教会での悪巧み
「ステータスを測定しますので、水晶の上に手を乗せてください」
城の横にある小さな教会で、奏は水晶の上に手を乗せた。
エリステラの話だと男の時点でステータスは期待が出来ないが、女性勇者の可能性を期待されてすぐに処刑はないだろうとの事だった。
「流石勇者様です、加護がありますね!加護は……え!……あの……」
教会のシスターの女性が奏の加護を見た途端に、何故か言うのを躊躇した。
(ん?不味い加護だったのか?少し下手に出ておくか)
「どうかしました?」
奏は可愛らしく、シスターを除き込むとシスターの鼻から鼻血が溢れ出す。
「勇者様、あまり……あまり近づかれると不味いです!加護が“淫魔”の加護なんです!無自覚でも勇者様に近づいただけで心を奪われかねません!」
(それ…ただ単に俺が男だから異性が反応してるだけじゃないのか?なんにせよ、便利そうな加護でラッキーだ)
「あら、ごめんなさい!ところで他はどうでした?」
奏はわざとらしくシスターから距離をとると、微笑みかける。このシスターには愛想を振りまいておいて、味方にしておいた方が良いと判断した。
「ととと、とんでもございません!魔法属性は……闇と炎ですね!ニ種の属性持ちとは流石です」
奏は意味が分からず、エリステラの方を見ると、人差し指の上に電気を帯びた水の球体を出して説明を始めた。
「普通、魔法は一人一属性なの。二属性持ちは滅多にいないわ。ちなみに、私は水と雷の二属性持ちだけどね」
「それは運が良かったですわ、他に分かった事はあります?」
奏はシスターに少し近づき、笑顔で問いかける。
(好意がある相手を悪くは言えないはずだ……上への報告もうまくしてもらわないと困るからな)
「他は魔力量は平均ですし……身体能力は平均以下ですが……誤差みたいなものでしょう。
他の珍しいものは……格闘技術がスキル化している位です。良いスキルを会得されましたね。何も訓練していない事を考えると、とても良いのステータスだと思います」
シスターは案の定悪い部分はフォローを入れ、良い部分を褒めちぎってくれた。
上への報告もこれなら問題ないだろう。
「なんとなくは理解したんだけどスキルって何か教えてくれる?」
奏はわざとシスターの手を握り、お願いしてみた。本当に発情するか試しておきたかったのだ。
「はひっ!あの嬉しいのですが、加護の効果が私に出ているので……」
シスターの表情は一瞬で惚けてしまい、改めて効果がめちゃくちゃあることを実感した。
「ご、ごめんなさい!つい、シスターが可愛かったから……」
奏は少し照れた様子で、手を離す。
シスターは少し残念そうな顔をしたが咳払いをして話始めた。
「スキルというのは、本来出来ないような技の組み合わせを可能にする能力です。例えば奏さんの格闘技術ですが、物理攻撃である格闘技の技術を魔法の遠隔攻撃に使える様になります。
組み合わせなどは自身で考え、練習が必要になりますが完成すれば大きな武器になりますね」
「例えば、炎の魔法に打撃の威力をもたせるとか?」
「その通りです。だからスキル持ちの方はオリジナルの技や魔法を使えるので敵も初見では対応出来ないメリットがありますね」
(思ったよりステータスは悪くなさそうだな。男だから激ショボを覚悟していたが、何とかなりそうか……)
「シスター、分かりやすい説明だったわ。ありがとう。奏、色々と疲れてると思うけどもう一仕事してもらうわ、ついて来て。」
そう言うと、エリステラは指で呼びついてくるように指示を出した。
「まだあるのかよ……シスターちゃん、またね。遊びに来るから」
奏では、シスターに近づくと軽くほっぺにキスをした。
シスターは驚きのあまり、固まって動けなくなっている。
「色々と聞きたい事があるから、また後で会いに来るね」
奏は、エリステラに聞こえない様にシスターの耳元で呟いた。
「はぁ……何を企んでるか知らないけど、あんまり色々な女性に色目を使うのは止めといた方がいいわよ」
エリステラは溜息をつきながら、奏を連れて廊下を歩き始めた。
「せっかくの加護なんだから活かさないとだろ?味方は多いに越した事はない」
「……奏、お母様と愛人契約したんじゃないの?お母様めちゃくちゃ嫉妬深いからね?」
「愛人なら別に大丈夫だろ?あくまで遊びみたいな話じゃないのか?」
「そっち世界だとそういう意味で使われてたわね。こっちの世界では……奏の世界で言う恋人みたいな意味よ」
「はぁ!?だって、王様いるんじゃないのか?結婚してるのに恋人もクソもないだろ!」
「この国、重婚オッケーだから。それに王様っていうのは対外的に他の国へ威厳を保つ為に作られた役職で、実際は何の権限もない。
ちなみに前の愛人は他の女と談笑してたのを見られ、その場で火あぶりにされたわね」
「エリステラ様、さっきの事は内密に……」
「あなたが言う事を聞けば……ね?」
エリステラは勝ち誇ったように、奏を鼻で笑った。