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47話・魔狼王1

 久々の商業の街(カムロ)に舞い戻って来た。時間にしたらそこまで離れていた訳じゃないが、なんか懐かしい気がしてしまうのは仕方ないよな。


 道中は来た時とは違って、魔物の襲撃も少なく、楽な物だった。


 気楽な帰り道に景色を軽く楽しみつつと言った感じだった。


 商業の街(カムロ)にあるオレ達のパーティーハウスに戻りオレ達は戦利品を広げていた。


 魔玉も含めて複数のヤバいドロップ品をどうするかを話し合う事にしようと思う。

 実際、オレはかなり、ダンジョンのドロップ品を使わせて貰っているのだから、メンバーにもしっかりと分配したいしな。


 ダンジョン【眠れる獅子】のドロップ品の中から売るものを別にして、使えそうな物から並べていく。


 ・炎の魔玉

 ・氷の魔玉

 ・波動の基礎取得用スクロール──2本

 ・回復術式のスクロール

 ・大蛇の毒牙

 ・力の腕輪

 ・雷耐性(小)の腕輪──2個


 ボスドロップからこれくらいだろうか?


 ユニークボスからのドロップ品がやはり目立つイメージだが、ミネットとの戦闘で使用した大蛇の毒牙も同様のイメージだろう。


 このドロップ品を上手く分配していこうとした時、トトから待ったがかかった。


「マスター! あれや! 酒やん! あれも今回の分配になるんやろ?」


「うん、なるけど……別に好きな物を持って行ってもらおうと思ってたから」


「なら、酒やな、むしろ酒やな! ウチの取り分は全部、お酒で、ええわァ」


 すごい勢いでそう口にするトトにアバスもヌビスも呆然としており、止められるような雰囲気ではなかったので、全会一致で了承した。


 その流れから、次に誰が何を選ぶかを話し合った。


 アバスとシャドーが“波動の基礎取得用スクロール”を各一本を選び。


 パステが炎の魔玉、ヌビスが氷の魔玉を選び、最後に大蛇の毒牙をトトに渡す形になった。


 他のドロップ品は再度保留として、ダーバンがコレクションにしていた物などと一緒にしまっていく。


 ダーバンのコレクションは余り趣味のいい物ではなかったが、それでも複数の使える物も紛れていた。


 中でもオレが気になったのは、“糸使いの手袋”と言う装備品だった。

 この“糸使いの手袋”は好きな糸(ワイヤー等を含む)を収納でき、好きなタイミングで取り出せる。しかも、使用制限がない為、誰でも装備できるのだ。


 本来は人形使いになる前職のジョブが糸使いなのだが、今のオレの異能と相性がかなりいいので、早々に相談して、皆から許可が出たので使わせて貰う事にした。


 他にも必要な物があれば、その都度、話し合いを行うことに決めた。


 オレ達は久しぶりの休日を満喫しつつ、これからの事を話し合っていく。


 トトは世界中の酒を飲み干したいと笑い。

 シャドーは強くなりたいと熱意を燃やしている。


 他のメンバーもやりたい事を口にしながらその日は賑やかな宴会となり、皆で浴びる程に酒を飲み、いびきをかいて眠った。


 二日酔いのまま、朝がやってくる。酷い頭痛と吐き気でかなり辛い……ぎもじわるい……


 トトに進められるままに色々な酒を飲んで……途中から記憶が曖昧だ。


 オレは顔を洗い、なんだかオロオロを繰り返して、やっと落ち着いた。


「トトと飲むのは危険だな……みんなは大丈夫かな」


 確認するとパステは完全にダウンしている。

 ヌビスは気持ち良さそうに寝ている。いつも早起きなヌビスが寝坊とか珍しいが仕方ないな。


 シャドーはやっぱり、ダウンしてるな……あとはアバスとトトだな。


 二人を見ると笑って眠っていた。なんか、可愛らしい笑みなので、そのままそっと寝かしておく事にする。


 全員が寝ている為、仕方なく、ギルドハウスから外に出て簡単な運動をしていく。

 

 体内のアルコールを運動により汗を流す事で抜いていく。

 簡単にアルコールが抜ける事はなかったが大分マシになったな。


 しかし、なんだろう……【獣の森】から魔物がいなくなってる気がするんだよな?


 前までは、うさぎ達が溢れてたし、他にも多少の魔物がいたハズなんだけど……帰ってきて時もいなかったよなぁ……


 そんな事を考えながら、皆が目覚める前に軽く散歩をする事にした。

 前までうさぎを確認出来ていたエリアに行ってみるかな……


 てか、なんか静か過ぎる気がするんだよな……


 うさぎの巣があった場所まで来たが、巣にはうさぎ達の姿はなく、むしろ、何かに襲われたような酷い有様になっていた。


「何があったんだ? 酷いな、しかも、まだ日が経ってない感じだよな」


 何かが、このGクラスの森に迷い込んだ事はすぐに理解できた。

 オレは気づかない間に()()のテリトリーに入り込んでるんじゃないかと感じ始めていた。


 踵を返して、その場から移動しようとしたその時、目の前から「うわぁぁぁ!」っと、子供の声が聞こえてくる。

 慌てて、声のする方に向かうと、数匹のウルフ達が小さな二人の子供達を追い掛けていた。


 走る子供達は、泣きながらも手を繋いで必死に此方に向かってくる。


「グアオンッ!」っとウルフが女の子に噛み付こうとした瞬間、糸使いの手袋からワイヤーを勢いよく発射する。


「頭を下げろ!」

 そんな叫び声に子供達が前屈みに倒れ込む。


 ワイヤーは子供達の頭上を抜けて、飛び掛ろうとしたウルフの額を撃ち抜いた。


 ウルフがその場に落下すると同時にエイルとヨルンの二体を呼び出し、エイルには子供達の護衛をさせ、ヨルンと残りのウルフを討伐する。


 一段落して、子供達の元に駆け寄る。六歳くらいだろうか?


「なんで、お前らこんな所にいるんだ?」


 泣いてる少女に変わって、泣きそうな少年が返事をした。


「じ、じつは、ぼく達、薬草を……探し、探しにきたの……でも、いつもの場所になく、なくて、それで……」


 必死に説明してくれているから、何とかわかったけど、薬草を探していて、ここまで来たらしい。


 少年が落ち着いたのを見計らって、再度説明を聞くことにした。


「普段は、草原エリアの入口とかで、薬草を探して、ギルドとかで買って貰ってたんだ。でも最近、草原エリアにウサギの魔物がいっぱい現れて、薬草とかも食べられちゃったんだ」


 消えたうさぎはそっちに行ったのか、でもなんでだろ? それにウルフの群れもなんでこんな場所にいるんだ?


 少年の話を聞いて、少し考えて見るが、分からない。でも一つわかったのは、この【獣の森】がEかFランクくらいの対象エリアになっているみたいだな。


 適当に薬草を子供達に渡してから、森の入口に送り届けてからオレは探索を開始する。


 皆を呼ぼうかと思ったが、オレはそのまま、探索をする事にした。


 森の中は、ウルフの縄張りになっているのか、無数のウルフに襲撃されたが、一切苦戦すること無く、それを討伐していく。


 そして、オレはウルフ達のボスであろう、魔狼を発見したが少し様子が違っていた。


 ウルフの縄張りとなってしまった、うさぎの巣があった洞穴の上でオレを見下ろす巨大な魔物。


 普通の魔狼は何度も見たが、目の前に堂々と此方を睨みつけているそれは、魔狼の二倍程の体格をしており、魔狼が一角なのに対して、二本の角があり、その体から生えた獣毛は白と青の雪山のような柄になっている。


 とりあえず、オレは直ぐにスルトも呼び出し、三体のゴーレムで牽制にはいる。


 オレとボスウルフが睨み合うと不意に、声が聞こえた。


「何者か? 何をしに来た……人間よ」


「お前喋れるのかよ? ただのウルフじゃないんだな」


「質問に答えよ……」


「オレはカシームだ! お前らが好き勝手して、うさぎ達が別の場所に移動して困ってるんだ」


「ほう、ワタシはゲルム……魔狼王である。して、我らにこの場所から移動しろと言う事でよいか、小僧?」


 魔狼王ゲルムの問に頷くと突然笑いだした。


「愚か、愚か、愚者にして、低なる者は道化の際があるのだなぁ……何故、我らが脆弱にして弱小なる下等な存在の願いを聞かねばならぬ?」


「つまり、移動する気はないんだな?」

「無いのう……下らぬ余興にもならぬ……やはり、下等なり、さて、そろそろ、飽きてきた……ちと、小さいが腹の足しにはなるだろう……喜んで喰われるがよいぞ!」


 そう語り、遠吠えをあげた魔狼王ゲルム、周囲に控えていた魔狼達が一斉に動き出すと此方に牙を向く。


 駆け出した魔狼達が四方八方からヨルン達を避けながら、オレに向かって襲い掛かる。


 ヨルンが高速で動き出すと同時にスルトとエイルも戦闘に入っていく。

 

   

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