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9話・冒険者ギルドにて2

 ギルドで換金する物を決めて、冒険者ギルドへと向かう。

 普段なら入口から中に入った途端、チンピラみたいな冒険者が絡んでくるのがパターン化している、いつものお約束みたいなものだ。

 反論しても厄介になるし、反論しなくても、からかわれるという流れが出来上がってるんだよな。


 因みに絡んでくるやつは三人、リーダーは、Eランク冒険者のベルミン、赤髪モヒカンで厳ついスパイクの付いた肩当を両肩につけていて、片手斧を武器にしてる荒くれ冒険者だ。


 他の二人もEランクでベルンとバルンの双子冒険者、どちらもロン毛でリーダーと同じ赤髪をしていて、正直、見分けがつかない……


 この絡んでくる三人がEランク冒険者パーティー【赤の世紀末】だ、ギルドの問題児で受付のミーネさんからもあまり相手をしないようにと言われている。


 先に冒険者ギルドの入口から入った途端、やはりと言うべきか、オレに睨みながらモヒカン頭が顔を近づけてくる。


「なんだ、オマエ生きてたのかよ~ヒヨっ子が見ないから死んだと思ってたぞ、まぁ金が稼げないヒヨっ子だから、ギリギリだろうがなぁ!」

「流石だぜ、間違いねぇぜ! 絶対そうだぜ、アニキッ!」

「ヒヨっ子はヒヨっ子らしくって話だよな、アニキッ!」


 やっぱり始まったよ、Gランク冒険者になったその日からずっと言われているセリフ、暇なのかな……

 オレに絡むくらいなら、クエストをもっとやればいいのに……


 オレが言い返そうとした時、後ろからアバスが入ってくる、オレを心配したのか視線が向けられてるのがわかる。

 全身フルプレートの黒鎧、見た目のいかつさは2メートルを超えている事もあり間違いないだろう、その為か、直ぐにギルド内の視線が集まり出す。

 ヘルムから見える赤黒く見える魔玉が目にみえる為、視線があった方からしたら、睨まれた印象になるかもね……オレもアバスを、知らなかったら間違いなく声なんかかけれないもん。


 モヒカンに対して、アバスが視線を向けるようにヘルムを向けると何を考えたのか、赤髪モヒカンこと、ベルミンが立ち上がり、そのモヒカンをアバスに向けて睨みつけている。


「なんだお前! 見ねぇ顔だな! カシーム、オマエはこっちに来な、ベルン、バルンッ!」


 予想外に引っ張られると、ベルンとバルンの二人がオレの前に素早く移動して拳を構えていた。


 「え?」って呆気にとられるオレをよそに、ベルミンは、まさかのギルド内で斧に手をかけようとしている。


「いいか! よく聞けよッ! デカブツッ! オレ達は泣く子も(髪を)真っ赤に染める、冒険者パーティー【赤の世紀末】ッ! オマエが、ガンくれた冒険者はオレ達の後輩だバカヤロウ~ッ!」

「「そうだぜッ! 後輩を守るアニキ、今日も決まってるぜッ!」」

 双子がベルミンの後ろで決めポーズを取りながら、盛大に声をあげた……かなり派手というか、本当にこの人達はよく分からないんだよな……


 そんな三人にアバスが近づいていくと、ギルドの空気がかなりピリつき、他の冒険者達がアバスを見ていた。


「悪いが、カシームは我の仲間だ、返してくれないか?」って言いながら、背中の大剣に手をかけようとするからかなり焦った。

 ギルドの空気が一瞬で変わって、オレとアバスに交互に視線が集まって、見かねたミーネさんが走ってきて「そこ迄です! 落ち着いてください、此処は冒険者ギルドなんですよ!」って声をあげて、アバスも大剣に伸ばした手をそっと戻してくれた。一旦、その場は収まったんだよね。


「いいですか! ギルド内での武器の使用は、ご法度です。訳を聞かねばならないので、奥の部屋に皆さん来てください。勿論、カシーム君、アナタもです!」


「えー! なんで……なんにもしてないじゃんかよ」


 そう呟くと普段は優しく笑顔が素敵なミーネさんがオーガみたいな怖い表情をオレに向ける。


「当事者ですよね? ある意味、原因ですよね? なんなら、関係しかありませんよね?」


 正直に怖って言いたかったけど、ただ、首を縦に動かして、言われるがままに別室へと案内される。

 ギルドの奥にある広めの部屋、窓には鉄格子がはめられていて、まるで牢屋みたいな印象を与えられた。


 室内に置かれた長椅子が二つ、1人がけの椅子が二つ挟まれるように置かれている。

 オレは1人がけの椅子に座らされ、横にアバス、その反対には世紀末三人組が座わらされる事になる。


「皆様、すぐに戻りますので、ここで暫くお待ちください。くれぐれも揉め事は起こさないように……もし、守って頂けない場合は最悪、ギルドカードを抹消させて頂きます可能性もありますので、くれぐれも気をつけてください……」


 なんで、“くれぐれも”を2回言ったの、疑われてるのかな……

 注意を終えるとミーネさんは扉の外へと退出した。


 ただ、赤の世紀末の三人と違ってアバスはギルドに所属してないからなのか、世紀末の三人は警戒してるように見える。

 向かい合ってるアバスと世紀末の三人に挟まれるように椅子に座るのは余りいい気分はしない、むしろ、視線が痛い。


 無言のまま、部屋の空気が悪くなっていくと部屋の扉が開かれて、見た事ない男性とミーネさんが入ってくる。

 赤の世紀末の三人は男性を見た途端、姿勢を正して立ち上がる。

 オレもそれに合わせて立ち上がるがアバスはそのまま座っている。


 男性が部屋の中を見渡すと口を開く。


「おいおい、ミーネ……説明と少し違うじゃねぇか、新人の喧嘩って聞いたが、新人と初級冒険者三人、あと精霊なんて聞いてねぇぞ?」

「──え、精霊、ですか……」

「ミーネ、お前の鑑定眼でも、わからねぇのは仕方ないとして……先ずは話を聞きたい。1から話せ。とりあえず自己紹介だ。知ってるだろうが俺は《カムロ》の冒険者ギルドマスターで、モルバだ」


 初めて見るギルドマスター、細身に黒いスーツのような服装、手には白い手袋を身につけており、短い髪は確りと整えられており、銀色に染まった白髪姿、口調に似合わない紳士的な見た目、細く鋭いその目は上位の魔物すらビビるんじゃないかと思ってしまう。


「先ずはお前等からだ、三馬鹿!」

 モルバの言葉に全身を震わせた赤の世紀末が更に背筋を伸ばしたのが分かる。


「じ、自分は! 新人のカシームがあの鎧男に襲われると思い、武器に手を掛けました!」

「「同じく、アニキに賛同しました」」 


 双子も震える声で必死に返事をしている。



「ふむふむ……次はお前だな、カシームって言うんだな? 普段問題を起こすやつは分かるんだが、お前さんは初めてだな」

 (いぶか)しげに、全身を確認すると細い目で上から下まで視線が数回、上下する。


「しかし、見れば見る程、ふむふむ……とりあえず、赤の世紀末はああ言ってるが、本当にそうなのか?」

「いやいや、ちがうよ! いえ、違います!」

「嗚呼、お前はガキなんだから、無理すんな……喋りやすい喋り方でいいぞ」

 少し面倒くさそうにそう言われてオレはホッとした、正直、敬語なんて分からないからな。


「ありがとう……オレ、難しい喋り方とか苦手でさ、あはは」

「調子に乗るな……先ずは説明しろ、なぁ?」

 一瞬で空気が凍りつくのがわかる。


「えっとあの……アバスはオレの仲間で相棒だ。だから……」

「ああ、わかったわかった、つまり、赤の世紀末の勘違いって事だな、ミーネ……とりあえず、三馬鹿にはドブ掃除を三日だ、それでチャラでいいな?」

 赤の世紀末に視線を向けるモルバに三人はしっかりと頷き、その後、ミーネと赤の世紀末は部屋から退室する事になる。


 残されたオレとアバスにモルバが改めて座ると会話を再開する。煙草に火をつけ、軽く煙を吐き出すモルバ。


「ふぅ……さて、アバス……お前はカシームと仲間って言うのは理解した、つまり、契約精霊ってんで間違いないか?」

「それで間違いない」

「ふむふむ……で、何処で出会ったんだ?」

 アバスからオレへと視線を向けて、そう質問してくると、アバスがモルバへと視線を向けて、声を発した。


「冒険者は個人情報の詮索は御法度のはずだが?」

「ああァん? 言うじゃないか……」

 一触即発を絵に描いたような状況、オレは正直に言うべきか悩んでいた。


 しかし、モルバはアバスの答えにクスクスと笑い出す。


「すまんな、若いヤツを見ると試したくなるんだわ、簡単に仲間の情報や自分の情報を話すようなら、説教してやるつもりだったが、まぁ、カシームは、及第点だな、オマエ悩んだろ!」


 心を読まれてるんじゃないかと思う程、ビックリした。


「ごめんなさいーーー!」


 それから軽く話をしてから、オレ達も部屋を後にする。

 ギルドカウンターで最初に予定していた灰色山羊(グレーゴート)の素材とアルル草をクエスト報告として渡し、その結果、灰色山羊(グレーゴート)の角は四本で8000シルバとなり、一本、2000シルバで買い取られ、アルル草クエストは予定通り銀貨四枚=4000シルバとなり、アルル草は一本、銅貨五枚で、五本持ち込み銀貨二枚と銅貨五枚、2500シルバとなり、合計は14500シルバになった。



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