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2話・《ドラゴンの牙》と《ベヒモスの鱗》

 武器屋“ドラゴンの牙”で店主のガダは「好きに選べ、どれでも1000シルバで譲ってやる」といいカシームに軽く視線を向ける。


「オッチャン本当にいいのか! だってこれ防具だぞ!」

「構わねぇよ、ウチは武器屋だからな、新人が足りないからと泣きついて代金の足しに置いていった物ばかりだ。鉄製ならまだ使えるが、皮装備じゃなんの役にもたちゃあしねぇ、防具屋に持ち込むなんて真似はしたくないしな」


 そう口にすると早く選べと言う視線をカシームへと向ける。


 カシームは自身の身体になるべく合うような装備を幾つか選ぶと嬉しそうに目を輝かせる。

 それまでのカシームの装備は使い古されたボロボロの皮の胸当てと歪んだ額当てであり、角なしウサギの体当たりなどで既に限界に近い状態であった。


 角なしウサギは、普通のウサギの五倍程度の大きさで大型犬と変わらないサイズのウサギだ、強く進化した後ろ足で地面を強く蹴り、凄まじい勢いで体当たりしてくる低ランクモンスターだ。

 因みに角ウサギサイズは角なしより小さいが鋭い角があり、冒険者の心臓目掛けて突進してくるので新人殺しの異名を持つ油断ならないモンスターになっている。


 新たに譲って貰った装備は、皮の胸当て、額当て、皮の靴、ボア皮の手甲であった。

 更にガダはカシームの今つけてる装備と交換した物は代金は要らないといい、カシームは言われた通り、銀貨二枚、2000シルバを支払った。


「そしたら、防具屋に行ってこい! サイズ直しなら、安く済むだろうし、こいつを持って見せれば、有り金分で確実にやってくれるはずだ!」

 ガダは一枚の紙をカシームに手渡す。


 言われるがまま、武器屋“ドラゴンの牙”を後にして、防具屋へと向かう。


 防具屋“ベヒモスの鱗”へと辿り着く、店の扉を開くと中からは、カンカン!と鉄を打つ音がなり、《ドラゴンの牙》と同様に鍛冶屋も兼ねている。


 室内は数人の店員さんがおり、裏には、鍛冶場があるのだろう、ドラゴンの牙とは違い店内は広く、明るい雰囲気を感じさせる。

 そして、店員がカシームに気づき声をかける。


「いらっしゃいませ、防具をお探しですか?」

明るい笑を浮かべながら挨拶をする店員。


「えっと、防具のサイズ合わせなんだけど、あと、これを見せるようにって言われて」


 カシームは武器屋の店主であるガダに渡された紙を店員に渡す、すると店員は直ぐに裏に向かい、数分待つと裏から背の高い男性がやってくる。


「おう、ボウズ、お前さんがガダの紹介かい?」

 見た目が怖いが何処か優しそうな雰囲気をした男性が声をかけてくる。


「はい、カシームって言います」


「そうか、なら直ぐにやってやる明日には終わらせてやるから、防具を出しな」


 言われるままにガダから買った装備をカウンターに置き、頭を下げる。


「オレはジルだ。兄貴からの頼みなんて久々だからな、金はいいからまた明日きな」


 そう言われ流れるように話が終わり、カシームは防具屋“ベヒモスの鱗”を後にする。


 用事を済ませたカシームは、夕暮れの広場でベンチに座り、新たに買った短剣をゆっくりみていた。


「やっと、まともな武器が手に入った! くぅーやったぞー!」

  喜びに体を震わせるカシームの姿がそこにあった。


 2日目は朝から防具屋に向かい、預けた防具を受け取る。


「ジルさん、ありがとう!」

「おう、気にすんな。カシームはまだ駆け出しなんだろ?」

「おう!」

「なら、コイツをやるよ。装備の盗難なんかは初心者によくあるからな、ガダの兄貴から買った装備に野営なんかの時は結んどけ」

 そう言われ、数本のワイヤーが出し入れ出来る小さな箱を手渡される。


 使い方はベルトに通して、使いたい時に小箱からリング付きのワイヤーを引っ張り武器なんかに結ぶだけとジルは分かりやすく説明してくれた。

 最初から渡すように言われていたのか、短剣の束の部分にはワイヤーリングが付けられるようにU字加工されている。


 防具屋“ベヒモスの鱗”を後にする。それから昼前に冒険者ギルドへと向かう。


 ギルドに入り、冒険者ギルドのカウンター横の壁に張り出されたクエストボードからFランクと書かれたクエストを確認する。

 昼前ということもあり余ったクエストは薬草採取や簡単な魔物退治といった物ばかりだった。

 そんなクエストの中から、鉱山付近に生える植物採取クエストを手に取る。


 クエスト内容は、鉱山エリアに生えている《アルル草》の採取、岩山の調査、依頼料はアルル草の量と質により変更あり、群生地を発見した場合、依頼料を追加とあった、ギルドの依頼でありながら、確定報酬は雀の涙程度であり、報酬額は銀貨四枚であった。

 その為、最初は幾つかの駆け出し冒険者が依頼を受けたりしていたが、その報酬の少なさから受ける者が次第に減り、今では忘れ去られたクエストになっていた。


 普段、朝からクエストボードを確認していたカシームは下の方に埋もれるそのクエストを目にした事がなかった為、カシームは目を輝かせた。


「よし! 最初に新エリアも見たいし、先ずはこれにしよう」


 ギルドのクエスト受付カウンターへと依頼書を手渡す。

 ミーネがクエストを確認すると少し渋い表情を浮かべ明らかにお勧めしませんと言いたそうな表情を向ける。


「カシーム君、本当にこれを受けるんですか? ギルド職員としては余り言いたくないですが、お勧めしませんよ? 鉱山のある山までは一日半掛かりますし、食料や宿代を考えるとマイナスになりかねませんよ? ましてや、カシーム君は、ソロですよね?」


「ああ、大丈夫だよ。野宿は慣れてるし、食事は森で果物とか取ってから行くし」

「え、待って、森に食べれる果実なんてありませんよ! 森の果実は毒があって魔物達は食べますが、角なしウサギなんかは食べたら動けなくなるくらいには強い毒なんですよ!」


 慌てて席から立ち上がりカウンターに両手を勢いよく置くミーネ、昼の人が少ないギルド内でなければ、多くの注目を集めた事だろう。


「いや、昔から飯が食えない日があったから、森の果実を食べてきたんだよ、まぁ、最初は腹下したり、動けなくなった日もあったけど、今は何食っても大丈夫になったぜ!」


「わかりました。なら最後にひとつ、向かう際は日暮れ過ぎをお勧めします。砂漠の魔物については、こちらをご覧ください」


 メモを受け取るとニッコリ笑いカシームは心配そうに見つめるミーネに手を振りながら冒険者ギルドを後にする。


 その後、森に入りリュックに入るだけの果実を取り、角なしウサギも数匹捕らえて血抜きをしてから解体していく。

 その際の黒い短剣の切れ味にカシームは心を踊らせると旅立ちの支度を済ませると夕方には目的地を目指して歩き出す。


 本来は夜に出歩くのは危険とされているが、此処《砂の国=サンワール王国》では、少し違う、森側のエリアは夜も魔物が徘徊しているが、目的地の鉱山エリアへは砂漠をひたすらに歩く事になる。

 砂漠の魔物は日中の熱い日差しの中では活発に動くが、夜になれば一気に温度が下がる為、魔物達は夜になると行動を停止する。

 その為、日が暮れてからの方が安全に移動が可能となるのだ。

 これもミーネから渡されたメモにより得た情報であり、本来朝から移動を考えていたカシームは初めての夜の砂漠を歩き続けるのだった。


 砂漠に朝が来る、カシームは夜のうちに砂漠を抜けていた。

 目的地までの一日半とは、戦闘を混みに考えた時間であり、砂漠を抜けて目的地までの移動時間を含まれているからだ。

 朝になる前には、砂漠を抜け、更に歩いて鉱山エリアの谷を目前に控えていた。

 そんなカシームも夜通し歩き続けた事により、疲労がピークを迎えていた。その為、横になる事が可能な小さな洞窟を発見すると魔物避けの香草を擦り合わせた物を入口に置き、盗難防止のワイヤーを短剣と鞄に結び、僅かな時間だったが仮眠を貪るのであった。

読んで頂きありがとうございました。


ブックマークや感想、誤字など、ありましたらお願い致します。貴重な時間をありがとうございました(*・ω・)*_ _)

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