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私のシャドウ  作者: あご
4/17

覚悟の友情

えまの家でくり広げられていた、二次会も終わりに向かって、三人とも疲れ果てて布団で寝ていた。えまは目を覚ますと、リコがまだ起きていた。


「眠れない・・よね。」


えまは、あと一日で命が尽きるリコになんと声を掛けたらよいのか分からなかった。「ちょっと、外に出ない?」リコが真顔でそう言い、二人は近くの公園まで来て、ブランコに腰かけた。


「ねえ、どうしてえまは、黒い影の助手をしているの?」


リコはブランコを軽くこぎながらそう言った。


「友達が欲しいって、黒い影にお願いしたの。助手になる引き換えに。ほら、私、ずっと友達がいなかったから。だから、今があるのは、黒い影のおかげなのは間違いない。こんな私って最低だよね。ごめん、何言ってるか分からないよね。」

えまは、視線を落とした。


「そうだったんだ。えまがそう言うなら私、信じるよ。でも、こうして私たちって、仲良くなれたじゃない。何がともあれ、黒い影には感謝しなきゃね。」リコはえまに微笑んだ。


「リコ・・」


少し間を開けた後、えまは、リコの手を取って


「でも、私は、それでもリコには生きていてほしい。」とまっすぐリコを見た。


「じゃあどうやって私を救ってくれるの?」


リコはそう言った。「それは・・。」えまは悔しい顔をした。自分には何もできない、悔しいし申し訳なさが心の中を支配した。


「私ね、もう未練なんてないよ。私が死ぬっていう定めなら従わなくちゃ。」


「本当に?」えまは、ブランコから立ち上がって、リコの目の前に立った。


「最初は信じられなかったし、怖かった。でももし、今日が死ぬ前の最後の日だったとしたら今日だってこんな素敵な時間を黒い影とその助手のえまが作ってくれたもの。」


えまは、複雑な気持ちになった。


「私ね、中学の頃、女友達、一人もいなかったんだ。」


「え?」


えまは、ハッとした表情を見せた。


「幼馴染みと三年間クラス一緒だったからずっと一緒に過ごしてた。でも、それが良くなかったの。私は陰で“男好き”って言われるようになっちゃって。だから、高校に入って、ゆずきとえまに出会って、凄く楽しかったの。こんな日々が宝物のように見えた。ありがとうね。」


リコは優しくそう言った。


すると「そっか。俺が見込んだ通り、ちゃんと助手、やってくれていたみたいだね。」目の前にはシャドウがいた。

「黒い影・・」リコは呟いた。


「だから、シャドウだって。」


シャドウがリコに突っ込む。


「今回、俺の出番はほとんどなかったみたいだけど、リコが最後にそう思ってくれたならよかった。」

リコはブランコから立ち上がってシャドウのもとへゆっくりと歩いて行った。


「私は、明日のいつ死ぬの?」


「正確に本人には教えられないな。」


「そっか。」リコは少しうつむいて「えま、ありがとう。その気持ちはすごくうれしい。私なら大丈夫だから。えまも最期まで、いつも通りでいてね。」


「でも・・。」


「分かってよ。えま。」えまは少し納得いかない表情を浮かべながら「うん。」そう言った。

 

リコにとって最後の朝が来た。朝ごはんを食べ、リコとゆずきは荷造りをしていた。


「昨日はめちゃくちゃ楽しかった!えま、ありがとうね!」


ゆずきがぺこりとお辞儀した。


「私もとっても楽しかったよ!」リコも笑顔で返した。


「良かった。私も久しぶりに、人とご飯を食べたり、一緒に寝たりできて嬉しかった。いつも一人で寂しかったから。」


「ねえ、また来てもいい?」


「もちろん!絶対来てね。」そんな何気ない会話をリコは名残惜しく聞いていた。

荷造りが終わると、えまは、二人を駅まで見送ることにした。道を歩いている途中は、三人でいつものように何気ない会話で盛り上がっていた。そんな中、えまは、気を抜かないように周囲を警戒しながら歩いた。

「そういえばさ。昨日のえまの顔とっちゃった。」


ゆずきは、スマホを二人に見せた。


「なにこれ。」それは、ジェットコースターに乗った後のえまの疲れ果てた顔だった。


「ねえ。恥ずかしいからやめてよ。」えまは、ゆずきのスマホの画面を手で隠した。


「いや、これは永久保存版だわ。」ゆずきは止めるえまをさえぎってまたカメラを向けた。


「もう!何とか言ってよ、リコ」えまはリコに助けを求めた。


「二人とも、友達になってくれて、ありがとうね。」


リコは少し照れくさそうにそう言った。「何?急にどうした?」ゆずきは、首を傾げた。「言ってみたかっただけ。」リコはほほ笑んだ。えまは嫌な気がした。

その時、プーと大きなクラクションが鳴り響いた。次の瞬間リコめがけて車が猛スピードで向かってきた。えまはとっさに走り、


「駄目!」


そう叫び、リコを押し戻そうとした。しかしその時、何者かに腕をつかまれ、えまはその場から動けなくなった。車が壁にぶつかると


「リコ!」


そこには車にひかれたリコがいた。ゆずきとえまが駆け寄ると、リコは最後の言葉を振り絞って


「あり、がとう・・」


そういい残し眠った。


「リコ!寝ちゃダメ!目を覚まして!」


しかし、えまの声に反応することはなかった。「誰か、救急車を。」ゆずきがそう叫ぶと周りにいた大人たちが駆けつけ、しばらくして救急車が来た。そしてリコは病院に運ばれた。


えまたちも一緒に病院までついていった。処置室の前で待っていると、医師が出てきた。

「リコは?大丈夫ですよね?」ゆずきが先生のもとへ駆けて行った。えまは、ずっとうつむいたままだ。「最期を見送ってあげてください。」先生はそう言い残し、処置室から出ていった。


「リコ!」


ゆずきとえまはいそいで処置室へ入っていった。中には、医師一人と看護師が二人、リコがいるベッドの周りを囲んでいた。


「最期に別れを告げてあげてください。」


医師が静かにそう言った。


「リコ!うそでしょ?目を覚ましてよ!」


ゆずきが泣きじゃくる。えまは「ごめん、本当にごめんね」謝ることしかできなかった。

 結果的にリコの死が近いことを知りながら自分は何もできなかった。えまの心の中は罪悪感と悲しみで溢れた。そしてピーと病室中に音が響いた。先生がリコの瞳孔を確認すると


「12時30分ご臨終です。」


そう静かに言った。看護師さんは、リコの顔に白い布をかぶせた。しばらく残された二人は放心状態になり、一言も発さず、ただリコを見ていた。


「えま、ごめん、私、頭冷やしてくる。」


ゆずきは涙声でそう言いうと処置室を出ていった。看護師さんと先生も部屋からいなくなり、えま一人になった。私のせいだ、えまはただただ無力な自分を責めた。

そんな泣きじゃくるえまの肩をトントンと誰かが叩いた。後ろを振り向くとシャドウがいた。


「リコの魂、送り届けてきたよ」


シャドウはえまを見つめた。


「さっき、リコが車にひかれる時、私の腕つかんだのシャドウでしょ?」


えまは、涙を拭きながらシャドウを睨んだ。


「そうだよ。」シャドウがそう言うと


「なんで?ひょっとしたらあの時、リコは死なずに済んだかもしれないのに!」えまは、シャドウの肩を持ち揺らして怒鳴った。


「この世の決まりなんだ。その人の寿命は生まれる前から決まっている。それを抗うことは絶対にしてはいけないこと、だから・・」


「シャドウ、私、助手やめる。こんな残酷な仕事私には出来ない。私はリコに何もできなかった。」


シャドウをまっすぐ見る目から、ぽろぽろと涙をこぼした。


「あのさ、魂を送り届ける前に、リコから伝言を預かってきたんだ。」


「え?」えまは、リコの方へ振り向いた。

 



「本当に、私、死んじゃったのね。」リコはシャドウに問いかける。

「そうだね。今から君を神様のもとへ送り届ける。」シャドウとリコはゆっくりと花が咲きほこる道を歩いて行った。


「じゃあ、一つ頼みたいことがあるの。」


「何?」


シャドウはリコの方に目を向けた。


「えまに、こう伝えて欲しい。自分を責めないでって。私の最期をこんなにも輝かせてくれてありがとう。あなたは、立派なシャドウの助手よって。」


シャドウはうなづき、「分かった。仰せのままに。」と一礼した。


「多分君は天国にきっと行けるよ。」


「そう。なら少し安心した。」リコは上を向いてほほ笑んだ。


「俺が言うのもあれなんだけどさ。そんなに強気にならなくてもいいんじゃない?俺に今思ってること聞かせてよ。」


「そうね。あの世界で、やり残したことは山ほどあるな。青春も、もっとえまたちとしたかったし、恋だってしてみたかった。大学進学して、なりたいものになって、いずれ結婚して。」

リコは顔をゆがめた。


「今回は出来なくても、もし生まれ変わったとしたら次はきっと人生を全うできるようになれるよ。」シャドウはリコの肩を叩いた。


「そうかな。私もう一度頑張ってみる。」


リコは前を向いた。


「じゃあ準備はいい?」

そうシャドウがリコに呼びかける。


「うん。」


「この橋を渡ったら神様のもとに行けるから。」シャドウがそう言うとリコは、ゆっくりと橋の前へ立って、「じゃあね。」そう言い残し、橋を渡っていった。

 



「リコがそんなことを。」えまは冷たいリコの手を握った。


「つらいのはわかるよ。でも、俺はこの仕事、嫌いじゃないんだ。」


「私、リコの力になれたのかな。」


えまはシャドウに問いかけた。


「なれたと思うよ。」


シャドウは優しく微笑んだ。


「分かった。私、もう少し、頑張ってみる。」


「そっか。」


シャドウはえまの肩をトントンと叩いた。




リコの葬儀が終わり、ゆずきもえまも、少しずつ現実を受け止められるようになってきた。


「えま、一緒に帰ろ!」


ゆずきが、えまのもとへ駆けてきた。「いいよ!」えまは、快く受け入れた。


「私たちがこんなに、落ち込んでたら、リコも悲しむよね・・」


ゆずきが少し顔を曇らせたように見えたがすぐに前を向いた。


「そうだね。リコのためにも受け入れて、普段通りいよう。」


えまとゆずきは、二人でそう心に決めたのだった。


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