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私のシャドウ  作者: あご
3/17

こんなに残酷なことある?

次の日、えまが教室へ入ると「おはよう。」といつも通り元気があるリコとゆずきの姿があった。

“おはよう”とえまも返した。

リコの様子はいつもと同じだ。えまはまず、今日もシャドウは生徒として来ていると思い、周りをキョロキョロと見まわして、


「あれ、影山君はまだ来てないの?」とえまは首を傾げた。


「影山君?そんな子このクラスにはいないわよ。」リコとゆずきが不思議な顔をした。


「え?」えまは、びっくりしたが、シャドウのことは後々、と気をとりなおして


「ねえ、リコ、変なこと聞いてもいい?」と話を切り出した。


「え?いいけど」


リコは笑いながら快く受け入れた。


「もしこの世界から自分が消えるとしたら、最期に何したい?」


えまはなるべく自然に聞いた。

「えーっと」リコはハッとしたような表情を見せた。


「何それ。何かの心理テスト?」ゆずきが興味津々に聞いてくる。


「まあ、そんな感じ。」



「そうだな・・ねえ、明日とか二人とも空いてる?もしよかったら、一緒に遊ばない?」


リコは考えるそぶりを見せた後、そう言った。

「えー!遊びたい!」ゆずきがうれしそうな顔をしながら反応した。リコが最後にやりたいことって、ずっと友達と一緒にいたい?ってことなんだと、えまは察した。


「もしよければ、その後うちの家でお泊りしない?明後日も学校無いし。私、一人暮らしだからいいよ!」えまは二人に提案をした。


「え?いいの?」


「じゃあ、お言葉に甘えて!」リコが嬉しそうにほほ笑んだ。えまは廊下の方へ目をやると、黒い影がそっと覗いていたのが見えた。


 次の日。えまは、リコとゆずきと待ち合わせした駅へ向かっていた。

“本当に、リコは死んでしまうのかな。だとしたら自分はその手助けをしてしまっていることになるわよね。早くリコを救う方法を探さなきゃ!“

そんなことを考えながら待ち合わせの駅の柱にえまは、もたれかかっていた。えまが険しい顔をして考え事をしていると


「やっほー」


リコとゆずきが来た。気を取り直してえまも、「やっほー」と返事を返した。するとリコの後ろに黒い影が後ろからついてきているのが分かった。


”シャドウだ!”


えまはとっさに黒い影の腕を引っ張って木の後ろまで連れて行った。


「え、えま?!」


ゆずきがえまの不可解な行動に驚いる。


「ちょっと二人とも、待ってて。」えまは不自然な笑みを浮かべ、そう言いまた木の裏へといった。


「痛いよ、急に腕引っ張るなんて」シャドウは困った顔をしていた。


「なんでいるの?」えまは問い詰めた。


「この前言ったじゃないか。俺は死ぬ前のリコをサポートしてるんだよ。」

シャドウは胸を張って見せた。


「リコはシャドウのことが見えてるの?」えまは、小声で言った。


「そうだけど。えまも、ちゃんと仕事お願いしますよ。」


そう言い片手を上げて、シャドウは消えていった。


「ちょっと、待ってよ。」


えまがそう呼んでももう遅かった。


「えま、どうしたの?」心配したゆずきとリコが、えまのもとへと駆け寄った。


「ごめん、ごめん。何でもないよ。」

えまは、冷や汗をかきながら、笑顔を作った。


「おかしな、えま。」


ゆずきは、首を傾げた。


「さあ、どこに行く?」リコが、仕切り直しに言った。

「ここら辺だと、つだむ遊園地が近いよね!そこはどう?」ゆずきが提案し、いいね!とみんなで賛同した。


 三人は電車を乗り継ぎ、つだむ遊園地へ着いた。

「最初はジェットコースターでしょう!」ゆずきは二人の手を引っ張って、走って向かおうとした。「え?怖いよ。」えまは、顔を青ざめた。

「へー。えま怖いんだ。」リコはえまを煽った。「い、いや。そんなことは・・。」えまはちょっと意地を張った。

「じゃあ、乗れるよね?」リコとゆずきはいたずらに笑って、えまの顔を覗き込んだ。

「はいはい!行くよ!」リコがえまの肩を押した。乗り込む前に「ここのジェットコースター、日本一怖いってしってる?」ゆずきが楽しそうに、えまに問いかける。

「やめて~!」えまは、悲鳴を上げながら、ジェットコースターは発車した。ジェットコースターから降りると、えまはへとへとになっていた。

「もう、えま、ビビりすぎ。」リコは笑顔で言った。「ちょっと、私、トイレに行ってくる!」ゆずきはそう言い、駆けていった。


「ねえ、えま。」


「ん?」

えまは、顔を上げた。


「もしかして、えまにも見えるの?黒い影。」


リコの顔に笑顔が消えていた。えまは少し考えた。でも、リコには真実を伝えるのが、友達としての筋だと思った。だから


「うん。実は私、黒い影の助手なの。」


と真面目な顔をしていった。


「やっぱり、私、本当に死んじゃうの?」


リコの顔は笑っているが、えまには泣き出したそうな顔に見えた。


「言いにくいけど、黒い影が言うには、あと2日後に死ぬ。」


えまは、ストレートにリコに言った。リコは、しばらく言葉を発しなかった。


「でも、私はリコに生きていて欲しいと思ってる。だから」


えまが言いかけると、「二人とも、お待たせ!」そこへゆずきが帰ってきた。


「どうしたの?神妙な顔して。もしかして二人とも、喧嘩した?」リコはふと我に返って「え?喧嘩なんかするわけないじゃない。」さあ、行こ!そう言いリコは切り替えて遊園地を楽しんだ。えまも切り替えて、なるべく動揺しないように気をつけながら、遊園地を満喫した。



 「あー、楽しかった!」「それじゃあ、えまの家で二次会としましょうか!」三人できゃっきゃと心を弾ませながらえまの家へと向かった。


「狭いけど、どうぞ!」リコとゆずきが部屋に入る。するとその後ろから、


「お邪魔しまーす!」どさくさに紛れてシャドウもえまの家へ入ろうとした。


「ここまで!」えまは小さな声で、シャドウが部屋に入るのを拒んだ。


「なんでさ。仕事なんだよ。」


シャドウは小さな子供みたいに駄々をこねる。


「シャドウのこと、リコは見えてるんでしょ。シャドウがいたら、リコが楽しめないよ。」


シャドウは少し考えて「それもそうか。じゃあ、助手さん、あとは頼むよ。」シャドウはそう言い残し、えまのもとを去った。


「えまー!」


部屋の中から声がした。「はーい」えまは急いで部屋の中へと入っていった。


「じゃじゃーん!私、たくさんお菓子持ってきた!」


「私は、ジュース、持ってきたよ!」リコとゆずきが、机の上にそれらを広げた。


「わあー!二人ともありがとう。」


えまは、グラスとお皿をもってきて、机に並べた。

「あー!最高!私、一回友達とお泊り会してみたかったんだ。」


「私も!」


リコが楽しそうに、グラスにジュースを注ぐ。


「じゃあいい?」ゆずきが呼びかけた。「カンパーイ!」三人で、グラスを交わしてジュースを飲みほした。「はあ!おいしい!」えまは満足げにほほ笑んだ。

「ねえ、恋バナしよう!」ゆずきが提案した。「いいね!楽しそう。」リコがゆずきの提案に乗った。

「じゃあまずは、えま!」ジュースを飲んでいたえまは、びっくりして、ゴホンとむせた。

「その反応は、好きな人、いるんでしょ!」リコが問い詰める。「え?えっと」えまは困惑している。

「私も教えるから!教えてよ!」ゆずきが詰め寄る。


「じゃあ、絶対ここだけの話だよ。同じクラスの・・」


「同じクラスの?」


「やっぱり、無理!」えまはゴンっとグラスを置いた。

「そこまで言ったら、教えてよ!」リコもゆずきも興味津々に問う。



「・・山下くん」


えまは小さな声でつぶやいた。「きゃー!」「山下くん、結構顔イケメンだよね!」ゆずきが、発狂してるなかで、リコは納得してうなずいている。

「どんなところが好きなの?」リコはえまに容赦なくツッコむ。「毎日サッカー頑張っててカッコいいなって。」えまは恥ずかしさのあまり顔が真っ赤だ。

「山下くんはサッカー部のエースだし、ファンも多いよね。」「えまも負けずにアタックしなよ!」ゆずきはえまの肩にもたれかかった。「いやでも・・。」「恥ずかしいなら今度私たちもついて行くから。ね?」ゆずきはリコの顔を見た。

「あっ、うん。」リコは笑顔を作った。


「はいはい!私の話は終わり!次は・・ゆずき!」


えまは場を仕切り直した。


「えー、私?A組の東藤くんかなー」


「でた、学年トップ3に入るモテ男子!」


「え?誰それ?」

えまは必死に思い出そうとした。


「そうよ!スポーツも出来て、勉強もできる、最高よね!」

リコはゆずきに賛同した。


「もう、えま、そういうのにはうといんだから!」ゆずきはえまの肩に隠れ、恥ずかしがった。

「じゃあ、最後、リコ!」リコは、少し天井を見て、考えながら

「私は、幼馴染みの海斗かな。」「幼馴染み?どっかの漫画見たい!」ゆずきは、興奮した。


「実は、あっちにも私に気があるみたいで・・」


「えー!」


「もうすぐ告られちゃうんじゃない?」

ゆずきは、立ち上がった。


「・・かもね。」リコは呟くように言った。「きゃー」えまはゆずきときゃぴきゃぴしている中で、どこか悲しげな顔をしているリコにえまは気づいていた。


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