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私のシャドウ  作者: あご
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まぼろしの書籍

えまとシャドウは、本に示してある地図を頼りに電気屋さんを目指した。


「ここじゃない?」一軒の電気屋さんがそこにはそびえ立っていた。


「こんにちは」と戸を開け、あたりを見回してみると、


「いらっしゃい」と女の人が出てきた。


「あの・・宮崎仁さんはここにいますか?」


えまは、勇気を出して聞いてみた。


「ああ、夫は、今、配達中でいないの。夫に何か用かしら?」女の人は笑顔でそう言った。


「少し、お話したいことがあって。」シャドウは女の人に説明すると


「それなら奥の部屋で待ってて。どうぞ。」


女の人は、奥の部屋に快く案内してくれた。

そこは、自宅兼お店という感じで、その部屋には生活感が感じられ、女の人は、今、お茶を持ってきますといい台所へと向かっていった。


「シャドウ、来たはいいけど、仁さんに何て説明するの?」


「正直に、話せばいいんじゃない?」

シャドウのこの一言に、シャドウには何も考えがないのだなとえまは感じ少し不安になった。


「正直にって・・」


えまは、楽観的なシャドウにうんざりした。

普通に考えて、自分たちが仁さんらにこれから話すことは現実味がないことだし、受け入れてくれる人なんていないだろうと思った。

そんな時「ただいま。」ガラッと戸が開いた。


「おかえりなさい。今、あなたにお客さんが来ているわよ。」女の人の声が聞こえた。


「お客さん?」えまとシャドウは、仁さんの所へ駆け寄り、お辞儀をした。


「私は、本郷えまと申します。」


「俺は、影山葵です。お願いがあって、東京から来ました。」


「東京から?そんな遠くからはるばると。」仁さんは、少し驚いた。


「どこか見かけない顔だなと思ったら」女の人は、納得したように言った。


「紹介が遅れてごめんなさいね。私は、仁さんの妻、百合子です。」奥さんは、一礼した。そして、ここでは、あれだからと机と椅子がおいてある部屋に入った。


「実は、仁さんのお母様の件で来ました。」


「お袋?」仁さんは少しためらった。


「そうです。あなたのお母様は、あと三日後に持病で亡くなります。」仁さんと奥さんは少しびっくりした表情を見せた後、


「嘘ですよね、人の死期が分かるなんて、信じられないわ。」奥さんは、えまとシャドウを警戒しているように見えた。


「怪しく思うことは、分かります。でも、本当なんです。」えまは、必死に説明しようとしたが、「そういわれましても・・」仁さんと奥さんは困った様に顔を見合わせた。


「・・分かりました。証拠をお見せしましょう。」シャドウはその場に立ち上がった。


「二人とも俺の手のひらを握ってください。」シャドウは両手を差し伸べた。


「え・・分かりました。」仁さんと奥さんは言われた通りシャドウの手を握った。


「あれ、ものすごく冷たい。」奥さんは、シャドウの手を握って、そう言った。


「えまも。俺の肩につかまって。」うん、とえまはシャドウに言われた通りそうした。「じゃあ行きますよ。」シャドウが合図をかけた瞬間目の前が真っ白になった。



目を開けるとそこは、雲の上で、そこに大きな棚がずらりと並んでいた。


「ここは・・天国?」仁さんは、じっと遠くを見つめていた。


「天国ではないです。ここは、雲の上にある、資料所。ここには、今生きている人の人生を記してある、巻物がおいてあるのです。」シャドウは、いろんな棚を探して、一つの巻物を手にした。

そこには


「宮崎ひとみ」と書いてあった。


「これを見てください。」そこには、宮崎ひとみの生い立ち、仁さんと過ごした日々などすべてが記してあった。


「ここみて。」シャドウは、指をさした。そこには、


「あと三日に、宮崎ひとみ、持病のため死亡」


と書いてあった。


「よく見ていてください。」シャドウは、その文字を指でなぞると、雲がそこに集まり、その雲がスクリーンとなった。そこには、宮崎ひとみが自宅で倒れ、その場から動かなくなり、一晩たって、やがて、警察が来て、死亡が確認されるところが映し出された。


「どうですか?これで信じられましたか。」


シャドウは仁さんと奥さんに目をやった。


「このままだと、宮崎ひとみさんは、孤独死してしまいます。それを防げるのは、仁さん、あなただけなんです。」

シャドウは雲のスクリーンを手で操り、雲をもとの場所に戻した。

仁さんは、その場に立ち尽くしていた。


「君達は、何者なの。」奥さんは、ゆっくりと口を開いた。


「今は、言えません。でも、俺たちのことを信じてください。」

シャドウは奥さんに頭を下げた。えまも、同じように頭を下げた。



すると、光に包まれ、目を開けると仁さんの家に戻っていた。

奥さんは少し考えた後、


「お力になれるか分かりませんが、分かりました。」

奥さんは、こくりとうなずいた。


「ありがとうごさいます。」えまとシャドウは目を合わせ、ニコッと笑った。


「でも俺は・・もし、あの人が三日後に死ぬとしても俺には関係ないことです。もう、お袋とは俺が20歳の時に縁を切りましたから。」


「お母様の最期の願いが、あなたに会いたいという願いなんです。」

シャドウは、なんとか説得しようとした。


「そんな今更。」


仁さんは少し怒り気味だ。


「少しでもいいのです。会ってあげてくれませんか。」えまは必死に頼んだ。


「はるばる来てくれたなか、申し訳ないのだけど、帰ってくれませんか。」


仁さんは席を立った。


「もう少し、話を聞いて下さい」シャドウが立ち上がって止めても、仁さんは、二階へと行ってしまった。


「ごめんなさいね。」奥さんはバツが悪そうに謝った。


「あの・・聞きずらいのですが、どうしてあの二人の仲が悪くなってしまったのですか?」


「私が聞いている話だと、仁さんのお母様は、女でひとつで仁さんを育てたとか。けれども、仁さんが20歳の時、ミュージシャンになるという夢を持っていた仁さんを、お母様が大反対して。それなら家族の縁を切るということで二人は離れ離れになったの。私も、仲直りしてほしいと長年思っているのだけれども。」奥さんはうつむいた。


ただいま、と明るい声が鳴り響いた。ランドセルをしょって、小走りで帰ってきたのは男の子だった。


「雄一、お帰りなさい。」


「あれ?お客さん?」


「本郷えまっていうの。よろしくね。」


「俺は、影山葵よろしく。」シャドウたちは立ち上がり、男の子に挨拶をした。


「僕は、緑川小学校の一年生、宮崎雄一っていうの。お姉ちゃん、お兄ちゃん、遊ぼうよ。」


そう言い、雄一は、えまとシャドウの腕を引っ張った。「こら、お姉ちゃんたち困ってるでしょう。」奥さんは、雄一に、やめなさいといった。「いいんです。雄一くん、お姉ちゃんたちと鬼ごっこしようか。」「やったー!」雄一は飛び上がった。「いやでも。大変だろうし。」奥さんがそう心配すると「大丈夫です。」そう言ってえまはほほ笑んだ。


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