ざまぁを邪魔して平民落ちした騎士の末路
「団長、大変です。農民が王子と妃を捕まえて来ました」
「何だって、つれて来い」
俺は、ザルツ帝国の騎士、ブッカー騎士団の団長、
ルードルフ・ブッカー、現在隣国のダウア王国を侵攻中だ。
一番手柄だぜ。
しかし、連行された王子と妃を見て驚愕した。
グルグルに縛られ痣がある。王子は原型がわからないぐらい顔が腫れ上がっている。
妃は乱暴されていないか?
ピンク髪が乱れ服の所々破れている。
捕まえて来た農民達はニヤニヤしている。
褒美をもらえると思っているらしい。
だから、一喝をした。
「バカ野郎!お前達の国の王子と妃だろ!こんな扱いはあるか?回復術士を呼んでこい!」
「はあ?婚約破棄をして公爵様の娘様を追放した馬鹿王子と妖女ですよ」
「お金を下さい」
「バカ、戦時下でも暴行は犯罪だ!捕まえろ!」
「「「ハッ」」」
農民を捕まえて取り調べをした後、後方に移送した。
王子と妃は回復術士に診せた。
「妃は暴行されています。避妊魔法をかけておきました。王子の方は・・・ごらんの通り顔が腫れしばらく話せません」
「分かった。貴人の捕虜だ。丁寧に扱おう」
少したち。我帝国の第四皇子殿下とダウア王国公爵令嬢が凱旋をした。
我が帝国の勝利だ。王国軍は総崩れになったらしい。
第四皇子殿下が国王に就任し、公爵令嬢が王妃になる。
この国の王は他国の大使館に逃げ込んだらしい。
いや、分かるよ。他国の援助を引き出そうとしたらしいが、逃げているにしか見えない。
俺は王子と妃の面倒を見る事になった。
少しずつ話せるようになった。
「ブッカー騎士団長殿・・・・募兵で各地をまわっていたら農民達が蜂起して・・」
「ほお、貴国は農民に恨まれていたのかな?」
「ち、違うわよ。国庫を開いて炊き出しをして。税を安くしたのだから」
ああ、それで財政破綻をしたのか。
そして、城で論功行賞が行われたが、俺は・・・
「ルードルフ・ブッカー殿、職務怠慢につき。騎士団長を更迭する!」
「ハアアアアーーー!」
思わず厳粛な儀式で叫び声を上げた。
玉座には第四皇子殿下と公爵令嬢がいるが何も言わない。
そればかりか。
「王子と妃を捕らえた農民を侮辱し、あまつさえ縄をかけるとは言語道断!」
おかしいだろう?何だ。この世界は・・・
王宮を見渡すと、皆、目が輝いている。
農民達は報償され金貨の袋を渡された。
「ウシシシ、これで俺は高級平民よ。ペッ」
ツバを吐きかけられた。クソ。
元王子と妃は・・・元王子は断種の上、塔に監禁、ピンク髪の男爵令嬢は北の修道院に移送、俺は平民落ちで済んだ。
父上や皇宮に使えている伯父上たちが尽力してくれたらしい。
あの公爵令嬢はおかしい。追放された後、我国の第四皇子行きつけの喫茶酒場に迷うことなく働き始めたそうだ。
それからも不思議な商品を作り皆感心した。
そこから出兵となったが、出兵が決まった経緯は分からない。
ダウア王国は荒れているが、それは今回に限っての事ではない。
「ブッカー卿、後任の騎士団長が来るまで残務処理をしろ。二人は本日中に引き渡すように」
「はい」
俺は野営している騎士団に戻り。
副官のヘルゲに指揮を任せ。元王子とピンク髪に金を渡して逃がした。
「妃殿下の髪は目立ちます。灰で染め。ローブを羽織りなさい」
「分かったわ」
二人を商隊の馬車に乗せ。俺は逃げた。
考えれば考えるほど、あの公爵令嬢、未来を見通す力を持っているとしか思えない。
今後、この国をどうするか。興味はある。
辺境の開拓団に紛れてこの国を見定めようと決意した。
☆☆☆辺境
あれから、10年経過した。
俺は嫁をもらい。幸せに暮らしている。
「ルードルフさん。大変だ。魔物が出た」
「おお、今行く」
家門名は捨てた。俺の高貴っぽい名と農作業スキルの無さに不思議に思われたが、武芸で重宝されている。
村長の娘と結婚し、子供までもうけた。
ダウア王国と戦争になるから、婚約者選びを先延ばしにして良かったぜ。
さて、魔獣退治が終わったから帰るか。
「あなた、今日はアナグマのスープよ」
「お父さん。お手紙来ていたよ・・・」
「おお、ソフィ、ロザリー、ただいま。ロザリーありがとうな」
娘から手紙を渡され即中を見る。
伯父上と連絡を取っている。
手紙の内容は、
あの元公爵令嬢は宮廷工作は上手いが、国政が分かっていない。
あの我が帝国での立ち振る舞いは消え去った。
未だに元婚約者と元男爵令嬢を探している。
第四皇子も聡明さを失い。凡庸な王に成り下がった。
また、どんよりとした国に戻った。皇帝陛下は失望している。とな。
もしかして、王妃になるまでは未来が分かっていたが、それ以降は暗闇か?
それから、10年経過した。
俺は嫁と娘に謝罪をした。
土下座だ。
「すまない!俺はザルツ帝国の騎士爵の息子だったのだ。家門名はブッカー、ルードルフ・ブッカー、しかし、これからも平民として生きて行きたいがお願いがある」
すると二人は呆れた顔をして。
「分かっているわよ。毎月、紋章付の手紙が届くのだから、貴方、内容を隠さないじゃない」
「そうよ。お母さんの言う通りだから」
「それで、この地の領主より将としてこないかと誘いを受けている。平民兵を集めて行こうと思う・・・」
「行ってらっしゃい。貴方しかいないわ」
「お父さん。生きて帰って来てね。・・もし、余裕があったらお土産もね」
今回もまた婚約破棄騒動が起きた。
いや、あるよ。他国で王子が踊り子を気に入りパトロンになり。踊り子のために国費を浪費して劇場を建てさせたことがあったが、すぐに、周りの王族や廷臣達が止め。
王子は王位継承権を剥奪された事件とかたまに聞く。
この国はそれがない。王族や廷臣達がいるのに。
いつも、いきなり婚約破棄だ。
王妃になった元公爵令嬢の子息が婚約破棄をして、婚約者が今度はノース王国に逃げ込み兵をあげた。
王妃は実の子息を責めて、国内はギクシャクとしている。
俺は王国側の兵になり。王都に向かった。
「戦いなさい!」
と叫ぶ王妃に誰も従わなかった。
俺たちの兵団が王宮守備になったぐらいだ。
そういや。妻と娘にお土産を買わなければと思って、王都通りにいったら、
略奪が起きていた。あ、あの顔、俺にツバを吐きかけた平民だ。
問答無用で切り捨てた。
バシュ!
「「「ヒィ」」」
周りの者は唖然としているな。
「バカ野郎。戦時下でも略奪行為は犯罪だ!」
しかし、キリがない。王宮警備に戻った。
そろそろ食料が来なくなるかな。
そのぐらいを見計らって陛下に接近した。
「陛下、お逃げ下さい。手はずは整えております。帝国と連絡を取っております」
「貴殿は・・・」
「元ザルツ帝国、ブッカー騎士団の団長であります」
「・・・いや、良い。私はこの国と運命をともにする。この国はおかしい。聡明な人物でもこの国に来れば・・・愚にもつかない政略ばかり考えるようになる」
「ええ、何か思い当たる節は?」
「そう言えば、妃は、『げーむ』では、『はぴえん』とか言っていた」
「なるほど、陛下、それを皇帝陛下にお知らせする義務があると愚考します。どうか、お逃げ下さい」
「しかし、妃は・・」
「諦めて下さい。どうやら小説の主人公と思っている節があります」
「分かった。王女がいる。それも頼む」
「もちろん、ただし、平民の姿をして頂きます。ドレスや宝石は無しです」
「分かった。言い聞かせよう。それなら褒美に・・・」
この日、王妃は、『民を傷つけてはいけません。私を守りなさい』と矛盾する命令を出して、王宮の奥に籠もったきり消息が消えた。その民が暴動を起しているのにな。
陛下は王女殿下を連れ故国に逃げた。その国で起きた事を話し。ダウア王国の研究が進んだ。
結論は放っておくのが良い。他国とも協議する事になった。
戦乱がおさまり。王国はしばらくノース王国の保護国になった。
俺は・・役職の誘いを断り家に帰った。
「ただいま。ソフィ、ロザリー、お土産だ」
「「キャアーーー」」
「何、この宝石、見た事ないわ」
「このドレス、とても着られないわ。豪華過ぎるわ」
「ごめん。平民用のドレスやアクセサリーを売っていた店、軒並み略奪されていた」
「まさか、あなた、略奪をしたの?」
「陛下からもらったものだ。これを見てくれ、陛下の譲渡証明書だ。これで商人に足下みられないぞ」
宝石やドレスを売り一財産が出来た。そのお金で平民用のドレスやアクセサリーを買ってお土産とした。
落ち着いた頃を見計らって、娘が男を連れて来た。
「お父さん。紹介したい人がいるの・・」
「はじめまして、オラ、木こりをしているハンスだ」
「チィ」
「お義父さん」
「義父と呼ぶんじゃねえ」
豪華な結婚式が出来るじゃないか?村人を集めてお裾分けをしようと思っていたのに。
俺はこの地で生きて行くことに決めた。
最後までお読み頂き有難うございました。