45話・ロルクギルドで話し合い2
ギルドで長々と説明をさせられてから、質問責めにあったが、ゴーレム達の事や、アバス達の正体を隠しながら、上手く話を切り上げで何とかギルドを後にしていた。
ギルドでレネ達が待機している宿屋の場所を聞いて、そこに向かっている。
宿屋は直ぐに見つかり、宿屋の中へと向かっていく。中では宿屋の女将さんが活気よく作られた料理をテーブルに運んでいた。
「はいよ! アンタ達、先ずはしっかり食べな! いきなり大変だろうが悩むのは飯を食べてからだよ」
その声の先には、レネ達の姿があり、助けた女性達が長テーブルに並べられた食事を開始するところだった為、気づかれないようにその場を後にした。
オレ達も適当な店に入り食事をする事に決めた。
一瞬、獣人差別などを考えたがその店は獣人も食事をしていたので安心して食事をする事ができた。
席に案内されて、オススメを人数分頼む事にする。
「マスター、これからどうするん? あの数を面倒見るんは無理やろ?」
「ボクもトトさんと同じ考えだよ」
トトとパステの意見は当然だったし、他のメンバーからも同様の意見みたいだ。
話し合った結果、助けた女性達は全員解放して、再度、何があったかを説明する事になるだろうが、それでも人の人生を縛り付ける必要はないんだ。
食事を終えて店を出る。
その足で再度、女性達がいる宿屋に向かう、宿屋でも食事が終わっていた為、安心して女将さんに声をかける。
「すみません、よろしいですか?」
「いらっしゃい、悪いわね。今、全部屋埋まってるんだよ」
申し訳なさそうに頭を下げられたので、訳を説明する。
オレが女性達の主だと分かると女将さんは、複雑な表情を浮かべていた。
しかし、ギルドカードの名前を確認した女将さんは、軽く謝罪をしながら、オレ達を案内してくれた。
案内された部屋にはレネと他二人の女性がいた。
どうやら各部屋を三人くらいで使っているようだな。
全員の部屋を周り、オレは全員に後日、奴隷解放を行う事を告げていく。
その日は、別の宿屋をとることにして、オレ達も久々に布団で寝る事が出来た。
朝を迎えて、オレ達は再度ギルドへ向かい、奴隷商の場所を聞く。
ギルドで質問をすると、受付の可愛いお姉さんが分かりやすく教えてくれた。
教えて貰った数ヶ所の奴隷商館から一箇所を選び、向かって行く事にした。
奴隷商館は立派な門構えをしており、如何にも貴族御用達という雰囲気を醸し出していた。
とりあえず、ギルドからの紹介だと門番に伝えてみる。
二人いた門番の一人が直ぐに、商館の中に内容を伝えに言ってくれたのでもう一人の門番に質問をしてみる。
「ここの主はどんな人なんだ?」
此方を不思議そうに見る門番は、悩みながらも口を開いた。
「そうだなぁ、グレム様は、奴隷商人にしては、優し過ぎる方かな、だが良い方なのは間違いないですよ」
少しして、門番がメイドを連れて戻ってくると、門が開かれるてオレ達は商館の中に通される。
エントランスを通って、メイドの案内で商館の中を進んで行く。
案内してくれたメイドさんも奴隷なのだろうか、礼儀正しく、最初の挨拶以外は、一切会話がない為、質問する事が出来なかった。
案内された応接室で少し待つと、扉を開いて、初老のきっちりとした服装の紳士が入ってくる。
此方に挨拶を軽くすると正面に腰掛けると早々に要件を質問された。
「ようこそ、いらっしゃいました。この商館の主、グレムと申します。して、カシーム様、此度はどのようなご用件でしょうか?」
物腰の柔らかい言葉に優しそうな笑みを浮かべているが、瞳は真剣なものだと分かる。
そこでオレは、ある質問をする。
「違法な奴隷等も扱っていますか?」
その質問にグレムの眉が軽く動いたように見えた。
「お客様、違法な奴隷をお探しするのはお勧め致しません、我々、奴隷商は、いえ、少なくとも私は奴隷も大切な存在だと考えております、ですので、そういった奴隷をお探しする事は出来ません」
その言葉を聞いて満足出来たので本題に入っていく。
何より、わざわざ、名前で最初は呼んでくれていたが、違法奴隷と言うワードを出した途端、お客様と、言い換えたのが逆に信頼出来ると思った。
「ここからが、本題なんですが、他言無用でお願い出来ますか?」
「内容にもよりますが、分かりました。出来る限り、他言しない事を誓いましょう」
「まず、グレムさんに頼みたいのは、奴隷の解除なんだ」
「はい、え? どういう事でしょうか、奴隷解除とは?」
「オレ達は今、多めの奴隷を抱えていてね。その人達を奴隷から解放したいんだ」
グレムにオレは出来る限りの考えを伝えていく。
奴隷達が違法な方法で奴隷にされた事、更に主が変わると記憶に干渉する術式が隠されていた事、解除の際にリスクがあるかもしれないという事。
すべてを語った後、グレムは悩んだような顔を浮かべていたが、目を閉じて考え終わると、軽く溜め息を疲れた。
「ふぅ、分かりました。ですが先ずは一人、解除出来るかを確かめてからになります。解除には金貨十枚、更にリスクが有る恐れがある為、更に十枚の二十枚程頂く事になりますが、よろしいのですか?」
「わかったよ、先に金貨二十枚を渡すから、試して欲しい。一度戻ってから、解除してもらう奴隷を連れて来ても大丈夫かな?」
「はい、構いません。 では、お待ちしております」
そう言われ、前金の金貨二十枚を手渡して一度、商館を後にする。
宿屋からレネを呼び出すと、簡単に内容を説明していく。
「えっと、私、実験台ですか……?」
「いやいや、そう言うつもりは無いんだけど!」
「大丈夫です。私は覚悟が出来てますから、お願いします」
なんか、罪悪感がすごいけど、レネが納得してくれたので商館へと向かって行く。
商館の中では既にグレムが解除の準備をしてくれていた。
案内されたのは、応接室ではなく、地下室だった。
「お待ちしておりました。お伺いした内容から、解除の際に魔力の影響を受けないようにする術式をこの部屋に発動させております」
「ありがとうグレムさん。早速だけど、お願いしていいかな?」
「ええ、直ぐに出来ます。そちらの女性奴隷様の解除でよろしいですね」
話が終わると、レネの奴隷解除が行われる。
少し苦しそうな声が聞こえたが、それも数秒の事だった。
レネの腹部に刻まれていた奴隷印が消えており、それは奴隷解除が成功した事を意味していた。
その瞬間、オレの体内で力が増した気がした。
「どうかなさいましたか、カシーム様?」
「いや、なんか、変な感じがして」
「ああ、そう言う事で御座いますか、奴隷を手に入れる際には、少なからず魔力が必要になります。その奴隷に与えた縛り次第で変化しますが、その負担を肩代わりするのが奴隷印でもあります。
しかし、解除にはその倍の魔力が奴隷の主に負担として掛かります。その為、解除をしようとする者は余りいないのです」
説明を聞いて、体内から魔力が失われた感覚だと気づき、オレは少し悩んだ。悩んだ理由は、一回に何人まで出来るのかと言う事だ。
何度か魔力枯渇を経験している為、ギリギリは理解している。とりあえず、その後に四人の解除を行う事になった。
かなりの魔力を失った気がする。何より、グレムさんが解除を複数人行うと言った際にオレをかなり心配していたので、普通は無理な事なんだと理解した。
因みに解除に成功した五人は冒険者として新たなパーティーを組むそうなので、簡単な装備やアイテム等を渡してあげた。
凄く感謝されたが、彼女達が経験した絶望からすれば、それでも足りない気がする。
そこから数日かけて、二十人の奴隷全ての解除が完了した。
400枚の金貨を使って解除するなど前代未聞だとグレムさんは驚いていたが、オレからすれば奴隷解除が出来た事が嬉しいのだ。
冒険者になれる者は冒険者としてギルドへ送り、冒険者にならない者も、ある程度、安定した職場をカナリアとシャナルさんが紹介してくれたのは本当に助かった。
ただ、その際、アグリ達の犯罪が証明され、刑が決まったと言う話を聞いた際にギルド内の冒険者達がカナリアを罵倒するような内容を話していた事だ。
「もしも、俺なら直ぐにダーバンを倒して、アグリを取っ捕まえてやったのにな。あはは!」
「そうだよな、副マスター補佐が犯罪者じゃ、信頼なんか出来ないよな」
「そうそう、まぁ、カナリアも終わりだな、だははは!」
男達は酒も入っているのだろう、ギルド内だと言うのに、遠慮がないな。
オレが文句を言おうとした時、アバスとトトの二人が男達に向かっていく。
「オモロイな、マスターには悪いけど、なら、ウチらがやったるわ。【黒竜の息吹】とやり合ったウチらが相手でも問題ないみたいやしな、表にでぇや?」
「だな、そんなに強いなら、我らの相手も出来るのだろう?」
「なんだ、テメェら?」
「いきなり、喧嘩売ってんじゃねえぞ! 女の分際で!」
男達が立ち上がって怒鳴り出す。まぁ当然だけど、しゃあないよな。
男達が言われるままに、外に出ようとした瞬間、受付嬢が慌てて、男達を引き止めた。
「ま、待ってください! ダメです! 絶対にダメですからね!」
顔を青くした受付嬢の姿に男達は何を考えたか、笑いながら返事を返した。
「大丈夫だよ、俺達も手加減はしてやるさ、腕の一本くらいで勘弁してやるからよ!」
「俺達はCランクだからな、少し教えてやんよ。あはは!」
「違うんですよ! この人達がヤバいんですよ! 【黒竜の息吹】を壊滅させた張本人達なんですよ、皆さんが骨も残らなくなっちゃうかもなんですよ!」
その言葉に男達の表情が固まるが、既にアバスとトトがギルド入口から外に出て、男達を手招きしていた。
「……いや、さ、流石に女二人に、俺達三人は不公平だな、そ、そうだ。ならパーティーリーダーの一騎打ちで決めよう」
「そ、そうだな、パーティーリーダーの戦いならお互いに問題ないだろう!」
その視線がオレに向けられる。トトの「マスター」とオレを見ていたのを見逃さなかったのか、オレなら勝てると思われたのか、どちらにしてもリーダー同士で戦う流れになってしまった。
外に出て直ぐに、男達のリーダーが前に出る。
大剣を手にした三十代の男性で革鎧に手甲を装備しており、革鎧もかなり良い装備に見える。
「悪いなガキ、冒険者は舐められたら終わりだからよ! 強い従者を連れてても強くなった訳じゃないって事を教えてやるよ!」
そう語る男と対峙してる場所は、ギルド地下にある訓練場だ。
街中でやり合う事には、流石のシャナルも認めないという事で、オレ達は地下に案内されたのだ。
「わかったけど、手加減しないよ?」
「言ってろ! 俺もガキに手加減出来ないタイプだからな」
と、言う訳でオレはお言葉に甘えて、三体のゴーレムを呼び出す。
しかし、この三体はスルト達では無い、この数日で作ったダンジョンにいるタイプのゴーレムだ。
「な、え、ゴ、ゴ……レム?」
「行くよ!」
リーダーの男は、アッサリとゴーレムに吹き飛ばされた。
ゴーレムに斬りかかった大剣は見事に砕かれ、ゴーレムの拳を防御した手甲は腕ごと凹んでいる。
「他の人もやる?」
視線の先で首を左右に高速で動かす男達。
「カナリアはボク達【亜人の団】の友人みたいな人だから、次にバカにしてるのを聞いたら、容赦しないからな!」
男達は今度は首を縦に振り、ギャラリーとして集まっていた冒険者達もそれを見て首を縦に振っているのが見えた。
そんな中、シャナルとカナリアが頭を抱えている姿が見えた。




