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私のシャドウ  作者: あご
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私がシャドウよ。

「本郷えま。君にも残念ながら罰を与えなければならない。」


神様は何とも言えない表情をしている。



「はい。覚悟はできています。」

えまは涙を拭いてゆっくりと立ち上がった。


「君はこれから、どうしたいんだい?」


えまにそう言った。


「私は・・シャドウの仕事を継ぎたいです。」


えまは、まっすぐ神様を見た。


「シャドウの仕事は君にとってつらいものなのであったのではなかったのかい?今回だって君は嫌な思いをしただろうに。」


「最初はそうでした。こんな残酷な仕事、私にはできないって。でも、シャドウと仕事していく中でこれも悪くないことなのかなって思っていた自分もいます。きっとこれからもこの仕事をすることで救われる人たちだっているはずです。だから私はこの仕事をつづけたい。」


「そうか。」神様は少し考えた後、


「そのためには君も、幽霊になるということになるのだよ。」

えまは、シャドウから貰った、ビー玉を握りしめ「はい、それでもかまいません。」と力強く言った。


「もう君はこの時代のこの世界に存在しなくなくなる。家族も友達にも、もちろん会えない。それでも望むのかね?」


「はい。私はもう心の中で決めています。」えまは覚悟を示した。


「わかった。本当は、死んだ後に地獄に行くことで決定させようとしたが・・。本郷えまの命は今日この瞬間で終わりだ。それに伴い、君をシャドウ二代目として任命する。そして今度こそ、六十年後に天国へ行ってくれ。」


神様は、契約書をえまに差し出した。


「ここにサインを。これで私との契約は成立だ。」神様は、ペンを差し出した。えまは固唾をのんでペンを受け取った。

「もう後には引けんよ」神様はそう言った。

えまは頷き、ペンで本郷えまと書いた。すると空から稲妻が落ちてきてえまに直撃した。


えまが目を開くと、えまの姿は黒い影となっていた。

「おめでとう。これで契約成立だ。私もサポートするから一緒に頑張っていこう。」

神様は、手を差し伸べた。


「はい、よろしくお願いします。神様、いや親父さん」


えまは、神様と固く握手を交わした。そして、えまはシャドウから貰った、ビー玉を見つめた。


「そのビー玉を胸にあてると、その瞬間、願ったことが実現されるんだ。シャドウになったものしか力は使えないのだけれどもね。」


神様は、ビー玉の能力をえまに説明した。「なんでも叶う・・」えまは、あることを考えついた。

そして力強くうなづいた。



「坊主を助ける方法は、なくもない。本当は、君もあきらめていないのだろう?」


神様は、えまの心を読んだかのように言った。


「え?・・はい。」


えまは、正直に返事をした。


「私からは、その方法は教えられないがね。でも、君が、それが正しいと思うのであれば、私は、尊重するよ。」神様は、いつものようにほほ笑んだ。えまは、神様が自分にチャンスをくれたような気がした。


「分かりました。ありがとうございます。」えまは、神様に挨拶をして、ビー玉を胸に当て、“学校の屋上へ”と願った。




目を開けると、屋上についていた。工藤ゆきは、先ほどの場所で、まだうずくまっていた。

気配を感じたのか工藤ゆきは顔を上げ「葵くん?」と呟いた。黒い影の姿をしたえまは、


「違う。本郷えまだよ。」


えまは、工藤ゆきのもとへゆっくりと歩いて行った。


「どうして、えまちゃんが黒い影になってるの?葵くんは?」


工藤ゆきは混乱した様子だ。えまは、ビー玉を胸に当て、本来の本郷えまの姿になった。


「落ち着いて聞いて。シャドウ、つまり葵は、掟を破った罪で、地獄へと送られた。私も、罰として、二代目シャドウとしてシャドウの仕事をすることになったの。」


えまは落ち着いて話した。「そうなんだ。私のせいで・・」工藤ゆきは、うつむいた。



「そんなことはないよ。私もシャドウもそうは絶対に思ってない。」


えまは、工藤ゆきの肩を優しくもった。


「でもね、私、ゆきちゃんの件で思ったの。シャドウの仕事は、死期の人間の日々を全うさせることだけじゃないってことを。」

えまは、力強く語りかけた。


「えまちゃん?」


工藤ゆきは、何かを悟った様に言った。


「私、シャドウを助けに行く。このビー玉を使って。」えまは工藤ゆきに、ビー玉を見せた。


「それで、葵くんを助けに行けるのね。」工藤ゆきは立ち上がって、


「私、えまちゃんの助手になるよ。一緒に葵くんを助けに行こう!」


えまは、首を横に振った。


「ダメ。ゆきちゃんには、もうこれ以上迷惑をかけられない。もし、これに関わったら、ゆきちゃんも地獄行きだよ。」

えまは、そう言い、ビー玉を胸に当てこの場から離れようと瞬間移動ようとした時だった。

工藤ゆきは、えまの腕をつかんでそれを阻止した。


「私、それでもいい。私、二人に恩返ししたいの。」


工藤ゆきの目は真剣だった。


「本当にいいの?」


えまは、工藤ゆきの方を振り向いた。


「うん。これは、私の意志だから。」工藤ゆきは覚悟を決めた顔をしていた。


「分かった。ありがとう、助手になってくれて。」えまは、工藤ゆきに深々とお辞儀をした。

「で、作戦はどうするの?」工藤ゆきは、えまに聞いた。


「これからまず、地獄に行って、シャドウに会う。それで、本当は、シャドウがどうしたいのか聞きに行く。でも、地獄までの道のりは、分からないけど・・。」えまは、苦笑いをした。


「何か、ヒントがあるんじゃない?葵くんが、いつも持っていたものとかに何かヒントがあるかも」工藤ゆきの発言に、えまは「なるほど」と手を叩き、シャドウがいつも持ち歩いていたノートとペンを出した。

「ここになにか・・」えまは、まずペンを見た。

「・・何か彫ってある」工藤ゆきは、えまのもとへかけよった。“P74”ペンにはそう彫ってあった。「p74って・・ページ番号!」工藤ゆきは、えまの方を振り向いた。


「ってことは、このノートに書いてあるってことだ!」

えまは、急いでノートの74ページ目を開いた。開くと、“シャドウの証拠となるものをここに置くべし”と書いてあった。

えまは、ビー玉をそっとそこにかざした。すると、黒い文字と線が浮き出てきた。

「これって・・」そこに記されたのは、天国と地獄への行き方が文字に記されていて、その下には、天国と地獄の地図があった。


「やった!これで地獄にいけるわね!」工藤ゆきは、立ち上がった。


「ちょっと待って。地獄と天国への扉は、同じ場所にある。けれど、扉の真ん中には閻魔様もいるし・・。あと、警備もいると思われるから、地獄に行く扉から行くことはかなりリスクがあるわね。」


えまは、地図を見ながらそう言った。二人は、しばらく考えていると


「分かった。この方法があった!」


えまは、飛び上がった。そんなえまに工藤ゆきはびっくりするとともに、「なになに?」とえまに耳を傾けた。

「このビー玉を使って、地獄に送られる魂に変装すればいいのよ!」


「それは名案ね!」工藤ゆきとえまは喜び合った。

「やったことないけど・・やる価値はある!」えまは、工藤ゆきに「私の腕につかまって」と言った。

工藤ゆきがつかまると、えまは、“地獄に送られる魂に変装させて”とビー玉を胸に当て願った。



目を開き、えまと工藤ゆきは、お互いの姿を見あった。二人の容姿は、青い炎になっていた。


「成功ね!」えまが言った。すると、空から、一本の光が差し込んだ。えまは、ノートを見て、

「この光の先を目指してわたっていくみたい。」えまと工藤ゆきは記している通りに光の先へ歩いて行った。


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