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49話・冒険者

 Bランクパーティー【魔導の剣】に無理矢理ギルドでの再会を約束させられたオレは、とりあえず、皆に事の経緯を説明する。


「なんで、危ない事をしてんねん! マスター、馬鹿なんちゃうか!」

「そうだよ、ボク達を待てば、こんなに騒ぎにならなかったのにさ!」


「トト、パステ、待つのだ。むしろ、酒に酔い、カシームが起きた際に目覚められなかった我らに落ち度がある」


 皆が反省会をはじめるが、先ずはギルドに向かう事にする。

 ギルドに入るとモルバがアルンから報告を受けている最中だった。


 ギルマスが直接、報告を聞くなんて珍しいな?

 普通ならギルドマスター室なんかで話を聞くものだと思うが、そうではないらしい。


「おーい! 来たぞ」

 とりあえず、挨拶をしながらギルドの中に入るて直ぐにギルマスから詰め寄られた。


「久々に帰ってきたと思ったら、お前ら……何やってやがんだ……何をどうすりゃ、魔狼王なんかを討伐する流れになるんだよ!」


 そこから、オレ達のロルクでの報告がカムロのギルドにも届いていたらしい。

 シャナルさんからも直接の連絡でオレ達にまた来て欲しいと言う内容がギルマスへ感謝の言葉と共に送られていた。


「有り得ねぇだろ、何処の世界にいきなり行った先のダンジョンの新階層を攻略する新人パーティーがあるんだよ! しかも、その街のクランを壊滅に汚職ギルド職員の承認だァ! お前らなにしてんだよ!」


「あの、ギルマス、落ち着いて、オレ達もそんなやばい事したつもりは無いんだよ……流れで何となくそうなっちゃっただけで」


「はぁ、胃が痛てぇ……とにかく、お前ら【亜人の団】には、近々、【B】ランク試験を受けてもらう! さすがに早いかもしれんが、受ければ少しはBランクがどんなもんか分かるだろ!」


「試験か、相手は?」


「相手は今日あった【魔導の剣】だ。コイツらは、かなりの実力者だし、正直経験もかなりの物だ。過去にお前らと同じランクだった際にはEランクとFランクのダンジョンの攻略も経験済みだ。ダンジョンのラストボスを倒せるくらいには凄い奴らだ」


 オレは静かにアルンさんに視線を送る。


「お互いにメンバーそろってますし、今からやりませんか?」


「あ?」と、オレの言葉にギルマスが口を開けて驚いたように声を出した。


「本気か! パーティーレベルで魔狼王を倒したのは分かるが、それとコイツらと戦うのはレベルが違うんだぞ?」


「一人づつ戦うんですよね? 全員でやるんでも構わないけど」


「はぁ、まったく、しゃあないな、アルン! 相手をしてやれ! Bランクパーティーの実力を見せてやってくれ!」


「あ、あのモルバさん、その報告途中だった内容ですが、私達が確認した魔狼王の個体は、通常のものではなく、多分ですが、ネームドのユニークです……」


「あ? どういうことだ! ただの魔狼王じゃないってのか」


「はい、そして、討伐も【亜人の団】が行いましたが、正確には、カシームさん一人でユニークの魔狼王と魔狼の群れとウルフの群れを討伐しました。正直、私達が駆け付けた時点で勝敗が決する場面でしたが、私達では勝てる相手ではなかったでしょう」


「Bランクが勝てる気しない相手だと……それで、試験の相手はやれるのか?」


「いえ、私達は負けを認めます。カシームさん一人でも勝てる気がしませんし、他の方々も多分、私達以上の実力があるように感じますので」


「はぁ、有り得ねぇ、おい、お前ら今からBランクだ……前代未聞だ……たく、ミーネ、直ぐに昇格させろ。あと、他のバカ達に手を出さないようにしっかり言っとけ……既にロルクで犠牲者がいるからな」


 こうして、オレ達は皆そろってBランクにあがる事が出来た。


 しかし、Bランクってなるのが大変なはずなのにいいのかな……


───

──


 次の日、朝からギルドに行くと既にオレ達の噂で持ちきりになっていた。

 知らない冒険者から声を掛けられたり、睨まれたりと注目を浴びてしまったが、絡まれたりはしなかった。


 そんな中、ミーアがオレ達に手を振り、カウンターへと呼ばれたので其方に向かう。


「カシーム君、なんか凄いことになりましたね。いきなり呼び出してしまいましたが、Bランク昇格おめでとうございます。ギルドカードの更新が済んでいますので、新しいギルドカードをお渡しします。ご確認ください」


 今までのギルドカードを手渡すと新しいギルドカードが手渡されていく。


 ギルドカードの交換が終わると直ぐにミーネがクエストが書かれた用紙が取り出される。


「これはギルドからの依頼になります。申し訳ありませんが、強制依頼になりますので、お願いします」


「強制依頼か、なんかズルくないか?」


「分かってはいるのですが、すみません」


 申し訳なさそうに頭を深く下げるミーネの姿に内容を確認していく。


 クエスト内容は草原エリアのウサギの殲滅だった。


「え、うさぎ狩り?」

「はい、このクエストは、ギルド所属の全てのパーティーに強制依頼として出されたものです。先の報告から、一般の方が立ち入る草原エリアが複数種のウサギにより、住処にされてしまった為、草原エリアの魔物の一掃が目的のクエストになります」


「わかったよ。もっとやばいクエストかと思ったけど、これなら受けるよ」


 急遽、入ったクエストだったけど、草原エリアが使えないと皆が困るから、引き受ける以外の返事はないよな。


 早速、草原エリアに向かう、砂漠の国と呼ばれてるのに自然豊かなのだから、本当になんとも言えないな。


 既にエリアには複数の冒険者達がうさぎを狩り始めていた。

 その為、オレ達もうさぎ達を包囲するようにして、狩りを開始する。

 草原エリアの両端には結界使いがいるのだろうか、光の壁が見えるため、獣の森へと自然に逃げるようにしているらしい。


 草原エリアの地上にいるうさぎを森に追いやってから、巣穴を作ったうさぎの討伐が開始される。


 巣穴にはクイーンもいたが、そこは冒険者の数で押し切り、あっという間に草原エリアからうさぎが消えていく。


 うさぎは大量の肉になり、ギルドは肉を普段の倍くらいの値段で買い取るそうだ。


 なんでも、近々、商業の街(カムロ)の商業祭があるらしく、その際に使う予定みたいだ。

 冒険者も普段狩らないうさぎに旨味が生まれたみたいでやる気に満ちているように見える。


 うさぎ狩りクエストは全員が満足する結果となり、オレ達も大量のうさぎを狩る事が出来たのでギルドからしっかりと報酬をいただけた。


 ギルドでは、大宴会が開かれ、トトと若手冒険者や飲みに自信がある冒険者達が飲み比べを開始したりと賑やかな夜になっていく。


 オレ達はまだまだ、未熟なのかもしれないが、こんな冒険者としての日々も悪くない気がする。


 仲間に囲まれ、笑い合う今のオレ達は間違いなく最高の冒険者なのだから。


 これからも賑やかな冒険やダンジョン攻略が続くんだと思うと少し嬉しくなるんだよな。

読んでいただけた皆様、ありがとうございます。

色々とやり残した感はありますが、この作品はここで打ち切りとなります。

 作者は数年前にコロナ感染症が流行った頃、知り合いが亡くなったりと色々が重なり、書く事が出来ない日々をおくっていました。

 今になり、リハビリを兼ねて、この作品を書いて見たのが、作品作成の流れでした。

 なかなか、上手く行きませんでしたが、それでも読んで頂いた事実に感謝致します。本当にありがとうございました(*^^*)

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