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12話・冒険者パーティー試験1

 ──冒険者ギルド──


 討伐したラビットクイーンの首をカウンターへ持ち込む、最初はミーネさんはオレ達の報告を訝しげに聞いていたが、討伐部位として首を二つ置いた途端に表情を凍らせていた。


 分かりやすく言えば、巣穴討伐は難しいと考えていたのだろう、そんなやり取りを終わらせ、ウサギの巣穴があった場所を地図にマークをつける。


 その際に、トトに対しての質問をされたが、偶然出会ったとだけ伝えた。

 またも疑われているような視線を感じるが上手く話をはぐらかして、流れで冒険者登録まで済ます事が出来たのは良かった。


 トトもだが、アバスにも冒険者登録が可能だと分かると、二人に冒険者登録をしてもらう。

 その際、アバスはギルドでの討伐報酬経験があったので本来はGランクスタートのところをFランクスタートとなっている。

 だが、トトはそうはいかないと言われた為、トトが突然「実力があれば、ええんちゃうん?」と強い口調でミーネにくいかかった。


「き、規則は規則です!」と出来る限りデカい声をあげる。ミーネさんの声を聞いて、ギルド内の冒険者達も「そうだ! いってやれ!」「新人が調子にのんな!」「実力だ? なら相手してやんぞ!」「あはは! お嬢ちゃん無理すんな!」


 ミーネさんの言葉に冒険者達が次々に声をあげると奥のギルドマスター室からバタンッと、乱暴に扉が開けられる音がギルドに響き、バタバタと怒りに満ちた足音が受付へと近づきギルド内に緊張が走る。


「さっきから、てめぇ等、うっせえッ!」

「…………」


 さっきまでの賑わいが嘘のように無音になり、怒りに満ちたモルバの視線がミーネさんとトトへと向けられる。


「キャンキャン、キャンキャン、吠えやがって──そんなにギルドのやり方が気に入らねぇなら、ギルドカードを置いて出ていけ」


「偉そうな奴やな? オッサン、あんまり怒鳴ると血管切れてまうよ?」

「……こ、この、クソガキがッ!」


 目を血走らせて、殺気を放つようにトトに歩み寄るモルバをギルド内の冒険者達が慌てて押さえに入る。


「離せっ! このクソガキをぶっ飛ばしてやんよッ!」

「ダメですよ! アンタ、ギルマスでしょうが!」

「そうっすよ! とりあえず止まってくれーーー!」

「無理だ! 力が、強、すぎるって!」


 屈強な冒険者数人に四肢を掴まれながら、一切止まる気配がないのだから、ギルドマスターって本当にやばいんだな。


 そんなギルマスに自分から近づいていくトト、こちらも目を大きく見開き、ニヤつきながら歩みをすすめていく。


 モルバとトトが向かい合うと互いに睨み合いが始まる。

 そこからは互いに手は出さないが、言いたい放題だった。


「なら、アンタがウチより強い冒険者を選んでウチと戦わせたらいいやんか、ウチはアンタさんが相手でもかまへんよ」

 不敵に笑みを浮かべ、更に挑発されるとモルバが完全にキレだした。


「誰でもいい……このクソガキをぶっ飛ばせ! ギルドマスタークエストだ! コイツを倒したら金貨5、いや、10枚だ!」


「金貨、10枚だと!」

「俺がやるぜ、ギルマス!」

「いや、俺だ!」


 ギルド内の空気が一瞬で変わるとギルドマスターであるモルバが一人の男を指さす。


「マロイ、お前に任せる。いいか、あくまで試験扱いだ! 昇格試験としてしっかりとやれ、いいな!」


 マロイと呼ばれた冒険者が一歩前に出る。


「悪いな、みんな、それと嬢ちゃんもな。オレはDランクパーティー【蒼い山脈】のリーダーだ、新人が束になっても負ける事はないからな!」


 力強く声をあげるマロイ、ギルドマスターへのアピールだろう事が見てて直ぐにわかる。


「ならさ、アンタのパーティーとウチの仲間でやり合って勝ったらウチら、全員昇格ってことやんなぁ?」


 その言葉に真っ先に反応したのはギルドマスターであるモルバだった。


「ほう、なら、お前と仲間が敗北したらGランクからやり直して貰うがいいよなぁ、あぁ?」


「当たり前やんか! アンタんとこのお気に入りをいてこましてから、昇格させてもらうわぁ!」


「言ってくれたな……ならば、3対3のパーティーバトル方式で試験とする。勝ったなら、約束どおりにFランク、いや、Dランクに昇格させてやる!」


 まさかの展開にオレは頭を抱えたがアバスはそんなオレに「悪くない条件だな」と呟いた。


 Dランクに上がるにはC級の魔物を100体程討伐し、尚且つDランクの試験官と戦闘試験を行い、勝利する必要がある。

 いきなり決まった試験という形の試合だったが、間違いなくチャンスだった。


 試合は三日後の昼に決まり、オレ達は慌ただしく試合に向けて特訓する事になる。

 その日の夜、トトとアバスにウサギの巣穴で言われた事を思い出していた。


 ──数時間前──


 ウサギの洞穴でトトと契約をした時の事だ……


 オレが契約を受け入れた瞬間、トトとアバスが驚いたようにオレを見ていた。

 最初に口を開いたのはアバスだった。


「本当に契約するとは……これでカシームは人族や亜人族とパーティーが組めなくなってしまったな」


 アバスの言葉に何を言われているか理解できないオレにトトが両手を合わせて頭を下げてきた。


「ホンマにごめんや……説明する前に、契約交わされるなんて思わなかったんよ」


 精霊との契約は魂の契約であり、精霊を複数契約する場合、パーティーとして、他者とリンク出来なくなるのだ。


 リンクとは、パーティーを組むと自然と頭に流れ込む感覚であり、魂へとリンクが正式に繋がる事でパーティーとして皆が認識する事ができるのだ。

 しかし、精霊種や妖精種と契約する場合、リンクで使うはずだった半分の魂が契約に使われる事になり、残る半分でリンクを行う事になっている。

 つまり、二体目の精霊との契約は余った魂を使う事になり、リンクが使えなくなるのだ。


 しかし、これは悪い事ばかりでもないそうだ、二体目以降の契約は制限が無くなっている為、自由に精霊と契約が可能になるそうだ。

 つまり、オレは精霊のみ、無限に仲間にできるようになったのだ。


「カシームは、“精霊の契約者”から“精霊士”へと変化したって事だな」


 精霊士は、二体目の精霊と契約した者に与えられる“ジョブ”であった。

 更に契約が出来たなら、違うジョブに変化すると言われた。


「つまり、オレにジョブがついたのか!」

「あ、あぁ、そうなるな」

「てか、そっちなん、他の冒険者とパーティー組まれへんくなってんで?」

「オレは二人以外とパーティー組む気ないし? だから、リンクとかは、別に気にしないかな、あはは」


 そんなやり取りを思い出しながら、明日に備えて眠りにつくのだった。

 

 ──試験まで三日──


 その日、オレ達は武器屋(ドラゴンの牙)防具屋(ベヒモスの鱗)へと向かっていた。

 目的はトトの装備を揃える為だ、流石にウサギの角を武器にしているが、本人は気に入ってるみたいだがずっとは無理だからだ。


 なので先ずは、武器屋(ドラゴンの牙)に向かう。

 扉を開くと鈴の音が店内に響き、以前同様にカウンターの奥に座るガダのオッチャンがいた。


「お、カシームじゃないか? 随分早い来店だな、刃こぼれでもしちまったか」

「ガダのオッチャン久しぶり、今日は仲間の武器を見に来たんだよ」


 そう伝えると、ガダの視線がアバス達に向けられる。

 アバスをジッと見るガダのオッチャンの目は鋭いものであった。


「人違いか……装備が同じに見えたが、奴じゃなさそうだな……」

「何の話だよ、オッチャン?」

「なに、その黒いフルプレートに見覚えがあっただけだ、まぁ人違いだったみたいだがな」


 会話が終わろうとした時、アバスが口を開いた。


「本来の持ち主は、ダンジョンで死んだ……」

「──そうか……死んじまったか」


 話を進めようとしたアバスに対して、ガダのオッチャンは「いや、知らなくていいさ、死んじまった事実は変わらんからな」と話を切り上げたのだ。


「まぁ、好きに見てくれ、勿論、金はあるんだろうな?」

「お、おう、ちゃんとあるぜ!」

「なら構わん、決まったら言ってくれ」


 トトの武器を探し、店内を見て回る。

 しかし、トトは普通の武器には余り興味を示さず、次々に武器を手に取っては、渋い顔をしている。

 しっくりこないのだろう……悩む仕草をしてもすぐに元の位置に戻している。


 やはりと言うべきか、癖がある物を好むのだろうか、“試作品”の箱の前で足をとめた。

 複数の武器を手に取りながら、二個で一組になった円盤状の刃物 (チャクラム)を両手に握っていた。

 円上の刃には複数の刃が更に付けられている。


「しっくりくるなぁ、ウチ、これにするわぁ」

「なら、それにしよう。あとはなんかある?」

 オレが質問をした時には、既に同じような形のチャクラムをもうワンセット握っていた。


「ウチはこの子達でええよ」


 トトの武器が決まり、オレは自分用に束売りのナイフを大量に買うことにした。


「また、変わったモンを選んできたな? チャクラムとは、不人気で売れないからコチラとしては助かるがな、ナイフの束も合わせて、金貨二枚だ、チャクラム用の入れもんは防具屋(ベヒモスの鱗)に行ってくれ、此処にはないからなぁ」


 支払いが終わるといつも通りにメモを渡され、それを手に防具屋(ベヒモスの鱗)へと移動する。


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