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私のシャドウ  作者: あご
14/17

いじめ撲滅計画

工藤ゆきが亡くなる五日前。えまとシャドウはいつも通り工藤ゆきと学校に向かっていた。シャドウはいつもと浮かない顔をしている。えまはその表情を見過ごさなかった。


えまはシャドウに気を使って「ゆきちゃん、あのね・・」と口を開いた。


「どうしたの?」


するとシャドウが「俺が聞く。」と言って表情を自然に明るくして


「ねえ、ゆきちゃん、もうすぐ死ぬとしたら何したい?」そう聞いた。


「そうね・・。普通に平和に学校生活が遅れれば私は幸せかな。」工藤ゆきは空を見上げながらそう言った。


「じゃあ、それ、実現させよう!」シャドウは先ほどとガラッと表情を変えて言った。


「君の願い、叶えて見せよう!」ね!、とシャドウはえまの方を向いた。「うん。」えまも賛同した。えまは、内心、昨日の屋上の時の、シャドウが放った言葉とシャドウが無理しているように見えて少し気にかけていた。


「でも、先生に言ったらまた・・」工藤ゆきは下を向いた。「大丈夫、まずは証拠集めをしよう。」シャドウは自信ありげにスマートホンを取り出し二人に見せた。



 学校につき、三人は教室に入ると三つの机に花が飾ってあるのを発見した。


「おー、あるある!」よく机を見てみると、三個とも机に、


「ご冥福をお祈りします。」と書いてあった。シャドウはすかさずそれをスマートホンで撮ってにやりと笑った。


「これで証拠が取れた。」


そう言い、教壇へ立った。「みんなー!注目!」と大きな声で言った。


「何?あの子。何する気かしら。」クラス中ざわついた。


「俺たちの机に、花とメッセージを書いてくれた人!証拠はもう撮りました。」


シャドウはスマートホンの画面をみんなに見せた。



「これやった人、先生にチクる前に名乗り出てくれればこのことはなかったことにしてあげる。でも、名乗り出なかったら・・。分かるよね?」そうクラス中を脅した。

「なんて大胆なことを・・」えまは、そんなシャドウを見て、頼りがいがあるようなないようなと思いながら固唾をのんで見守っていた。

教室中が凍りついたような空気になった。すると


「おい、お前ら、何してる?席に着け。」


広瀬先生が来た。クラスメイトは席に着き、シャドウも教壇から降りた。


「そんな大胆なことしちゃっていいの?」工藤ゆきはシャドウに心配そうに話しかけた。


「大丈夫。俺に任せて。考えがあるんだ。」シャドウは優しい顔をしてそう言った。

 


休み時間になった。えまはシャドウと工藤ゆきを屋上に呼んだ。

「葵、クラスの皆を脅してこれからどうするつもり?」えまは投げかけた。


「大丈夫。予定通りに作戦は進んでいるよ。」シャドウはノートを開いて二人に見せた。


「俺、色々考えてみたんだ。いじめっ子に勝てる方法。」そこには、


一、クラス中を先生を盾にして脅す、

二、すると反撃するものが出てくる、

三、その流れで決定的な証拠を手に入れる、

四、全て証拠を先生たちに見せる、



と書いてあった。


「そんなにうまくいくかな?」工藤ゆきは心配そうに言った。

「まず、これでやってみよう。」シャドウは元気よくこぶしを上にあげた。


「ほら、二人も。」シャドウは、二人もこぶしを上げるよう促した。

「え?」えまと工藤ゆきは、戸惑いながら「おう!」とこぶしを上げた。

 


そのあとの昼休み、三人でお弁当を食べていた。「えまの作ったお弁当さすがおいしいね!」シャドウはパクパクとたい上げている。「ゆっくり、食べなさい」えまはお母さんのような口調で言った。「ゆきちゃんのお弁当も美味しそう!」「ありがとう。私も、自分で作ってるんだ。お母さん忙しいから。」「えー、一緒だね!」「このタコさんウインナもらい!」シャドウは、工藤ゆきのお弁当から箸で拾い上げ、口の中にほうばった。「うん、美味し―!」「やめなさい、葵!」えまはすかさず工藤ゆきに謝った。「大丈夫、喜んでくれて嬉しい。」工藤ゆきはうっすらほほ笑んだ。


その裏で、数人のクラスの男女が一緒に輪になってお弁当を食べていた。男子は、遠藤、野々村、雪村、女子は田中、小野、牧野だ。

「ねえ、朝の件、どうするつもり?」小野は、シャドウたちに聞こえないよう、小さな声で言った。「あんなのただの脅しだろ?ほっとこうぜ。」雪村は軽くあしらった。

「でもさ、あんなことされたら、お返ししてあげなきゃね。」牧野はにやりとした。

「そうね」「そうだね」みんなは口々に賛同し、「じゃあ、こっちも作戦を考えようぜ。」「何それ?面白い!」そして六人は、こそこそと作戦会議をはじめだした。

 


下校の時間になった。三人は、帰る準備をしていると、


「葵くん。」三人の男子が集まってきた。遠藤、野々村、雪村だ。


「どうしたの?」シャドウは平然と答えた。


「あのさ、言いたいことがあるんだ。屋上に一緒に来てくれない?」えまは、今朝の件を思い出した。シャドウと目を合わして、うなずきあった。


「えまとゆきちゃんは先に帰ってて。」


「え?分かった。」えまはなんだかシャドウのことが心配になった。そんなことを思っていると、シャドウたちの姿はもうなかった。

「ねえ、ゆきちゃん、心配だからこっそり見てみようか。」「うん、そうだね」えまと工藤ゆきも屋上へと向かっていった。

 

「あのさ、今日の朝の件なんだけど・・」男子三人は口もごった。「あー、君たちが犯人?」シャドウはストレートに言った。


「そう、なんだよね・・って言うわけないじゃん!」男子三人の態度が急変した。

「お前ら、調子乗んなよ。脅しやがって。」遠藤がシャドウの胸ぐらをつかんだ。

「やめてよ、こんなことしちゃいけないってわかってるだろ!」シャドウは慌てて言った。

「お前らには、俺たちがどれだけ強いのか分からせてあげないとな!」「ふふふ、ざまあみろ」建物の影から女子三人も見ていた。田中、小野、牧野だ。


「やれ」野々村が遠藤と雪村に指示をすると、胸ぐらをつかんでいた遠藤がシャドウを一発殴った。「痛った」シャドウはその勢いで倒れた。

「調子に乗るお前らが悪いんだよ」雪村がシャドウの腕をつかんで身動きがとれないようにした。「やめてよ!お願いだから。」シャドウは必死に抗議した。

「うるさい!」そして野々村が激しくシャドウを蹴り殴った。

「あーあ、きれいな顔が台無し!」女子三人がその様子を見てクスクスと笑った。「なあ、解放してあげる方法を教えてあげるよ。今朝の写真と今までの証拠を全部削除しろ。そうしたらお前を解放してあげるよ。」遠藤がそう言った。シャドウは六人を睨んだ。

「なんだその顔!」野々村がシャドウを殴ろうとした。その瞬間、「やめて!」えまと工藤ゆきが屋上に到着した。「ちっ」六人はすぐさまに屋上から逃げた。


「葵、大丈夫?」えまと工藤ゆきは急いで駆け寄った。「うん、なんとか。」シャドウはポケットからペンのようなものを取り出した。「ここにすべて証拠は残した。これで証拠がそろってきたよ。」それはペン型の録音機だった。

「でも、そのために一人でこんな目に合おうとしたの?それはこれからやめて!」工藤ゆきは大きな声で言った。シャドウはびっくりした顔をしたが、「心配させちゃってごめんね」といった。

「明日、全部証拠をもって、広瀬先生の所へ行こう、いいよね?ゆきちゃん。」シャドウが立ち上がると、「証拠があれば、先生に言ってもいいかも。」工藤ゆきはそう言いえまは、うなずいた。「さあ、もう遅いし、帰ろう!」えまと工藤ゆきは、けがをしているシャドウを支え一緒に帰路へと帰った。



 夜12時を回るところだった。シャドウはアパートの屋根の上にいた。ビー玉を空にかかげ、「親父」とつぶやいた。


「おお、坊主か。今日も大活躍だったな。」神様は、魔法の鏡に今日の様子を映し見せた。


「親父、まだ俺のことを監視してるのかよ。」シャドウは苦笑いをした。


「それが仕事の一部なもんでね。」神様は、紅茶をカップへ入れた。


「そういえば、あの件、考えてくれたかね?」


「ああ、俺なんかが天国へ行っていいのかな。」シャドウは屋根に寝そべった。

「お前はそれだけ、認められる仕事をしてきたってことだよ。私は、行ってほしいと思ってる。シャドウの仕事を辞めてね。」


「俺さ、今の仕事、今までと違って感情移入してしまってる気がするんだ。しちゃいけないって一番自分が分かっているのに・・」シャドウは口の隣にある傷を触った。「お前とタイプが似てる仕事だからな。でも、ちゃんとやり遂げるんだぞ。これが最後の仕事になるのかもしれないのだから」神様は、優しくシャドウを見た。


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