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6話・ダンジョンの外へ

 置かれた宝箱に手を伸ばし、両手で蓋を上に持ち上げる。


 中には見慣れた物が数点入っていた。

・小さな布袋【マジックバック】

・魔玉【鋼鉄】

・回復ポーション

・魔力ポーション

・身代わりのリング


「初回クリア報酬だな、マジックバックと魔玉は普通なら手に入らないものだからな」

「そうなのか?」

「ダンジョンには、最初に発見して一階層のフロアボスを倒すと初回限定ドロップ報酬があるんだ。だから未発見のダンジョンを発見したら即座に調査を開始して一階層のフロアボスを討伐しにいく。討伐後はまぁ見た方が早いな」


 そう語るとアバスは黒鎧の腕をフロアボスがいた先に向けて指を指す。

 あったのは、二階層へと降りる階段とその手前にある魔法陣であった。


「フロアボスを倒せば、外に飛べる帰還魔法陣が姿を現す、その為、みんな討伐を優先するんだ、まぁ我の相棒はその決断で命を落としたがな……この鎧は相棒が使ってたものだ……本当にありがとうなカシーム」


「……アバス、オレはまだまだ分からない事ばかりだから、これからはオレがアバスの相棒に慣れるように頑張るから、えっと、その……」

「何を言ってんだ? もう、我の相棒はカシームだ、だから、頼む無理して死んだりしないでくれ」

「わかったよ。頼むぞアバス」


 カシームは笑顔を作り、アバスも表情はないが笑っているように見える。


 カシームはドロップアイテムであるマジックバックをベルトに縛るとドロップアイテムを順にしまっていく最後に魔玉を素手で握る。


「まて、カシーム!」

 慌てたアバスの声がカシームに届く前にカシームは魔玉を握っていた。

 その瞬間、魔玉はカシームの手の中から姿を消しており、アバスは兜を左右に振っていた。


「まさか、素手で触るとは、カシーム……オマエ、無知すぎるだろ?」

「え、え、えーーー! どう言うことなんだよアバス!」

 焦りながら、両手を何度も見直す姿にアバスは再度首を左右に動かした。


「魔玉はマジックアイテムや魔導具とは違うんだ、触れた物に魔属性を与えるんだ。だから、手に入れたら布なんかで包んで触れないようにして持ち帰るんだよ」

「つ、つまり、売れないのか! 一攫千金が……うわぁぁぁ」

「まぁ落ち着け、悪い訳じゃない。属性魔力を手に入れたんだしな、まぁ我の取り込んだ【鋼鉄】と同じ魔力だから言えるが使い勝手はいいからな」


 そう語り、売るより自身に使った方が価値がある事を伝えられ、カシームはその言葉を聞き納得した。


 二人は帰還魔法陣へと移動するとダンジョン入口まで転移する。


 約二日ぶりの外の空気を肺に吸い込むとカシームは大きく腕を伸ばす。

 アバスも十年ぶりのダンジョンの外に僅かながらに歓喜を現すように見えた。


「久々に外にでれたが、これからどうするんだ?」

「ああ、まずは《カムロ》に戻って冒険者ギルドに報告かな?」

「なら、数回ダンジョン一階層を周回せぬか?」


 アバスはダンジョン周回を提案し、理由を説明する。

 街に戻るにしても、収穫が少ない事、ダンジョン発見を報告すれば人が次々に訪れダンジョン報酬が安く取引きされる可能性がある事実、そして、イレギュラーで魔玉を奪われたフロアボスが魔玉や鎧兵を復活させているかの確認であった。


 ちなみに、鎧兵達はアバスのマジックバックに全て回収済みであり、その際に鎧兵が復活しているなら、それも回収すれば戦力や金にする事が可能だったからだ。


 これからカシームとアバスはダンジョンの周回を開始する。

 ダンジョンとはダンジョン内に踏み入れた人間が全て外に出れば宝箱や魔物がリセットされ、最初にあった位置に宝箱が現れる。

 魔物は時間でリポップされるが、宝箱だけはそうはいかない。

 その為、身の丈にあったダンジョンであれば、初回発見時に周回しないという選択はないのだ。


 カシームとアバスはウルフとゴブリンを容易く倒し、三つ存在する宝箱のうちの二つを開き、アルル草とマジックポーションを手に入れ、苦戦すること無くフロアボスの部屋へと辿り着く。

 そして、最初こそ苦戦したフロアボス(砂の魔物)が居る室内に入っていく。


 ボスフロアには、最初同様に壁際に鎧兵が並べられており、フロアの奥には砂の魔物が堂々と睨みをきかせている。

 しかし、砂の魔物の手には矛のみが握らるており、魔玉の姿はなく、砂の魔物が奇声をあげるも鎧兵は微動だにしない。


 砂の魔物はその場から動けない仕様なのだろう、矛を両手に構えるも動けない的となった砂の魔物に対して、アバスは壁際の鎧兵の腰に装備された剣を取ると力一杯に投げ放つ。


 一本の剣は魔玉【鋼鉄】の能力により魔力が流れ、閃光のように加速し砂の魔物へと一直線に襲い掛かる。

 砂の魔物は矛で守ろうとするが、矛を砕きコアへと剣が突き刺さり、砂の魔物は砕け散る。


「ほぇぇ、一撃じゃんか、すごいなアバス!」

にっこりと笑うカシーム。


「あぁ、これで理解出来た、鎧兵は基本配置される。つまり、部屋の装飾扱いだな。魔玉は本来は矛と同じ魔物の所有権アイテムだった為、所有権が無くなったから復活対象になっていないようだな」


 会話が終わり、カシームが宝箱の中身を確認する。


・回復ポーション

・マジックポーション

・身代わりのリング


 最初に入っていた三種類のアイテムが入っており、その後、数回の周回でも変化はなかった。

最終的に二日間をダンジョンの周回に使い、疲れれば安全エリアでアバスのマジックバックに入っていた食料を食べるを繰り返した。


 その間に周回した回数は15回、鎧は既に六百体を超えていた。

・マジックポーション・・・32個

・回復ポーション・・・16個

・アルル草・・・16束=1束5本・・・80本

・身代わりのリング・・・16個


 欲を言えばもっとほしいが、既に商業のカムロを出てから既に五日が過ぎており、ダンジョンの位置から地上に上がり帰還を考えるとここが潮時であろうという結論に至ったのだ。


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