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43話・ゴーレムとマスター3

 女性達はその後、奴隷として一緒にボス部屋へと入る事を承認した。

 いや、正式には一部の女性達と言うべきだろう、奴隷として生きる事よりも仲間を失った悲しみや、恋人を失った悲しみに精神が持たなかった者が自ら自害したのだ。


 ボス部屋の前から少し離れた開けた場所で石に腰掛けながら状況確認をしていく。

 心配そうにパステとトトが両サイドに座り、此方に優しげな視線を向けてくる。


「マスター、残念やったな……せっかく助けたったのになぁ」

「ご主人様は悪くないんだよ、悪いのは【黒竜の息吹】なんだよ」


「ありがとう、分かってるんだけどさ、他に方法があったらなって」


 本当に胸糞悪い……ただ、それでもかなりの人数の奴隷となった女冒険者達がいる。


 止まる訳には行かないんだ。止まればきっと進めなくなる人が出てしまうから、だから……早急にボス部屋へと入る事を考えていた。


「少しよろしいでしょうか……カシーム様」


 声を掛けてくれたのは【希望の星(エトワール)】のメンバーだった女性だ。


「えっと、名前が……」

「すみません、私はレネです。ボス部屋に入る前にお伝えしたい事があり、僭越ながら、お伝えに来ました」


 レネは、今いるこの六階層が【眠れる獅子】の現在最高階層であると伝えてきた。

 オレは思ったよりも、探索が上手く進んでいなかったのだろう事を予想しながら話を聞いていく。


 そのまま、レネは五階層を長らく【黒竜の息吹】が占拠しており、最近、突破して六階層に拠点が移された事実を教えてくれた。


「長くこのダンジョン【眠れる獅子】の攻略が進まなかった理由です。そして、ギルドにも奴らの手の者が居るでしょう、今回、クランマスターのダーバンがダンジョンに来ていたのは、王都からの調査がクランに入る為だと噂になっていましたから……」


 クランの監査を前もってギルドの関係者から聞いた結果、末端のクランメンバーをロルクに残し、クランの攻略部隊と共にダーバンは六階層に来ていた。

 本人は攻略する気はなく、ダンジョン最下層で冒険者狩りと言う犯罪行為を働いていたらしい。


 【希望の星(エトワール)】は六階層が解放された為、マップ作成の依頼を受けてやってきた事も教えてくれた。

 本来は【黒竜の息吹】と争う気はなく、マップ作成が八割程完成したら帰還石でダンジョンから帰還する予定だったそうだ。


 だが、イレギュラーはいつも突然に起こるものであり、【希望の星(エトワール)】は【黒竜の息吹】にターゲットにされてしまった。


 そして、【亜人の団】と出会った後、下り坂の道を進み、広い通路で休憩をしている際に襲撃を受けたらしい。その場では殺さず、キャンプまで連行されたそうだ。

 既にその時には、ダンテを含む数人が瀕死の傷を受けており、どちらにしても助かる事はなかっただろうと悲しげに語るレネは、必死に耐えてたように見える。

 

「つまり、この階層のボスは情報がないって事だよね?」


「はい、そうなります……それでも戦われますか?」

「やるよ。だって皆を助けたいからさ、それにギルド職員が関わってるなら、なんか許せないからさ」


 そんな言葉に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて涙を流すレネの姿があり、会話はそこで終わりを告げた。


 話した後、全員を集めると流れを説明する。


 助けた女性達14人とオレを含めた【亜人の団】六名の20人でのボス攻略となる。

 たが、女性達の中には非戦闘員の人もいる為、メインの戦闘は【亜人の団】が行い、戦える女性達で他の人を守って貰う事になった。


 簡単な話を終わらせてから、全員分の食事を用意して皆で食べる事にした。

 大量の魚肉があったので煮込み料理とムニエルが作られ、パンなどはギリギリだったが、できる限り腹いっぱいに食べて貰った。


 食事が終わってから、少しの昼休みを挟んで【黒竜の息吹 】のキャンプから戦利品となる物をマジックバックに収納していく。

 正直、持ち主がわかる物は返して上げたいが、既に所有者の欄が空白になっている物ばかりだと、パステから言われて、なんだか悲しくなったが、それでもかなりのお宝を発見する事が出来た。

 トトは【黒竜の息吹】のリーダーだったダーバンのコレクションの酒に目を輝かせていた。

 元々、監査が入る為、全ての貴重品をダンジョンに持ち込んだのだろう、他にも金の装飾品や高いポーションなど珍しい物から悪趣味な物まで多種多様な物を手に入れる事が出来た。


 食休みが終わると女性達の表情は少し明るくなっているのがわかった。怯えている人もいたが、諦めている風にはみえなかったので良かった。


 巨大なボス部屋の扉、意を決して開き、誰一人置いて行かないように確かめてから中に入る。


 部屋の中には巨大なゴーレムが二体部屋の中心で膝をついた状態で微動だにせず、オレ達を出迎えた。


 片方は真っ赤で片方が真っ青と言う他では見なかった色のゴーレムであり、通常のゴーレムが三メートル程のデカさなのだが、しゃがんだままの二体は既に通常ゴーレムと変わらない。

 つまり、この二体はその倍はあるように見えるのだ。


 戦闘に入る前に女性達の安全を再確認する。女性の中には結界師もいるので、直ぐに結界を貼ってもらう事にする。

 結界を作り終わると同時に二体のゴーレムが動き出し、立ち上がる。


 直ぐにスルト、ヨルン、エイルを呼び出し、戦闘態勢に入る。

 アバスとトトが最初に赤いゴーレムへと駆け出して行き、大鉈を振り上げる。


 アバスの大鉈が赤いゴーレムの腕に当たった瞬間、激しい炎が巻き上がり、アバスは即座に距離をとる。


「こいつら、攻撃をカウンターするタイプみたいやな! 半端な攻撃は逆効果や!」


 トトの声に、ヌビス達も青いゴーレムへの直接攻撃を諦めている。

 青いゴーレムに初撃を与えたシャドーの大剣と片腕が即座に凍り付いたからだ。あれがパステやヌビスだったら、腕が砕けていただろう。


「青いゴーレムはオレ達がやる! 他の皆は赤いゴーレムを頼む!」


 その声に、ヌビスがパステとシャドーを下がらせて後退する。


 青いゴーレムに向けて、スルトが一気に駆け出し、重厚なランスを勢いのままに心臓部分に突き放つ。


 ランスが触れた瞬間、白くなったのが分かるが、オレは直ぐに、ランスを持ったスルトの掌を回転させる事で熱を作り出す。

 高速回転するランスが次第に熱をおびて、赤くなり、ゴーレムが慌て出す。


 振り上げた腕をスルトに振り下ろそうとした瞬間、ヨルンがその腕をブレードで切断する。

 切断に使った両腕が氷ついていくが、エイルの再生能力で即座に修復されていく。


 そして、青いゴーレムはコアを打ち砕かれ、その巨体が崩れていく。


 アバス側の赤いゴーレムも、最初こそ、反撃を受ける形になっていたが、見てみれば、トトが巨大化の異能を発動させ武器を伸ばし、安全な位置からの斬撃を次々に決めているのがわかる。

 そんな攻撃を見ているとアッサリと赤いゴーレムが砕け散っていった。


 あまりに呆気ない勝利にオレもアバス達も顔を見合わせていたが、本来の【D】ランクダンジョンは12階層から15階層となる為、未だ六階層しか到達していない【眠れる獅子】ダンジョンのボスなのだから、この程度が打倒なのだろう。


 少し偉そうな言い方になったが、実際にそう感じてしまうのだ、この二体、赤と青のゴーレムは遠距離攻撃に対して弱すぎるからだ。

 動きはデカい分、通常ゴーレムよりも遅く、装甲も通常ゴーレムと変わらない、つまり、カウンタースキルのみ注意すれば、なんとでもなる相手という事に他ならない。


 戦いで忘れていたが、部屋の隅で結界に守られた女性達に視線を向ける。

 なんか、驚いた顔をしてるけど、無事みたいだだから、大丈夫だね。


 この瞬間、オレ達【亜人の団】は六階層のボス討伐と同時に【眠れる獅子】ダンジョンの最高到達者パーティーとなった事を意味していた。


 ボスを討伐し、宝箱が出現していたので早々に開いていく。


 ・炎の魔玉──初回限定ドロップ品

 ・氷の魔玉──初回限定ドロップ品

 ・波動の基礎取得用スクロール2本──初回限定ドロップ品


 ・ハイマジックポーション──2本

 ・ゴーレムコア──2個

 ・回復ハイポーション──2本

 ・帰還石──6個

 

 は? 魔玉が二つも入ってるんだけど……しかもスクロールもあるなんて、なんか凄い……

 語彙力が失うくらいには衝撃的な内容だったが、一旦、誰が使用するか等は保留とする事にした。


 被害にあった女性達の事もあり、オレ達も一度、ダンジョンから帰還する事に決め、次々に帰還の魔法陣へと移動していく。


 地上に戻ってから、少しギルドについて、調べないといけないと思う。

 

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