯はそう、8時頃――つまり銃降下前だ」

「高校って兼充高校? なら、ここから全く違う場所だ……時間帯も違うし」

パクが事実を淡々と、情報を整理していく。ボクは差し出された、その石を無意識に手に取り、ついさっき拾い上げた石と見比べる。

「同じ……だな」

「もしコンクリートだとか、銃の被害で倒壊した電柱だとか建物だとしたら……いやでも、うん。拾った時間が違うからおかしいよ、それ」

「そうだ、その通りだパク」

パクが早口で結論を述べていく。ボクは右の掌に二つの石を並べる。瓜二つの石。ただ、時間帯と見つかった場所が違う。

「さっきの、その話……本当なんだろうな?」

「イエス……」

イエスマンはこくりと頷いて小さく呟く。周りの信者は呼応するように同じことを繰り返す。

段々と、そのノリに狂気を覚えてきた。いや最初から狂気的に映っていたが、なおさらだな。

ボクは手の中の二つを握りしめて、地面を漁ってみた。

だけれど該当する物は、散々探してみても見つからなかった……。一個目の石が見つかったのは奇跡とでも言うのか? なぜ、ない?

「やっぱり、それ隕石だよ……先導者が見つけた時が被害前ってのも引っかかるけどさ――」

パクが一緒になって、身を縮こまらせて探してくれていた。その最中、静かにボクに語りかける。

「もし、それが隕石だとして、**銃器これ**って何になるんだ?」

確かに言われてみれば、そうかもしれない。隕石は隕石だとして。これら全部が宇宙由来の物だとしたら……色々と破綻してこないか?

どうして宇宙から、地球の道具が落ちてくる? もし宇宙からやってきたとしても、途中で燃え尽きてしまわないだろうか? それに全部しっかりとした重量や密度がこもっている。実際に弾を入れたら実用可能。

いや、それもだ……なぜ銃弾が込められていない? そこだけ妙に現実味を帯びさせる意味とは?

隕石の件も同じように。なぜ? 隕石そのものが、この期に及んで落ちた? 災難前、災難後と、なぜ現れた?

――これは一体、何なんだ!

『おい! ソナタら先を急ぎますよ』

イエスマンの声が遠くから大きく聞こえた。どうやら彼らは思考を破棄して、その場を後にすることを選択したみたいだ。

結構な距離まで離れているな……。

「片里さん……それ」

パクが真横に立って、声を漏らす。信者たちが先を行くのを知っていながらなお、パクはなぜか目を丸くしている。

「どうかしたか?」

「あ、えと……それ――」

パクがボクの握り拳を指す。

「……光が漏れてる…………」

ボクは指摘されるがままに拳を見ると、指の隙間から漏れ出す光を目撃した。静かに手を開くと思わず、目を細めるような輝きが差し込んだ。

「こ、これは」

「奇跡だ……奇跡だよ……」

――奇跡? どうしてだ? 光を放っているのは、隕石だと考えていた石二つ。眩しい……。結構な光源を放つそれは、未知その物。こんな物、聞いたことも見たこともない。

「どうして、光を放った?」

「なんか、特別な事をしたのかも? た、例えば汗で……とか」

「いや、違う……ボクは手汗なんてかかない」

何がトリガーになって、光を放つ? 考えろ、思考を巡らせろ……納得のいく答えを導き出せ!

思わず、ボクは手をまた握りしめてしまった。どうやら力が入りすぎってしまったようだ……。

「つ……え、……え!」

パクが、またもや素っ頓狂な声を出す。なんだ、騒がしいな……。

「それ……消えちゃったよ?」

思わず握ってしまった手を指すものだから、ボクは再び顔を向けて見ると、また光が消えている。

なるほどね……分かった。我ながら、と言うべきだろうか。この一連の出来事でピンと来た答えが現れた。

「原理は分かったけれど、道理も理論もボクには分からないや……ハハッ」

ただ、その答えはボクにはしっかりと説明できなかった。

「え、分かったの?」

ボクは歩き出した。彼ら宗教団体に怒られてしまうからね。

あぁ、高揚感が収まらないや。強力な情報を得たボクの思考力はもう、誰にも止められない。後はこの武器を、いつ振りかざすかだ。

――最良で最適なタイミング……。

「ちょ、片里さん!」

遅れてくるパクがボクの背を追ってきた。

「分かったなら教えてくださいよぉ。タネぐらい自分に教えても!」

ボクは静かにと言わんばかりに、彼の目を見た。

「良いかい、確かに物理武器も確かな強力さだ。だが混乱が満ち満ちている、この世では――」

ボクはジャケットのポケットに、右に一つ、左に一つと静かに入れた。

「情報が、一番の力となる――」

ボクらは、しばらく歩く。街全域が破壊され尽くされており、今ボクらが歩いている道中が、街のどこにあたるか不明瞭であった。

だが、先頭を歩くイエスマンは自信満々として邁進していく。彼を信じ切る信者一同。耳障りながらも、「イエスマン! イエスマン!」と張り上げながら銃器の道を歩んでいく信者。

「自分……ホントは今日で大学辞めようかなと、思ってたんですよ」

パク・ユンソン。彼とは、まだ出会って間もない。赤の他人と呼ぶには十分。

そんな彼が一人で自分語りを始める。

「ひたすらに嫌だったんだ……自分自身が、何の為に生きて、何の為に勉強しているのか、学んでいくのか。そんな不透明な状態がさ」

語る彼の横顔を、何ともなしに見守る。何かに怯えるみたいな不安定な声。別に彼の過去などに興味はなかった……ただ、耳に入るからには思考するしかなかった。

「だから今日……大学辞めることを決意して、就職してみて、自分の価値を見出したかった」

「んでも、結局――銃が降ってきた……生き残った時は変われるチャンスだと思って、最初こそは頑張って状況を把握したさ」

「だけど結局、自分は恐怖で押し潰されて……臆病で、偶然生き残った……目的も意思も何も定まっていない大嫌いな自分のままだ」

彼の瞳に一筋の雫が滴った。

「変化が自分自身じゃ、気づけないことはよくあることだ……」

別に興味なんてなかった。フォローする気も更々なかった。

「若干、訳が違うかもしれないが、『変化盲』なんて言い方をする……」

涙を流す彼の顔を覗く。流れる涙はそのままに、彼は瞳孔を開かせた。

「つまりキミは既に変化していると言うことだ」

ボクの目的は、この未曾有の事態の解明。それだけ知れれば後は極端、死んでも良い。これほどまでに知的好奇心をくすぐられる、未知は体験したことはないのだからな。

だからこそ、ボクは周りの人間に興味など湧かない。人間の感情なんて大概は知れている。

『――自分も真実知りたいじゃないっすか!』

「ほら……思い返して見なよ。キミは、この世の真実を追求したいと考えている。それだけで立派な目的……明確な意思だよ」

――だからこそ同胞は貴重だ。彼に言葉を掛けたのは、彼にその役目を期待しているからでもある……。

羽織った白装束が風に吹かれて、自由に靡く。パクの足が一時、重くなったが、ある瞬間を境に彼の一歩が明らかに大きく進化していることにボクは気づいた。

信者の行進と念仏が体を成して、一秒、一秒に勇ましい、人間の信念のような狂気じみた意思と信仰心を感じる。

人々は信じる。生きる意味と生きる希望を――故に、どんなに飛躍したことでも意味を見出す。

『皆の者よ立ち止まれ!!』

イエスマンが叫び出す。

『選民を発見したなり!!』

ボクらは最後尾にいたので、真っ正面の景色がどうなっているか分からなかった。少し横に逸れて、その先を確かめた。

『選民は……選民の拠点を持つなり……いざ我ら、行かん!!』

白い旗が立っていて、風に吹かれる。その景色をボクは目撃した。

すると、信者らが一斉に直進していった。

「片里さん、自分たちも行きますか……」

「だな……」

《10時00分》

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